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第89話 だからこそ言えない
しおりを挟むどうしてこうなった……?
私はイプシロンの説明を聞き、心の中で頭を抱える。
できる事ならばベッドでゴロゴロ転がり、じたばたと手足を動かしながら『何でこうなるんですかぁぁぁぁああっ!!』と叫びたい衝動をグッと堪える。
子供たちの前ではできる親でありたいし、だからこそそう言った情けない姿は見せたくないと思っている。 だからこそここでグッと堪える事ができた私を誰か褒めて欲しい。
そして何よりもイプシロンの表情が『流石我が主であるミサト様っ!!』という表情をし、目を輝かせながら私の事を見つめてきているので、そんなイプシロンの中の『できるミサト様像』を壊したくないし、幻滅もされたくないというのも大きい。
「なるほど……私の作戦は上手くいったようね」
なので私は『こうなる事は予め分かっていました。 何故ならば全て私の思い描いていた通りになったのだから』という雰囲気を醸し出しながら胸を張ってイプシロンへ答える。
「流石ミサト様でございます。 まさかミサト様の言う通り我々天空城アマテラスの住民を国境沿いの町や村を治める領主にさせたり、インフラ整備をさせていたのはこのためだったとは……っ!! 自分の国の事は自分ですれば良いと思っていた私の考えが如何に浅いか思い知らされたようですっ!!」
そしてイプシロンは今まで以上に目を輝かせながらそんな事を私に言ってくる。
その姿はまるで憧れのスポーツ選手と出会ったスポーツ少年のようである。
だからこそ言えない。
天空城の住民を使う事にしたのは『何も考えたくないから』『これならば私は働かずして自堕落に生きて行けるだろう』と思っていただけだなんて……とてもではないがイプシロンには、いや……天空城の住人には言えないわねっ!
「いえ、たまたま私の描いた通りの結末になっただけであり運が良かっただけよ。 もしかしたら失敗していたかもしれないし、それならば現地の住民の好きにさせた方が、そのケツも現地の住民たちに拭かせればよいので、最悪の事態を考えた場合はイプシロンの考えが間違っているとは思えないわ。 だから自信をもって」
「ミサト様ぁぁぁぁああっ!!」
そして私はその罪悪感からイプシロンの案も悪くないという旨を話すと、感極まって涙を流しながら私の名前を叫ぶではないか。
そのイプシロンの姿を見て私の中のイプシロン像が物凄い勢いで崩れていくのだが、その事は伝えた所で良い事は何一つとして無いので黙っておく事にする。
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