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セレスタ 故郷編
盗賊退治 3
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本隊は他の隊より人数が多く、突入班と指揮班に分かれる。
突入班を任されたルーカスはフランツやラースと共にその時を待っていた。
クリストとユリウスが配置に着けば連絡が来る。
それまでは息を潜めて盗賊たちの様子を窺う。
森は静かで、盗賊たちの気配も掴めない。
こうして耳を澄ませていても、自分たちの存在しか感じられなかった。
やがて耳が配置が終わったことを知らせに来た伝令の足音を捉える。
「では始めましょうか?」
マリナ殿の声にフランツが頷いた。
目を閉じ、集中を高めるように一つ呼吸を入れる。
それだけでマリナ殿が纏う雰囲気が一変した。
魔術師が作り出した、我々を惑わし行く先を歪める魔術を破る。
彼女なら容易いのだろう。気負う様子など全くない。
幼く見える顔には自らの力を理解し、冷静に役目を果たさんとする自負が見える。
再び目を開けた時には、彼女は魔術師として最高峰と謳われる『双翼の魔術師』になっていた。
すっと手を伸ばし、指先で何かを指す。
指先がわずかに右に引かれる。まるで何かを裂くように。
その瞬間、見えていた景色が変わった。
「……!」
誰かが驚愕の息を漏らす。
息を漏らすことは堪えた自分も高揚は隠せなかった。
戦意を漲らせフランツの指示を待つ。
魔術が消えると同時にフランツが即座に合図をした。
「……」
指示を受けて走り出す。事前に聞いていた魔術の効果範囲からして盗賊たちの居場所は近い。
すぐに根城が見えてきた。
部下の一人が先行し扉を破壊する。同時に別働隊が窓を破り中に入り込んだ。
「クリストたちに遅れるな!」
ここまでくれば声を潜める理由もない。
破壊した扉から室内へ入って行く部下たちに檄を飛ばし自分も突入した。
騒音に目を覚ました盗賊たちが廊下に出てくる。
慌てたのか武器も持たずに現れた男が慌てて踵を返す。それを逃がすわけもない。
男を追いかけ昏倒させる。捕縛は部下に任せ、奥へ進んだ。
他にも慌てて出てきた者を倒し、捕えていく。
「魔術師は見当たらないな」
一番警戒が必要なのは頭目よりも魔術師だ。
マリナ殿が妨害してくれているとはいえ、魔術の使えない自分たちにとって魔術師は脅威だった。
急襲された衝撃から覚め、反撃する者も現れ始めた。とはいえ完全には動揺から立ち直れず、部下たちに打ち倒されている。
「抵抗を止めて大人しく投降しろ!」
廊下の奥に見えた頭目らしき男に叫ぶ。
「ふざけんな! 騎士団ごときに捕まって堪るか!!」
怒声を上げ短剣を投げつけてくるが、距離があるため牽制にしかならない。
攻撃が止んだところで一気に距離を詰める。
「まだあんだよ!」
廊下の半分ほどまで進んだところで男が隠し持っていた短剣を振り上げた。
「……がっ!」
男の手から短剣が離れる前に、別の部屋から入り込んだクリストが現れ男の腕を切りつける。
短剣を落とした男が逆手で懐の懐剣を抜こうとするが、ルーカスが投げつけた短剣を手の甲に受け、悲鳴を上げ倒れた。
「いいところを取っていきますね」
暴れる男を押さえ縄を掛けるクリストに向かって軽口を叩く。
まだ懐剣を離さない男の手を押さえつけ、懐剣を取り上げる。
「たまには譲ってくれてもいいだろ?」
縄を掛け終えたクリストは片目をつぶって答えた。
「しかし魔術師が出てこないな」
「ええ、マリナ殿の見立てがあるからにはいるはずなんですが」
部下たちの報告を聞いても建物内に残党はいないとのこと。
「仕方ない、とりあえず外に出るか」
「そうですね」
魔術や魔力を感知できない自分たちが闇雲に探すよりマリナ殿に意見を聞いた方がいい。
建物内はクリストたちと部下に任せ、ルーカスは本隊に一度戻ることにした。
突入班を任されたルーカスはフランツやラースと共にその時を待っていた。
クリストとユリウスが配置に着けば連絡が来る。
それまでは息を潜めて盗賊たちの様子を窺う。
森は静かで、盗賊たちの気配も掴めない。
こうして耳を澄ませていても、自分たちの存在しか感じられなかった。
やがて耳が配置が終わったことを知らせに来た伝令の足音を捉える。
「では始めましょうか?」
マリナ殿の声にフランツが頷いた。
目を閉じ、集中を高めるように一つ呼吸を入れる。
それだけでマリナ殿が纏う雰囲気が一変した。
魔術師が作り出した、我々を惑わし行く先を歪める魔術を破る。
彼女なら容易いのだろう。気負う様子など全くない。
幼く見える顔には自らの力を理解し、冷静に役目を果たさんとする自負が見える。
再び目を開けた時には、彼女は魔術師として最高峰と謳われる『双翼の魔術師』になっていた。
すっと手を伸ばし、指先で何かを指す。
指先がわずかに右に引かれる。まるで何かを裂くように。
その瞬間、見えていた景色が変わった。
「……!」
誰かが驚愕の息を漏らす。
息を漏らすことは堪えた自分も高揚は隠せなかった。
戦意を漲らせフランツの指示を待つ。
魔術が消えると同時にフランツが即座に合図をした。
「……」
指示を受けて走り出す。事前に聞いていた魔術の効果範囲からして盗賊たちの居場所は近い。
すぐに根城が見えてきた。
部下の一人が先行し扉を破壊する。同時に別働隊が窓を破り中に入り込んだ。
「クリストたちに遅れるな!」
ここまでくれば声を潜める理由もない。
破壊した扉から室内へ入って行く部下たちに檄を飛ばし自分も突入した。
騒音に目を覚ました盗賊たちが廊下に出てくる。
慌てたのか武器も持たずに現れた男が慌てて踵を返す。それを逃がすわけもない。
男を追いかけ昏倒させる。捕縛は部下に任せ、奥へ進んだ。
他にも慌てて出てきた者を倒し、捕えていく。
「魔術師は見当たらないな」
一番警戒が必要なのは頭目よりも魔術師だ。
マリナ殿が妨害してくれているとはいえ、魔術の使えない自分たちにとって魔術師は脅威だった。
急襲された衝撃から覚め、反撃する者も現れ始めた。とはいえ完全には動揺から立ち直れず、部下たちに打ち倒されている。
「抵抗を止めて大人しく投降しろ!」
廊下の奥に見えた頭目らしき男に叫ぶ。
「ふざけんな! 騎士団ごときに捕まって堪るか!!」
怒声を上げ短剣を投げつけてくるが、距離があるため牽制にしかならない。
攻撃が止んだところで一気に距離を詰める。
「まだあんだよ!」
廊下の半分ほどまで進んだところで男が隠し持っていた短剣を振り上げた。
「……がっ!」
男の手から短剣が離れる前に、別の部屋から入り込んだクリストが現れ男の腕を切りつける。
短剣を落とした男が逆手で懐の懐剣を抜こうとするが、ルーカスが投げつけた短剣を手の甲に受け、悲鳴を上げ倒れた。
「いいところを取っていきますね」
暴れる男を押さえ縄を掛けるクリストに向かって軽口を叩く。
まだ懐剣を離さない男の手を押さえつけ、懐剣を取り上げる。
「たまには譲ってくれてもいいだろ?」
縄を掛け終えたクリストは片目をつぶって答えた。
「しかし魔術師が出てこないな」
「ええ、マリナ殿の見立てがあるからにはいるはずなんですが」
部下たちの報告を聞いても建物内に残党はいないとのこと。
「仕方ない、とりあえず外に出るか」
「そうですね」
魔術や魔力を感知できない自分たちが闇雲に探すよりマリナ殿に意見を聞いた方がいい。
建物内はクリストたちと部下に任せ、ルーカスは本隊に一度戻ることにした。
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