334 / 368
セレスタ 故郷編
故郷 2
しおりを挟む
マリナが恋人を連れてきたと言ったことにとても驚いていたギルだけど、すぐに気を取り直して家に上がるよう誘ってくれる。
「とりあえず母さんに会って行けよ。
喜ぶだろうし、長旅で疲れてるだろ。 茶の一杯くらい飲んでいけ」
ギルの申し出はありがたいけれど、父親のことも気になる。
思わず家のあった方向に向けた視線でギルはマリナが何を気にしているか察したらしい。父親は家にいないと教えてくれる。
「親父さんは、今家にいないだろ。 ホルクさんの家に行ってるから」
「そう……」
ホルクさんが誰かは知らないけれど、出かけているなら戻ってからの方がいいだろう。
狭い村なので探せば見つかると思うけれど、人を訪ねているところを邪魔するつもりもない。
「じゃあ、お邪魔するわ」
気持ちの上では父親よりも会いたかったのでうれしい。元気にしてるかな。
「おばさん元気?」
「元気だよ。 あんまり変わらなくて驚くんじゃないか」
ギルの声は明るい。昔のままだと聞いてほっとした。
「でも弟ができたなんてびっくりした。 妹さんも元気? おじさんは?」
知った顔と再会できて自分でも知らないうちに浮かれていたのかもしれない。
矢継ぎ早に聞くとギルが眉を寄せる。いきなりあれこれ聞いて不快にさせてしまったかなと思ったけどカイがそれを払拭してくれる。
「父ちゃんも元気だよ、姉ちゃんは最近男ができて兄ちゃんと父ちゃんは機嫌が悪いんだ」
カイの明け透けな言い方にギルが声を荒げる。
「カイ! 余計なこと言うな!」
「なんだよ、ほんとのことじゃんか」
怒られて不服そうにしながらもカイは口を噤んだ。
「なんだか意外ね」
「何がだ」
思ったことをそのまま口にしたら不機嫌そうな顔でじろりと見られた。
「昔は妹さんと一緒にいるところなんてあまり見なかったから、恋人ができて怒るなんて想像つかなくて」
「別に怒ってない」
恋人のことなんて気にしてないと言うけれど顔はそう言ってなかった。
「それに子供の頃はそりゃそうだろ。 あいつはまだ小さかったし、川で遊んだりするのは母さんが良い顔しなかったからな」
それはそうか。浅い川でも油断すれば滑って転んだりすることもあるし、少し大きくなるまでは行かせたくないと思うのも当然だ。
家が近づいてくるとカイが母ちゃんに伝えてくると言って走っていく。
元気だなーと思って見ているとカイが消えて行った扉が勢いよく開かれた。
「マリナ! ほんとにマリナなのかい!?」
兄弟と同じ髪色をした女性がおばさんの家から出てくる。
変わらない――……。
「おばさん、お久しぶりです」
昔のまま変わらない姿に喜びが込み上げる。
「ほんとに……! ああ、信じられない!
元気そうだね、立派になって……!」
感極まったおばさんに抱き締められる。
背を叩く手は痛いくらいだけれど、それほど再会を喜んでくれるのだと感じられてうれしい。
「お会いできてうれしいです! おばさんも元気そうで……」
「あたしは元気だよ、旦那もギルもエミも元気さ!」
エミという名前に聞き覚えはなかったけれどきっとギルの妹さんの名前だろう。
おばさんと再会を喜び合っていると呆れたギルの声が聞こえた。
「とりあえず家入れば?」
その声にマリナは冷静さを取り戻したけれど、おばさんは再会に水を差すんじゃないよ!と怒りだす。
「マリナも長旅で疲れてるだろうし、続きは座ってからにしろよ」
「そーだよ母ちゃん、俺ものど渇いた!」
ギルとカイの言葉におばさんも落ち着きを取り戻し、そして後ろに控えていたヴォルフに気が付く。
「ところでそちらの方は?」
おばさんの尤もな問いかけに答えたのはギルだった。
「マリナの恋人」
ギルの答えにおばさんが口を開けてマリナたちを凝視する。
そして開いた口から絶叫が飛び出す。
「な、なんだってーーー!!」
おばさんが再度落ち着くのにはそれなりの時間がかかった。
「とりあえず母さんに会って行けよ。
喜ぶだろうし、長旅で疲れてるだろ。 茶の一杯くらい飲んでいけ」
ギルの申し出はありがたいけれど、父親のことも気になる。
思わず家のあった方向に向けた視線でギルはマリナが何を気にしているか察したらしい。父親は家にいないと教えてくれる。
「親父さんは、今家にいないだろ。 ホルクさんの家に行ってるから」
「そう……」
ホルクさんが誰かは知らないけれど、出かけているなら戻ってからの方がいいだろう。
狭い村なので探せば見つかると思うけれど、人を訪ねているところを邪魔するつもりもない。
「じゃあ、お邪魔するわ」
気持ちの上では父親よりも会いたかったのでうれしい。元気にしてるかな。
「おばさん元気?」
「元気だよ。 あんまり変わらなくて驚くんじゃないか」
ギルの声は明るい。昔のままだと聞いてほっとした。
「でも弟ができたなんてびっくりした。 妹さんも元気? おじさんは?」
知った顔と再会できて自分でも知らないうちに浮かれていたのかもしれない。
矢継ぎ早に聞くとギルが眉を寄せる。いきなりあれこれ聞いて不快にさせてしまったかなと思ったけどカイがそれを払拭してくれる。
「父ちゃんも元気だよ、姉ちゃんは最近男ができて兄ちゃんと父ちゃんは機嫌が悪いんだ」
カイの明け透けな言い方にギルが声を荒げる。
「カイ! 余計なこと言うな!」
「なんだよ、ほんとのことじゃんか」
怒られて不服そうにしながらもカイは口を噤んだ。
「なんだか意外ね」
「何がだ」
思ったことをそのまま口にしたら不機嫌そうな顔でじろりと見られた。
「昔は妹さんと一緒にいるところなんてあまり見なかったから、恋人ができて怒るなんて想像つかなくて」
「別に怒ってない」
恋人のことなんて気にしてないと言うけれど顔はそう言ってなかった。
「それに子供の頃はそりゃそうだろ。 あいつはまだ小さかったし、川で遊んだりするのは母さんが良い顔しなかったからな」
それはそうか。浅い川でも油断すれば滑って転んだりすることもあるし、少し大きくなるまでは行かせたくないと思うのも当然だ。
家が近づいてくるとカイが母ちゃんに伝えてくると言って走っていく。
元気だなーと思って見ているとカイが消えて行った扉が勢いよく開かれた。
「マリナ! ほんとにマリナなのかい!?」
兄弟と同じ髪色をした女性がおばさんの家から出てくる。
変わらない――……。
「おばさん、お久しぶりです」
昔のまま変わらない姿に喜びが込み上げる。
「ほんとに……! ああ、信じられない!
元気そうだね、立派になって……!」
感極まったおばさんに抱き締められる。
背を叩く手は痛いくらいだけれど、それほど再会を喜んでくれるのだと感じられてうれしい。
「お会いできてうれしいです! おばさんも元気そうで……」
「あたしは元気だよ、旦那もギルもエミも元気さ!」
エミという名前に聞き覚えはなかったけれどきっとギルの妹さんの名前だろう。
おばさんと再会を喜び合っていると呆れたギルの声が聞こえた。
「とりあえず家入れば?」
その声にマリナは冷静さを取り戻したけれど、おばさんは再会に水を差すんじゃないよ!と怒りだす。
「マリナも長旅で疲れてるだろうし、続きは座ってからにしろよ」
「そーだよ母ちゃん、俺ものど渇いた!」
ギルとカイの言葉におばさんも落ち着きを取り戻し、そして後ろに控えていたヴォルフに気が付く。
「ところでそちらの方は?」
おばさんの尤もな問いかけに答えたのはギルだった。
「マリナの恋人」
ギルの答えにおばさんが口を開けてマリナたちを凝視する。
そして開いた口から絶叫が飛び出す。
「な、なんだってーーー!!」
おばさんが再度落ち着くのにはそれなりの時間がかかった。
0
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説

【書籍化・3/7取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない
gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる