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第82話 答えを言っているようなもの

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 そしてギルドマスターだというその男性が、目の前にいるオークはここの領地の領主であるなどとふざけた事を言うではないか。

「誰がそんな事を信じるというのだっ!! お前がギルドマスターかどうか知らないが嘘を吐くのであればもう少しまともな嘘を吐いたらどうなんだっ!?」

 さすがにこんな誰でも分かる、子供だましのような嘘で私を騙そうとしたところで無理であるし、そもそもこんな酷い内容の嘘で私を騙す事ができると思われているのだと思うと無性に腹が立ってきたので、その怒りのまま自称ギルドマスターへ反論する。

 いくらなんでも私の事を舐めすぎだろう。

「いえ、嘘ではございません。 このお方が正真正銘今現在ここの領地を治めてくださっている領主様です。 そして、この国の民であればその事は既に知っている為驚きはすれども、ここを治めていただいている領主のアドン様を見ても貴女のように嘘だとかは言いません。 もしそんな事を言う者がいるのだとしたらバルシャワ帝国の外の国から来た、その情報を知らなかった者しかあり得ない……という事でございます」

 ギルドマスターはそう話すと私の顔を真っすぐに見据えて来る。 その目からは『わざわざこの町に来た理由は何だ?』と私達の事を怪しんでいる事が窺えて来るし、その事からも隠そうとしていないあたり私達の事を間違いなく間者であると疑っているのだろう。

「それで、あなたたちはどうしてわざわざ『領主がゴミクズで町そのものがスラム化しており、裏を牛耳る組織は領主の飼い犬で形成されている為犯罪がそこかしこで横行されている町』だと知りながら来たのか……教えて貰えませんかね?」
「そ、それは……以前私達はここのギルドにお世話になっていたし……何か役に立てる事があればと……」

 そしてギルドマスターが鋭い指摘を渡しへ振ってきた為、私は思わずしどろもどろになってしまう。

 これでは私達が間者ですと答えを言っているようなものではないか。

 それは他のパーティーメンバーも同じ事を思っていたらしく、既にいつでも逃げられるように体制を作っているのが見える。

「あ、ちなみにこの町から逃げようとしても無駄ですよ?」
「へ?」
「新たに帝国を導いてくださるお方、女帝ミサト様が市町村ごとに結界を張っておりますので、領主様が指定した人物は出られなくなりますし、逆に入る事もできなくなります」
「…………っ!」

 なんだそのふざけた結界は。

 このギルドマスターの話した内容が真実であるのだとすれば、今ここでギルドマスターに怪しまれた時点で私たちはこの町から出る事が出来ないという意味ではないか……っ。
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