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第57話 嫌がる事はしたくない
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「はいっ!! そうですっ!!」
そして、私に名前を褒められ、満面の笑顔で返事をするミィアとは対照的に、暗い表情で生気のないような雰囲気を醸し出している金髪の女性を、私に見えるように前へと押し出す。
「それで、この捕虜はどういう人物なのかしら?」
「人族ですっ!!」
「あー、ごめん。 私の聞き方が悪かったわね。 バルシャワ帝国ではどのような立場の人だったのかしら? 例えば一般人だとか、皇帝の愛人だったとか」
元気いっぱいに応えてくれるミィアが可愛すぎて悶絶しそうになる。
いったいこの猫耳娘は私をどうしたいのか。
しかしながら今この『気が済むまで抱きついて撫でまわりたい』という欲求に負けてしまったら、それこそ日が変るまで我を忘れて撫で続けてしまいそうなので、頭の中にある欲求をブラック企業で培った自分の心を押し殺す技術で追いやり、再度訂正してミィアに聞き直す。
「あっ、すみませんっ!! えっと、えっと、イプシロン様からの──」
「いい、私から話しましょう。 それでもよろしいでしょうか?」
そして、自分の間違いに気づいたミィアはわたわたしながらイプシロンに聞かされたであろうこの捕虜の情報を必死に思い出そうとするのだが、思い出す前に捕虜の女性がそれを遮るように自ら自分の事について話すと言うではないか。
というか、わたわたするミィアも、それはそれでまた可愛かったので『好きな子に虐めたくなる男の子』の気持ちがなんとなく分かった気がする。
しかしながら分かった所で相手が嫌がる事はしたくないのでやらないのだが。
「私は別に貴女の事が分かれば、情報源は別にどこからでも構わないわ。 でも、その情報が間違っていた場合は、話は別なのだけれども」
「ありがとうございます。 そして、既に他の者に私の情報が伝わっている時点で、この場で嘘を言うメリットはないでしょうし、勿論それが無くとも噓をつくつもりは毛頭ございません。 私は表ではバルシャワ帝国皇帝カイザル・ドミナリア二世専属の護衛という立場でございましたが、恐らく正しくは皇帝カイザルの愛人という立場であったのだと思われます。 まだ身体を許した訳ではないのですが、ここ最近は特にそういう雰囲気を隠す事もしなくなっていたので時間の問題だったのかと……。 寸前のところで天空城の方々に助けられたという認識でございます。 それと、あの皇帝カイザルとその息子であるダグラスに罰を与えて下さり、誠にありがとうございます……っ」
そして、私に名前を褒められ、満面の笑顔で返事をするミィアとは対照的に、暗い表情で生気のないような雰囲気を醸し出している金髪の女性を、私に見えるように前へと押し出す。
「それで、この捕虜はどういう人物なのかしら?」
「人族ですっ!!」
「あー、ごめん。 私の聞き方が悪かったわね。 バルシャワ帝国ではどのような立場の人だったのかしら? 例えば一般人だとか、皇帝の愛人だったとか」
元気いっぱいに応えてくれるミィアが可愛すぎて悶絶しそうになる。
いったいこの猫耳娘は私をどうしたいのか。
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「あっ、すみませんっ!! えっと、えっと、イプシロン様からの──」
「いい、私から話しましょう。 それでもよろしいでしょうか?」
そして、自分の間違いに気づいたミィアはわたわたしながらイプシロンに聞かされたであろうこの捕虜の情報を必死に思い出そうとするのだが、思い出す前に捕虜の女性がそれを遮るように自ら自分の事について話すと言うではないか。
というか、わたわたするミィアも、それはそれでまた可愛かったので『好きな子に虐めたくなる男の子』の気持ちがなんとなく分かった気がする。
しかしながら分かった所で相手が嫌がる事はしたくないのでやらないのだが。
「私は別に貴女の事が分かれば、情報源は別にどこからでも構わないわ。 でも、その情報が間違っていた場合は、話は別なのだけれども」
「ありがとうございます。 そして、既に他の者に私の情報が伝わっている時点で、この場で嘘を言うメリットはないでしょうし、勿論それが無くとも噓をつくつもりは毛頭ございません。 私は表ではバルシャワ帝国皇帝カイザル・ドミナリア二世専属の護衛という立場でございましたが、恐らく正しくは皇帝カイザルの愛人という立場であったのだと思われます。 まだ身体を許した訳ではないのですが、ここ最近は特にそういう雰囲気を隠す事もしなくなっていたので時間の問題だったのかと……。 寸前のところで天空城の方々に助けられたという認識でございます。 それと、あの皇帝カイザルとその息子であるダグラスに罰を与えて下さり、誠にありがとうございます……っ」
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