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第72話 引いても地獄、進めど地獄
しおりを挟むそしてイプシロンはとんでもない事をサラッと言うと私の部屋から退室してくのであった。
◆
「国王様っ!! バルシャワ帝国からの手紙が来ましたっ!!」
「…………いよいよか……」
先週、我がボルネア王国はバルシャワ帝国から植民地へなるようにとバルシャワ帝国皇帝カイザル・ドミナリア二世から手紙を受け取っており、拒否する旨の返事をしたのである。
いや、これは手紙というのは語弊があるな。
帝国側はただの手紙であると思っているのだろうが、我々王国側からすれば宣戦布告の手紙でしかない。
そして帝国側の主張を受け入れれば国民は間違いなく奴隷のごとくこき使われて王国民としての尊厳は奪われ、戦争をすれば多くの国民が戦死し、残された者たちは飢えに苦しむ事になるだろう。
引いても地獄、進めど地獄。
そんな状態で我は悩んでいたのだが、我が国民たちにどうやってこの話が漏れたのかは分からないのだが、国民たちの耳に入ってしまったらしく、そして国民たちが選んだ答えは王国民としての誇りを選んでくれたのである。
そんな国民たちを見は帝国の主張を受け入れる訳にはいかない、死ぬときは国民とこの国と共に……という想いを決意して植民地となる事は到底受け入れられるものではないと返事を返していたのである。
そして今日、帝国側から手紙が来たとの事である。
どう考えても我が王国を侵略する日にちが書かれた手紙であろう事は、封を開けて手紙を読まずとも理解できてしまう。
我が国に、あの憎き帝国からの脅威を跳ねのけられるだけの力があれば……。
そんな事を何度思ったことであろうか。
確かに、ここ最近帝国は一気に領土を広げ過ぎて前ほど脅威では無くなったのだけれども、帝国は帝国である。
我が王国では太刀打ちできない事には変わりない。
できて王国が地図から消える日を遅らせるくらいである。
そんな事を思っていると側近が封を切り、中に入っている手紙を渡して来る。
ん?
その時我は何か引っかかるものを覚える。
あの憎き帝国からの手紙である事は、封筒を開ける前についていたシーリングスタンプの文様でも明らかなのだが、そのシーリングスタンプの文様が地味にいつもの柄と違う気がしたのである……。
いや、流石に見間違いだろう……。
そんな淡い期待は捨てて、我は手紙へと目を通す。
そこにはバルシャワ帝国は天空城アマテラス帝国に喧嘩を売った結果見事に返り討ちにあい、皇帝カイザル・ドミナリア二世は数日前に処刑されたという事が書かれているではないか。
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