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異世界<日本>編
異世界の技術 1
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新しい知識に触れるのはとても楽しい。
店を入ってすぐのところに飾られているペンを手に取り、次々に試し書きをしていく。
滑らかな書き心地を確かめたらペンをひっくり返して文字を擦る。
説明を書いた板の示す通り書いた文字が消えていく。興味深くて何度も試す。
(これいいな…)
ペンを持ったまま頭の中で思考を巡らせていく。
(書いた文字が消える、これを応用すれば…。
魔法陣を書いた後に見えないように隠ぺいの魔法を…。
いやいや、それは手間が増えるだけだから、いっそ陣を隠して、ってそれじゃ既存の仕組みと変わりないし)
書いた後に消えるという技術を生かして何かできないかと思う。
(魔力をインクだと考えて陣を書く、ダメだそれじゃあ、すぐに魔力が霧散して長くは使えない)
魔法陣を作るにはいくつか方法がある、まずは実際に書いたり掘ったりして何かに魔法陣を書く方法。
これは魔法陣が存在することがわかってしまう欠点はあるけれど複雑なものでも時間をかけて書けばほぼ失敗しないという利点がある。
次に己の魔力だけで何もない空間に魔法陣を描く方法。
時に魔力陣とも言われるこの方法は、直接対象に刻む方法に比べてかなり難しく、術者のイメージ力が物を言う方法だ。
細部まで明確に陣を想像しなければ発動せず、場合によっては魔法陣が暴発する危険もあった。
(そもそも常時発動しているのか、危急の際に起動させるのかによって作り方を変えた方がいいよね)
見えないほど薄く魔法陣を掘って必要な時に魔力を流すと言う方法なら既存の方法の組み合わせになるが簡単にできそうだ。
魔力で魔法陣をなぞると堀った溝に魔力が残るようにするとか。
そういった魔法陣に組み込むとしたら結界か治癒か、有効そうな術を頭に思い浮かべる。
移動できない陣だということを考えたら結界が有効だろうか。
(いっそ魔力陣を描いた後何らかの方法でそれを保てば…)
…!
ドンと硝子に何かが当たった音がする。
音がした方に視線を向けると黒犬が張り付いていた。
マリナが気づいたのを見ると更にガラスをたたく。
肉球のおかげか店員や他のお客さんは音に気が付いた様子はない。
待たせていたことをすっかり忘れていた。手振りで謝ってレジに向かう。
ペンを会計して外に出るとすっかりふてくされたヴォルフがいた。
「ごめん、ちょっと考え事に没頭してた」
考えたところで使い道はないけれど楽しかった。
「真剣な顔をしていたけれど何を考えていたんだ?」
「これを見て」
買ったばかりのペンを出してヴォルフに見せる。
色の種類が多い中で一番気に入った水色を買った。
ノートは買わなかったので会計の時にもらったレシートを取り出す。
「これで書くでしょう? で、こうすると…」
「おお! すごいな!!」
書いた文字が消えていくのを見てヴォルフが驚く。
マリナも得た驚きをヴォルフにも与えられたのに満足する。
「すごいでしょう?」
さっき知ったばかりだけど得意気に言う。
「でもこれは文書を書くには向かないんじゃないか? 密書、は燃やした方がいいだろう」
尤もだ。
「うん、そういうんじゃなくて、これを活かして魔法陣を見えないように仕込めないかなと思って」
どういうことかと眉根を寄せるヴォルフに思いつきを話す。
「執務室とかに魔法陣を書いて見えないようにできたら色々使えそうじゃない?」
「何にだ?」
「最初考えてたのは結界だけど盗聴とか。 ああ、入ってきた人間を登録する機能とかおもしろいかもしれない」
考え付くままに口にするとヴォルフが険しい顔になっていく。
「それをどう使うつもりなんだ?」
「勝手に入ってきた人間が誰で何をしていたかわかるよ」
「王子の執務室に勝手に入ってくる人間なんてそうそういないだろう」
王子のとは言っていないけれど想像していたのはいつも使っていた王子の執務室だった。
「仮にいたときの保険よ」
マリナもそうそうそんな危険を冒す人間がいるとは思わないけれど、危険に備えるのは無駄にはならない。
単純におもしろいから考えていたというのは心にしまっておいた。
店を入ってすぐのところに飾られているペンを手に取り、次々に試し書きをしていく。
滑らかな書き心地を確かめたらペンをひっくり返して文字を擦る。
説明を書いた板の示す通り書いた文字が消えていく。興味深くて何度も試す。
(これいいな…)
ペンを持ったまま頭の中で思考を巡らせていく。
(書いた文字が消える、これを応用すれば…。
魔法陣を書いた後に見えないように隠ぺいの魔法を…。
いやいや、それは手間が増えるだけだから、いっそ陣を隠して、ってそれじゃ既存の仕組みと変わりないし)
書いた後に消えるという技術を生かして何かできないかと思う。
(魔力をインクだと考えて陣を書く、ダメだそれじゃあ、すぐに魔力が霧散して長くは使えない)
魔法陣を作るにはいくつか方法がある、まずは実際に書いたり掘ったりして何かに魔法陣を書く方法。
これは魔法陣が存在することがわかってしまう欠点はあるけれど複雑なものでも時間をかけて書けばほぼ失敗しないという利点がある。
次に己の魔力だけで何もない空間に魔法陣を描く方法。
時に魔力陣とも言われるこの方法は、直接対象に刻む方法に比べてかなり難しく、術者のイメージ力が物を言う方法だ。
細部まで明確に陣を想像しなければ発動せず、場合によっては魔法陣が暴発する危険もあった。
(そもそも常時発動しているのか、危急の際に起動させるのかによって作り方を変えた方がいいよね)
見えないほど薄く魔法陣を掘って必要な時に魔力を流すと言う方法なら既存の方法の組み合わせになるが簡単にできそうだ。
魔力で魔法陣をなぞると堀った溝に魔力が残るようにするとか。
そういった魔法陣に組み込むとしたら結界か治癒か、有効そうな術を頭に思い浮かべる。
移動できない陣だということを考えたら結界が有効だろうか。
(いっそ魔力陣を描いた後何らかの方法でそれを保てば…)
…!
ドンと硝子に何かが当たった音がする。
音がした方に視線を向けると黒犬が張り付いていた。
マリナが気づいたのを見ると更にガラスをたたく。
肉球のおかげか店員や他のお客さんは音に気が付いた様子はない。
待たせていたことをすっかり忘れていた。手振りで謝ってレジに向かう。
ペンを会計して外に出るとすっかりふてくされたヴォルフがいた。
「ごめん、ちょっと考え事に没頭してた」
考えたところで使い道はないけれど楽しかった。
「真剣な顔をしていたけれど何を考えていたんだ?」
「これを見て」
買ったばかりのペンを出してヴォルフに見せる。
色の種類が多い中で一番気に入った水色を買った。
ノートは買わなかったので会計の時にもらったレシートを取り出す。
「これで書くでしょう? で、こうすると…」
「おお! すごいな!!」
書いた文字が消えていくのを見てヴォルフが驚く。
マリナも得た驚きをヴォルフにも与えられたのに満足する。
「すごいでしょう?」
さっき知ったばかりだけど得意気に言う。
「でもこれは文書を書くには向かないんじゃないか? 密書、は燃やした方がいいだろう」
尤もだ。
「うん、そういうんじゃなくて、これを活かして魔法陣を見えないように仕込めないかなと思って」
どういうことかと眉根を寄せるヴォルフに思いつきを話す。
「執務室とかに魔法陣を書いて見えないようにできたら色々使えそうじゃない?」
「何にだ?」
「最初考えてたのは結界だけど盗聴とか。 ああ、入ってきた人間を登録する機能とかおもしろいかもしれない」
考え付くままに口にするとヴォルフが険しい顔になっていく。
「それをどう使うつもりなんだ?」
「勝手に入ってきた人間が誰で何をしていたかわかるよ」
「王子の執務室に勝手に入ってくる人間なんてそうそういないだろう」
王子のとは言っていないけれど想像していたのはいつも使っていた王子の執務室だった。
「仮にいたときの保険よ」
マリナもそうそうそんな危険を冒す人間がいるとは思わないけれど、危険に備えるのは無駄にはならない。
単純におもしろいから考えていたというのは心にしまっておいた。
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