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第23話 鬱陶しい羽虫
しおりを挟むそんな彼を見ていると前世で中間管理職的な立ち位置になっていた部長のヤツレた姿を思い出してしまう。
ブラック企業故に下からの不平不満は強く、そして当然社長からはその不平不満は押しつぶせと命令される訳である。
はじめ社長がいきなり役職を作ると言い始めた時はこのブラック企業もこれで少しはマシになってくれるのかもと思っていたし、部長に任命された彼は喜んでいたのだが、蓋を開けてみれば下からのクレームや不満の単なるストッパーでしか無く、しかも仕事はその分増えたにも関わらず給料は据え置きであると言うのだから恐ろしい。
そして部長は、部長に任命されて二年間で一気に剥げてしまった……。
そんな部長の事を思い出してしまうと、今の彼の立場が可哀そうだとは思うのだが、それとこれとは話が別である。
「何で別の国である帝国の民まで私が面倒を見なければならないのかしら? それとも、帝国は我ら天空城の傘下へと入り、加護を受けさせて欲しいとでも言うのかしら?」
「…………こ、皇女陛下の言う通りでございます……。 しかしながらその件に関しましては私の一存でどうこうできる話ではないので一度持ち帰って検討させていただいてもよろしいでしょうか?」
「……はぁ、まぁそりゃそうだ。 どうぞ。 次来るときは皇帝の首の一つでも持って来れば傘下に加えるかどうか考えてみよう。 それ以外ではあり得ぬと思え」
「……ありがとうございます」
「では、これ以上話す事も無いな。 そのまま帰るが良い」
そして私は帝国の騎士たちを帰らせる。
クーデターを起こしてバカな皇帝を切り捨て未来を掴むか、一緒に滅ぶかの選択くらいはさせてあげよう。 うん。
これで悪い方向へ選択して帝国国民が死んでいったとしても私のせいではない。
ブラック企業で働いていたお陰で責任を擦り付けられないように立ち振る舞う技術がこんな所で役に立つとは思わなかった。
「帰らしてよろしかったのですか? 一言命令していただければ──」
「それって私が彼らを殺した事になるので却下。 もし彼らに妻や子供、もしくは愛する人がいると考えたらきっとストレスで剥げてしまうもの……」
「さようですか……」
そしてイプシロンが、まるで『鬱陶しい羽虫を殺さないのですか?』という感じで聞いてくるので即殺さないと返す。
というか、この感じ間違いなく羽虫くらいにしか思ってなさそう……。
「ま、自滅する分にはまた別問題という事で。 それで良いじゃない」
そして私は商談を一つやり終えたような解放感と適度な疲れを感じながら玉座の間から出るのであった。
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