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第36話 感動──この一言につきる
しおりを挟む「なるほど……」
治安が良いと言われて私は少しだけ嬉しく思ってしまう。
人間は勿論獣人やエルフにドラゴノイドなどの亜人種や、ゴブリンやオークといった魔物まで多種にわたり暮らしている為治安はもしかすれば悪いのかもしれないと思っていた分嬉しい誤算だろう。
それに、自分の作った町が褒められるのはやはり嬉しいものであるし、街の外観にも力を入れて良かったと素直に思える。
あの街灯だって素材を集めに苦労した日々を昨日のように思い出せるほど一つ一つに思いでが詰まっているのである。
そして私はトロワと一緒に夜の城下町をゆっくりと練り歩く。
何というか、感動──この一言につきる。
自分の作った町で住んでいる人々が笑顔で談笑したり、酔っ払いがふらついていたり、若者同士の喧嘩は少しあれだけれども、そういうゲームをプレイしている時では見る事ができなかった光景を実際に見るというのはやはり感動するものである。
正直言って何時間でも見てられるし、この光景を肴にちびちびと酒を飲みたいとさえ思えるほどには、ここに住む住人からすれば何でもない日常かもしれないのだが、私にとっては何物にも代え難い唯一無二の光景なのである。
そんな事を思い、そして素材集めの日々を思い出しながらトロワに手を引かれて移動していると、とある店の前で止まる。
「ミサト様、着きましたっ!!」
どうやらトロワおすすめの店に着いたようである。
ちなみに今の私たちの格好はうさ耳獣人の姉妹という外見をしている。
あぁ、いつものメイド服姿のトロワも良いのだけれども少しお洒落した町娘風うさ耳トロワも可愛いわねっ!!
そして今日一日だけは私はトロワのお姉ちゃんという設定である。
「こらトロワ。 今だけは私の事はお姉ちゃんと呼びなさい。 誰かに聞かれたらどうするの」
「ご、ごめんなさい。 お姉ちゃん」
「はい、許しますっ。 それでは、入りましょうか」
「はいっ」
あぁ、お姉ちゃん……良い響きである。
もう今日一日といわずに、トロワからはずっと『お姉ちゃん』と呼ばれたいかも……。
「ごめんください、二名ですがまだ空いてますか?」
「らっしゃい。 奥の席なら空いてるよ」
「良かった……ここは隠れた名店なので運が悪いと客が一杯で入れない時があるんですよっ!!」
そう言いながらニコニコと笑顔で話してくれるトロワの姿だけで私はご飯四杯は余裕で食べる事ができそうだわっ!!
「ぎりぎり私たちの席分空いていて良かったわね」
「はいっ!!」
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