双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 故郷編

盗賊退治 2

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 昨日と同じ森を見下ろせる場所で、マリナは森に集まる魔力を視認する。
 変わらず魔力が森の中心を覆っていることに安堵した。とりあえず逃げてはいないようだ。
 せっかく突き止めたのに逃げられたら台無しになる。
 フランツさんにそれを伝えると彼は隊を3班に分けた。
 森の入り口から入った後はそれぞれ分かれて行動することになる。
 正面から進む隊と横から回り込む隊、背面で逃げた盗賊を待ち受ける隊だ。
 マリナは一番人数の多い正面から真っ直ぐに進む本隊と一緒に行動をする。
 ヴォルフは背面で待機する隊に参加していた。
 これは現地の騎士団に作戦の根幹を任せるのと、突入開始の合図をわかりやすくする意味がある。
 マリナとヴォルフが持つ対の魔道具はここでも有効だった。
 普通なら笛や伝令で報せ突入を合わせるが、相手に気付かせないことと速さを考えたら魔道具で知らせた方が早い。
 横を突く隊には知らせられないけど、本隊とはそれほど離れないので伝令で間に合う。
「では行きましょうか」
 フランツさんの合図に従って騎士たちが動き出す。
 森の入り口付近まで来ると魔力がはっきりと感じられた。
 馬から降りて準備をする騎士たちを横目に見ながらマリナは魔術師の居場所を確かめる。
「……魔術師は奥の方にいますね」
 魔術の効果範囲は事前に地図に描いて見せていた。
 扇形に広がる魔力は正面が一番広く、後ろ側は狭い。そこにいるのに存在を認識できなくなる、一種の結界のようなものだった。
 人が入ってくるはずもない真夜中まで魔術を張っているのだから周到だ。
「予想通りか、では作戦通りに」
 横から突入する隊を仕切っているクリストさんの言葉にフランツさんが頷く。
 クリストさん率いる部隊が森の奥へ進む。
 同時に背面を任されたユリウスさんとその部下たちが無言のまま続いた。ヴォルフも後ろに続く。
 別働隊が森の奥に消えた後は配置に着くのを待って突入することになる。
 本当はマリナも奥に進んだ方が魔術師対策にはいいのだけれど、あんまり出しゃばるのもどうかと思うので止めた。ただでさえラースさんに睨まれているのに。
 広範囲を魔術が使えないように妨害すればいいんだし。
 待機している騎士たちは落ち着いて見えるけれど辺りには作戦の直前らしい緊張感が漂っている。
 夜の森特有の音に耳を澄ませてその時を待つ。
 伝令の騎士が全員配置に着いたことを知らせる。
「では、始めましょうか?」
 フランツさんに確認を取って森の奥を見据えた。
 一つ息を吸って魔力を流す。
 森の中心を覆う自然とは違う魔力。
 上書きするように外側から魔力で覆い、『壊す』。
「……!」
 森の風景が変わったのが誰の目にも明らかになる。
 草木の茂った場所に踏みならされた道が現れ、根城の場所を教えた。
「……」
 号令はない。手振りのみで突入を伝えたフランツさんに従って騎士たちが一斉に動き出す。
 マリナもヴォルフに向けて突入開始を知らせる。
 ほどなく森の奥から怒声や剣戟の音が聞こえてきた。
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