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第64話 何か勘違いをしていないか?

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「あ? ただのポーションがそんなに珍しいのか? 薬屋に普通に売っている一番安いランクのポーションに決まっているだろう? お前ごときにそれよりもランクが上のハイポーションを使うのは流石に勿体ないしな」

 我が犬男に先ほどかけた謎の液体は何であるのか聞いてみると、返ってきた言葉は我の予想と反して『低ランクのポーション』という返事であった。

 あ、あり得ぬ……。

 こ、これがポーションだと……? しかも、一番ランクの低いポーション……。 ならばこれよりもランクの上であるハイポーションは不老不死の効果でもあるというのではなかろうか? それは、まさに今まで我が探し求めてきた不老不死の秘薬そのものであり、もし我の考えが正しければそれがようやっと見つかったということでもある。

「た、ただのポーションがこれほどの効能があるのだとすれば、ハイポーションとやらは、それはまさか不老不死の秘薬ではないのかっ!? 我にっ! 我にそのハイポーションとやらを早くよこさんかっ!!」

 そうであれば、我はこの帝国で未来永劫皇帝として君臨する事ができる。

 いや、それだけではない。

 寿命という終わりがあるせいでなしえなかった『世界を我のものにする』という事ができるかもしれないのである。

 かもしれない、ではない。 不老不死の薬さえ手に入れば間違いなくこの世界は我のものとなるだろう。

 その不老不死の薬があるかもしれないと知った我は、さっそくこの犬男にそのハイポーションとやらを持ってくるように命令するのだが、この犬男は我の命令が聞こえているにも関わらず返事をするどころか、ハイポーションを取りに行こうとすらしないではないか。

 しかも犬男は我の方へ視線を向けると『何を言っているんだ? この馬鹿は?』というような表情で見つめてくる。

「お前さぁ、何か勘違いをしていないか?」
「黙れっ!! 我の命令が聞こえたのならばさっさとハイポーションを取りに行かぬかっ!!」
「いや、だからさぁ、俺はさっき『お前ごときにそれよりもランクが上のハイポーションを使うのは流石に勿体ない』って言ったんだが、それがどういう意味かも理解できないのか? あと何故ポーションを使ってお前の傷を治したのかも分かっていないみたいだから、優しい俺はバカなお前にも分かるように教えてやるよ」

 そして犬男は我の命令を無視して話始める。

「三日間、殺さずに生かす事によって国民はお前に対して怨念や怒りなどといった負の感情が籠った石を投げられ続けるようにするために決まってんだろ? そして当然最後はそのまま石を投げられて死ね」
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