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セレスタ 故郷編

盗賊退治 1

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 夜が明ける前の街道を駆ける。
 昨日の今日で動くこともないだろうと盗賊たちが根城を作っている森に向かって走っていた。
 偵察に行った騎士たちだけじゃなく、大勢の騎士が一緒に走っている。
「本当に大丈夫なんだろうな」
 疑わしそうな声で呟いたのはラースさんだろう。
 暗くても声でわかる。
 というか助っ人に来てる魔術師にそんな口を叩くのは彼くらいだ。
 他の人は『協力者』に対する敬意を忘れずに接してくれる。
 内心悔しく思っている人はいるだろうだろうけど。
 けれどそれを前面に出して作戦を危うくさせるお子様・・・はいない。
 自分たちだけで何もかも解決できるなんて思うような我の強い人は騎士団には邪魔だ。
「聞いているのか?
 昨日のような偵察とは違うんだ、実戦を前にして動けなくなるなら今のうちに戻れ」
 馬を隣に並べて横目で睨んでくる。
(このままだと出世は出来そうにないなあ)
 そんな失礼な思考を隠してにこやかに答えると、ラースさんが顔を顰めた。
「ご安心ください。
 こういった実戦も経験がありますし、皆様にご迷惑をかけるようなことは致しませんから」
 嘘は言っていない。実戦経験を付けるために犯罪組織の捕縛に同行したことがある。
 護衛が襲撃を受けた際に動揺して使い物にならなくては困るので双翼の候補に挙げられた頃から幾度も参加している。
 はっきり言ってラースさんよりも実戦経験は多いと思う。
 もしマリナに実戦経験がなく、怯えて足手まといになったとしても、それを守って任務を遂行できなければ魔術師と組んで仕事はできない。
 不安や恐怖から普段通りに魔法が使えない魔術師は確かにいる。
 けれどそれを安心させ、魔法を使えるような状態にするのも騎士の仕事だ。
 ラースさんのように恫喝まではいかなくても否定的な言葉と敵意をぶつけてくる人には少し難しそうだけど、これができないと先々困ることになるでしょうね。
 そんなことはおくびにも出さずに微笑みを浮かべながら答える。
「それに私の仕事は盗賊に気付かれないように近づく補助と魔術の妨害です。
 盗賊たちに近づくわけではありませんから、それほど危険はないでしょう。
 何かあれば鍛えている皆様が近くにいらっしゃるのです、私が無闇に動かなければ大丈夫ですよね」
 可能であれば森の外にいるし、無理でもマリナの元まで盗賊たちがやって来ることは考えられない。
 油断はしないけど、マリナのところに盗賊が来るようなことになったら包囲は瓦解してるだろうし、その時点で作戦は失敗だろう。
「大丈夫だと考えることが油断に繋がるんだ。 敵のいる場所での油断は命取りだぞ」
「そうですね、心に留めておきます」
 にこ、と笑うと不快そうに顔を歪めた。失礼な。
 ラースさんの小言はフランツさんに無駄口を注意されるまで続いた。
 そんな睨まれても。自業自得だと思う。
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