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第19話本来は俺のはず
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もはや『はい』を言うだけの機械になりただただメアの気持ちが晴れるまで耐え忍ぶ事こそが今を生きる道だとクロは約10年間の結婚生活で嫌というほど思い知らされている。
こういう時に口答えしようものなら小一時間は話が伸びることは間違いないのだ。
さらに、今日の事は何年たっても小言を言われるのだろう。
メアが一方的に言葉の弾丸を射ち放っていると少し息が荒くなっているミイアが真剣な顔で近づいてくる。
「ご、ごめんメア! 私やり残した仕事を思い出したからギルドに帰るね!」
実は先ほどの決闘の最中、メアとミイアでこのあと喫茶店でも寄ってクロの事とかをいろいろ話す約束をしていたのだが、ミイアはそれだけ告げるとこの場から走り去って行く。
その顔は赤みがかっており、その表情は切なげであり悲しげでもあり、今にも泣きそうに見えた気がした。
「……どうしたんだろう? ミイア」
「ヒス気味のお前から逃げたんだろ?」
「クロ? 私はまだ許した覚えはないのだが?」
しまったと思ったのだがもう遅い。クロはさらに小一時間『はい』を喋る機械になるのであった。
◆◇ドラニコ視点◇◆
決闘が終わりギルド内の廊下を歩いていると緑の髪を束ねたポニーテールを揺らし子犬のように後ろを付いて歩く幼なじみであり妹のような存在のマルティアが話しかけてくる。
「さすがドラニコ! ドラニコを雑魚呼ばわりした相手を一瞬で倒したんだから! 冒険者成り立てのランクFは世間知らずばかりで自分の実力も分からないからドラニコよりも強いんだーとか勘違いしちゃうのよ」
ドラニコが試合に勝ったのがよほど嬉しいのかいつも五月蝿いマルティアがさらに饒舌になっており自分の事のように語っている。
その自慢気な顔が何か腹立つので軽く小突いてやる。
「いたっ! 何で小突くのよ!?」
「だからお前は実力は有るのに未だにD+なんだよ」
先ほどの決闘を思いだし無意識に力むドラニコ。
マルティアはすぐに調子に乗る性格のせいかCランクの実力があるものの未だにDランクで燻っている。
「何でよ! 私でも勝てるわよあんな奴!」
「このハルバードを見てもか? あの決闘で負けていたのは、本来は俺のはずだ。」
ドラニコがマルティアへ先ほど使っていたハルバードを見せる。
「んー……どこもおかしな箇所なんか…………あ、……ヒビが」
ドラニコのハルバードを注意深く見ていくマルティアがいつも見慣れたハルバードにはない無数のヒビが入っている事に気付く。
こういう時に口答えしようものなら小一時間は話が伸びることは間違いないのだ。
さらに、今日の事は何年たっても小言を言われるのだろう。
メアが一方的に言葉の弾丸を射ち放っていると少し息が荒くなっているミイアが真剣な顔で近づいてくる。
「ご、ごめんメア! 私やり残した仕事を思い出したからギルドに帰るね!」
実は先ほどの決闘の最中、メアとミイアでこのあと喫茶店でも寄ってクロの事とかをいろいろ話す約束をしていたのだが、ミイアはそれだけ告げるとこの場から走り去って行く。
その顔は赤みがかっており、その表情は切なげであり悲しげでもあり、今にも泣きそうに見えた気がした。
「……どうしたんだろう? ミイア」
「ヒス気味のお前から逃げたんだろ?」
「クロ? 私はまだ許した覚えはないのだが?」
しまったと思ったのだがもう遅い。クロはさらに小一時間『はい』を喋る機械になるのであった。
◆◇ドラニコ視点◇◆
決闘が終わりギルド内の廊下を歩いていると緑の髪を束ねたポニーテールを揺らし子犬のように後ろを付いて歩く幼なじみであり妹のような存在のマルティアが話しかけてくる。
「さすがドラニコ! ドラニコを雑魚呼ばわりした相手を一瞬で倒したんだから! 冒険者成り立てのランクFは世間知らずばかりで自分の実力も分からないからドラニコよりも強いんだーとか勘違いしちゃうのよ」
ドラニコが試合に勝ったのがよほど嬉しいのかいつも五月蝿いマルティアがさらに饒舌になっており自分の事のように語っている。
その自慢気な顔が何か腹立つので軽く小突いてやる。
「いたっ! 何で小突くのよ!?」
「だからお前は実力は有るのに未だにD+なんだよ」
先ほどの決闘を思いだし無意識に力むドラニコ。
マルティアはすぐに調子に乗る性格のせいかCランクの実力があるものの未だにDランクで燻っている。
「何でよ! 私でも勝てるわよあんな奴!」
「このハルバードを見てもか? あの決闘で負けていたのは、本来は俺のはずだ。」
ドラニコがマルティアへ先ほど使っていたハルバードを見せる。
「んー……どこもおかしな箇所なんか…………あ、……ヒビが」
ドラニコのハルバードを注意深く見ていくマルティアがいつも見慣れたハルバードにはない無数のヒビが入っている事に気付く。
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