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第55話 ブラック企業で務めた経験からくる考え

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「まさかこれ程までにバカだったとは。 むしろコイツのバカ息子同様、そういう風な認識だからこそここまで民に寄り添えない行為をしてきたのであろう。 その事にすら気付けずに自分の事を民に愛されている皇帝だと勘違いまでしているのだからどうしようもないな。 ミサト様がコイツの処罰は帝国民にやらせると判断した理由もなんとなく理解できるというものよ」

 しかしながら所詮は犬と魔物である。

 我の言った言葉を理解するどころか、まるで我が国民によって裁かれるとでも思っているのだろう。

 むしろ逆にそれほどまでに我が天才的な頭脳を持っていたという事の裏付けでもあるのかもしれない。

 当日、こいつらの悔しがる顔と、国民の怒りの矛先を向けられて慌てふためく姿が見られるというのであれば、こいつらの口車に乗ってやるのも一興かもしれない。

 決して我がこいつらに勝てないから、こいつらの提案に乗るという訳ではないので、我はこいつらに負けた訳ではないのだ。





 はじめにラムダからバルシャワ帝国皇帝カイザル・ドミナリア二世をこのまま殺しても良いか? と連絡が来たときは思わず『あんなゴミクズの人間など殺してしまって構わない』と喉元まで出かけたのだが、腐っても相手はバルシャワ帝国の皇帝であり、他国のトップの位置にいる人物なのである。

 それをバルシャワ帝国とはなんら関係ない私が勝手に処罰した場合はかなりヤバいのではなかろうか? と思った私は、この皇帝の処罰についてはバルシャワ帝国民に行ってもらうというアイディアを閃いてしまった。

 そうすれば、最悪カイザル・ドミナリア二世が殺された所でそれは身から出た錆であり、そして私たちは最低限の慈悲を与えたという風にも見える。

 更に、無いとは思うのだけれども国民から人気があった場合は間違って殺してしまうというミスを回避できる上に、逆に殺したい程国民から恨まれていた場合は国民自らの手でその恨みを晴らさせてくれたと恩を感じてくれるかもしれないのである。

 まさに隙の無い完璧な作戦であると言えよう。

 そして私はそこまで考えた所でラムダとゼータへその旨連絡を入れると、一仕事終えたとばかりに『ぽふっ』とベッドに倒れてゴロゴロとする。

 カイザルの刑執行は明日なので、それまではゴロゴロしても良いだろう。

 勿論、部下に呼ばれない限りは明日もずっとベッドの上でゴロゴロするつもりではあるのだが、きっと明日は忙しくなりそうだと私の勘がそう訴えて来るので、休める時に全力で休む。

 この考えはブラック企業で務めた経験からくる考えである。
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