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第83話最高に幸せそうだった4

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 そして私は『んぐんぐっ』とながビールを胃に流し込む。

 仕事終わり、それも華金に水樹と居酒屋で飲みキンキンに冷えた生ビールはこの世で一番美味しいと思える飲み物ではなかろうか。

 そして店員である芽衣ちゃんに砂肝、ぼんじり、鶏皮、やみつきキャベツ、もも、せせりを塩とタレで頼み、水樹との一週間ぶりの再会を楽しむ。

 そして、やっぱり私は水樹が大好きなんだなと再確認し、この休日で水樹ゲージを満タンにしてからまた一週間を乗り切る。

 これが私の一週間である。

 大学卒業して社会人となった初めの頃は一日で水樹ゲージが枯渇して大変だったのだが、今では水樹と会えない時間すらも、水樹がいかに好きであるか、愛しているかと自分を見つめ直す時間として昇華し、そして休日にそれが正しかった事を再度確認する事によりなんとか一週間耐えれるようになってきたところである。

「なぁ美奈子」
「何? 水樹。 どうしたの? なんかかしこまったりして」

 そんなこんなで美味い酒に美味い肴、そして最愛の男性という最高のシュチュエーションを楽しんでいると、急に水樹が真剣な表情で話しかけてきてドキッとしてしまう。

 ま、まさか他に好きな女性ができてしまったとか……。
 
 私みたいな、根はオタクで性格が悪くインドアな女性よりも明るくて可愛くて愛嬌があって優しくてアウトドアな巨乳の女性がいれば、いくら水樹でも後者を取るだろう事は私でも理解している。

 むしろ今までよく水樹は私なんかと付き合ってくれたとすら思う。

 水樹レベルならばそういう女性などすぐに寄ってくるはずなのだから。

 むしろ今まで水樹を私が縛っていたのだと思うと、そのことでも悲しくなてってしまう。

 あぁ、だめだ。 自分でも分かるくらい悪酔いしてしまっている。

 だけれども、ネガティブな考えが次から次へと押し寄せてきて止まらず、私はついに泣き出してしまう。

 もともと自分に自信がない上に、なんとか化粧で誤魔化しているので、一度ネガティブな方向へ傾くと後は真っ逆さまに落ちていくだけだ。

「お、おいどうしたんだっ? いきなり泣き始めてっ!?」
「大丈夫。 大丈夫だから。 いつかこんな日が来る事は、水樹と付き合い始めた時から薄らと想像していたし、覚悟もしていたから」
「そ、そうか。 実はそれは俺もなんだ」

 水樹のその言葉でもうダメだった。

 私の涙腺は崩壊して声を出して泣き始めてしまうのだが、自分でも止める事ができない。

 あぁ、想像していたようにスマートに別れることが出来ないそんな自分も、嫌だ。
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