双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 故郷編

故郷 2

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 マリナが恋人を連れてきたと言ったことにとても驚いていたギルだけど、すぐに気を取り直して家に上がるよう誘ってくれる。
「とりあえず母さんに会って行けよ。
 喜ぶだろうし、長旅で疲れてるだろ。 茶の一杯くらい飲んでいけ」
 ギルの申し出はありがたいけれど、父親のことも気になる。
 思わず家のあった方向に向けた視線でギルはマリナが何を気にしているか察したらしい。父親は家にいないと教えてくれる。
「親父さんは、今家にいないだろ。 ホルクさんの家に行ってるから」
「そう……」
 ホルクさんが誰かは知らないけれど、出かけているなら戻ってからの方がいいだろう。
 狭い村なので探せば見つかると思うけれど、人を訪ねているところを邪魔するつもりもない。
「じゃあ、お邪魔するわ」
 気持ちの上では父親よりも会いたかったのでうれしい。元気にしてるかな。
「おばさん元気?」
「元気だよ。 あんまり変わらなくて驚くんじゃないか」
 ギルの声は明るい。昔のままだと聞いてほっとした。
「でも弟ができたなんてびっくりした。 妹さんも元気? おじさんは?」
 知った顔と再会できて自分でも知らないうちに浮かれていたのかもしれない。
 矢継ぎ早に聞くとギルが眉を寄せる。いきなりあれこれ聞いて不快にさせてしまったかなと思ったけどカイがそれを払拭してくれる。
「父ちゃんも元気だよ、姉ちゃんは最近男ができて兄ちゃんと父ちゃんは機嫌が悪いんだ」
 カイの明け透けな言い方にギルが声を荒げる。
「カイ! 余計なこと言うな!」
「なんだよ、ほんとのことじゃんか」
 怒られて不服そうにしながらもカイは口を噤んだ。
「なんだか意外ね」
「何がだ」
 思ったことをそのまま口にしたら不機嫌そうな顔でじろりと見られた。
「昔は妹さんと一緒にいるところなんてあまり見なかったから、恋人ができて怒るなんて想像つかなくて」
「別に怒ってない」
 恋人のことなんて気にしてないと言うけれど顔はそう言ってなかった。
「それに子供の頃はそりゃそうだろ。 あいつはまだ小さかったし、川で遊んだりするのは母さんが良い顔しなかったからな」
 それはそうか。浅い川でも油断すれば滑って転んだりすることもあるし、少し大きくなるまでは行かせたくないと思うのも当然だ。
 家が近づいてくるとカイが母ちゃんに伝えてくると言って走っていく。
 元気だなーと思って見ているとカイが消えて行った扉が勢いよく開かれた。
「マリナ! ほんとにマリナなのかい!?」
 兄弟と同じ髪色をした女性がおばさんの家から出てくる。
 変わらない――……。
「おばさん、お久しぶりです」
 昔のまま変わらない姿に喜びが込み上げる。
「ほんとに……! ああ、信じられない!
 元気そうだね、立派になって……!」
 感極まったおばさんに抱き締められる。
 背を叩く手は痛いくらいだけれど、それほど再会を喜んでくれるのだと感じられてうれしい。
「お会いできてうれしいです! おばさんも元気そうで……」
「あたしは元気だよ、旦那もギルもエミも元気さ!」
 エミという名前に聞き覚えはなかったけれどきっとギルの妹さんの名前だろう。
 おばさんと再会を喜び合っていると呆れたギルの声が聞こえた。
「とりあえず家入れば?」
 その声にマリナは冷静さを取り戻したけれど、おばさんは再会に水を差すんじゃないよ!と怒りだす。
「マリナも長旅で疲れてるだろうし、続きは座ってからにしろよ」
「そーだよ母ちゃん、俺ものど渇いた!」
 ギルとカイの言葉におばさんも落ち着きを取り戻し、そして後ろに控えていたヴォルフに気が付く。
「ところでそちらの方は?」
 おばさんの尤もな問いかけに答えたのはギルだった。
「マリナの恋人」
 ギルの答えにおばさんが口を開けてマリナたちを凝視する。
 そして開いた口から絶叫が飛び出す。
「な、なんだってーーー!!」
 おばさんが再度落ち着くのにはそれなりの時間がかかった。
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