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第44話 通用するのは子供だけである

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「何で手首から先が私に切り落とされたかって? それはあなたの言葉を借りるのならば『どうせあなたの態度から、恐らく高位の魔術師であり、その卓越した魔術で好きかって自分勝手に生きてきたのだろうが、相手が悪かった』というだけの事。 今まで好き勝手してきたようだけれども、実際に自分が蹂躙される立場になったとたんに泣き叫び、許しを請う……なんてダサい真似はしないでほしいところね」
「い、いったいお前は何を言っているんだ……? 俺は皇帝カイザルの息子で、次期皇帝であり、この帝国で今現在二番目に偉いんだぞっ!? ならば国民など俺の好き勝手にしても良いだろうがっ!! それの何が悪いっ!?」

 そしてダグラスは、私に切り落とされた右手を拾い、左手で回復魔術を施しながら自分は悪くないと噛みついて来る。

 ダグラス程のプライドの高さであれば怒りの感情頭の中は埋め尽くされているであろうに、怒りの感情に支配されるのではなく、冷静さを欠かず腕を拾い回復魔術を施す事ができるのは流石であると言えよう。

 故に、惜しい逸材であるとも言えよう。

 しっかりと教育をしていれば、帝国を導く名君にも成りえただろうに……。

 結局、自分の欲望や感情を行動へ移す事を制御できない、子供まま育った暴君と成り下がったのだろう。

「そもそも、私は帝国の国民でなければ天空城アマテラスの女帝、タカヤナギ・ミサトであり、お前はバルシャワ帝国皇帝ではなくその息子という立ち位置。 立場や権力で立場を示そうとするのならばまず自分自身が己の立場を弁えなさいこのクソガキ」

 そして私は静かにキレる。

 自分は良いが相手は駄目だというのが通用する訳が無い。

 それが通用するのは子供だけである。

 ましてやこのダグラスはその立場でもって今まで欲望や本能のまま好き勝手に奪略や強姦、暴力に殺人などを行ってきたのである。

 だったら自分にもそのルールを、上の立場であれば下の立場の者へ何をしてもいいというルールが適用されるべきであり、その順番が自分に周ってきただけである。

 そして私は、回復魔術を行使して右手を繋げようとしているダグラスの左手を、右手と同じように鎌鼬で切り落とす。

「ぎゃぁぁぁああああっ!!!!!????」
「うるさいわね……。 これ以上叫ぶのなら、今度は首を切り落とそうかしら?」
「ふぐっ……っ。 あぐぅ……っ。 み、右手が動かない…………っ!? 魔力も手首よりも先へ供給できない……っ!!」

 ダグラスは私に言われて何とか叫ぶことを抑えながら、切り落とされた左手を拾おうとして右手が動かせない事に気付く。
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