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第16話先ほどとは違った緊張感

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 ドラニコが発動したスキルがゲームと同じならキャンセルからの投げ技を中心とした立ち回りが予想される。

 なぜキャンセル後に使う技が投げ技なのかというとランサーの数ある投げ技のほとんどがランスの先端を使い相手を引っ掛けて投げる技が多く、投げ技も凪ぎ払い系のスキル等でキャンセルできる為隙ができにくいためだ。

 クロはそこまで考えるとランサーの繰り出す疾突に合わせて身体を右にずらしながら投げ回避の為身体を半時計回りに回転、その勢いを利用してドラニコへと疾走しようとするが微かな違和感を感じてバックステップをする。

 どうやら身体はゲームの頃と同じ動きが出来ているみたいなのだが、クロが疾走しようとした箇所に火の段位一の呪文、ファイアが無詠唱で打ち込まれていた。

「あれを避けるか……」

 驚いたように目を見開くドラニコ。その目にはクロを見下す感情が消え去りその顔は下品なニヤケ顔から、決闘そのものを純粋に楽しむようなニヤケ顔に変わっていく。

 修練場は先ほどとは違った緊張感が包みはじめていた。

「むしろこっちが驚いているんだが?」

 そう。驚いたのはなにもドラニコだけではない。

 ドラニコが行った一連の攻撃工程にはゲームプレイヤーの中でもガチ勢と呼ばれるプレイヤーの立ち回りだったからである。

 ギルティブラッドの特長の一つにスキルを発動しなくても現実同様、武器を勢いよく相手に当てればダメージ判定がつくのである。

 言わばスキルは初心者もしくは武具未経験者でも簡単に技を繰り出せる処置でもあるのだ。勿論高威力のスキルになると追加ダメージや状態異常判定、属性ダメージなど様々な付加がつくので一番人気の剣士になったからと言って剣術を習わなければ強くなれないというわけでもないため、わざわざ剣術を習い始める人は少ない。

それこそ大会上位プレイヤーか、初めから何かしらクラブや習い事をしていたかガチ勢ぐらいであろう。

 そしてドラニコはスキルを使ったと見せかけ攻撃、本来キャンセルできるタイミングで次のスキルを使うと見せかけて本来スキルをキャンセル出来ない魔術とタイミングで攻撃を仕掛けたのである。

 この世界がギルティブラッドとどこまで共通するか分からないのだが、相手同様自分も相手を見下していたが為の驚きである。これが正式な大会ならなんら驚く事はなかったはずである。

 相手はCPUではなく人間だと今更ながらに気付かされた。

 恐らく——この世界はスキルや魔術の段位こそ平均的に低いのだが、だからこそ違う部分に技術を注ぐのだろう。
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