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第69話 我に向かってなんと言ったか

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 そんな事を思いながら我は周囲が異様に静かな事に気付く。

 前回のようにサクラ用に一人洗脳している者を用意して我へヘイトが向かうように先導する者がいるものとばかり思っていたのだが、そういう者が一人もおらず、そして愚民共が一言も発さずに我を見ているという異様な光景に思わず息を呑む。

「あ? お前今になってやっと気付いたのか? お前が国民にめちゃくちゃ嫌われているという事を」
「……う、あうあうあううぅぅうう(そ、そんなばかな事があるか)…………っ!?」

 そんな異様な光景を見て『まさか我は国民に嫌われているのでは?』という、ありもしないたらればを考えてしまうのだが、その事に犬男が気付いたようで話しかけて来るではないか。

 それに対して反論をしようとするのだが、まともに喋る事が出来ないという現状が更に我を腹立たせる。

「まぁお前がどう思っていようがどうでも良いが、そうやって真実から目を背けて死んでいった方が幸せなのかも知れねぇな。 とりあえず、今現時点でお前を殺さないでくれという言葉が一つも出てこないのが答えなんじゃねぇの?」

 そう我は犬男から一方的に言われると、力づくで我を処刑台へと運び、その太い腕で我のあ球を押し付けるようにしてセットするではないか。

 そして、帝国の皇帝である我が獣人という人擬きからこの様な酷い扱いを受けているというのに愚民共は誰一人として『やめろ』と抗議の声を上げる者は出てこないではないか。

 普通であれば『やめろ』と抗議の声を上げるだけではなく暴動が起きてもおかしくない状況であるにも関わらず、である。

 その異様な空気に我は今一度愚民どもの顔を見る。

「…………っ!」

 そこには、我に対して底なしの怒りを向けている愚民たちの無数の目が『我が死ぬところを一瞬たりとも見逃すまい』と見つめて来ている事が伝わってくる。

 この時我はようやっと国民から嫌われているという事に気付いたのであった。 

 その次の瞬間、処刑台から巨大な刃が落ちる音が聞こえ、視界は回転したかと思うと目の前が真っ暗になるのであった。





「処刑が終わりました。 皇帝の死体はミサト様の命令通りアンデットの素材として保管しております。 あれ程負の感情を長い間受け続けてきた者の死体であればかなりの高ランクアンデットと作り出す事ができますでしょう……。 当初こそミサト様に対して失礼極まりない態度を取った者は焼いて灰にしてしまえば良いと思っていたのですが、この対応はよくよく考えてみれば『死んでもミサト様の奴隷として永久に働け』という意味があったのでは? と思っております」
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