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セレスタ 故郷編
治療院 1
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宿舎に案内してもらって一息つく。
予定では今頃故郷に着いているはずだったんだけど。まさかあんな場面に遭遇するなんて思わなかった。
傷を負った男性に縋りつくアンネさんの顔が頭に浮かぶ。
様子を見に行こうと立ち上がるとヴォルフがどこに行くのかと聞いてくる。
「アンネさんの様子を見に行くわ。 治療院と、いなければパン屋に行ってくる」
「俺も行こう」
「ヴォルフも?」
珍しいことを言うなと思っていると忘れていたことを思い出させられた。
「まだ昼を取っていないだろう。 ついでに食べに行くぞ」
「言われてみたら……、そうだったわね」
お昼の時間はとうに過ぎているけれど、まだ何も食べていなかった。
気が付いたら急激に空腹を実感する。
夜まではまだ時間があり、我慢できそうもない。
ヨハンさんに教えてもらった治療院に向かったら食事にしよう。
騎士団宿舎の食堂ご飯は夜のお楽しみにしてマリナたちは宿舎を出て治療院に向かった。
治療院は騎士団の宿舎から左程離れていなかった。
中に入ると朝の騒ぎを引きずって、まだ騒然とした気配が漂っている。
入り口で受付をしている女性に朝の騒ぎで運ばれた人たちが運ばれた部屋を聞くと、朝会った医者が通りがかった。
「おや、魔術師のお嬢さん」
「あ、どうも」
この人も朝から休んでいないのだろう。表情こそ穏やかだけど疲れた雰囲気をしている。
「お疲れ様です」
「いやいや、お嬢さんこそ高度な魔術を使って疲れただろう。
具合でも悪くしたかね?」
心配そうな顔をされて慌てて否定する。これ以上仕事を増やしてはいけない。
「いえいえ、元気ですよ。
そうではなく、ここに運ばれた方のことについてお聞きしたくて」
「旅の魔術師と聞いていたが、知り合いでもいたのかね」
知り合いは運ばれた方ではないので説明に困る。
「いえ、そういうわけではないのですが。
意識不明だった男性のところにアンネさんという女性がいらっしゃいませんか?」
「ああ、あの子ならまだ付き添っておるよ」
医者の答えに心配が湧く。朝からずっと付き添っているんだろうか。
「そうですか……。 案内していただいてもよろしいでしょうか?」
「かまわんよ、付いて来なさい」
先に立って歩いていく医者の後を追いかけ院内を歩く。
「朝からずっと怪我人の治療の続きと家族への説明に追われていてな、ようやく人心地ついたところなのだ」
「そうでしたか……、怪我の程度はどのくらいでしょうか」
「なに、すぐに治療をしてもらえたおかげでほとんどの者は全治一週間から半月と言ったところだ。
一番重症だったクルトだけはもう少し時間がかかるだろうが」
数人だけが入院の必要することになるけど自宅療養できる人の方が多いらしい。
「さて、ここがクルトの病室だ。
アンネはクルトが運ばれてからずっと側についとる。 そろそろ休憩も必要だろう、お嬢さんが上手く連れ出してやってくれ」
「わかりました」
なんだか押し付けられたような気もするけれどまあいいかと思い直す。
頼んだぞと立ち去って行く医者に患者の家族らしき人が声を掛ける。
彼が休みを取れるのはもう少しだけ先のようだ。
病室に入ると思い詰めた目をしたアンネさんが目に入る。
「アンネさん」
「マリナさん……、ヴォルフさんも」
声を掛けると力ない声が返ってくる。これは医者も心配するはずだ。
「少し休憩に行きませんか?」
「でも、クルトさんが……」
眠る男性を見て顔を痛ましそうな表情に染める。
立とうとしないアンネさんの手を取ると、零れ落ちそうに涙が湛えられた瞳と視線が合った。
「クルトさんは大丈夫です。 一命は取り留めましたし、お医者さんも見ていてくれますから」
意識が戻っていないのは心配だけど急変するような容体にも見えない。
大丈夫ですよと念を押すとアンネさんはようやく立ち上がった。
予定では今頃故郷に着いているはずだったんだけど。まさかあんな場面に遭遇するなんて思わなかった。
傷を負った男性に縋りつくアンネさんの顔が頭に浮かぶ。
様子を見に行こうと立ち上がるとヴォルフがどこに行くのかと聞いてくる。
「アンネさんの様子を見に行くわ。 治療院と、いなければパン屋に行ってくる」
「俺も行こう」
「ヴォルフも?」
珍しいことを言うなと思っていると忘れていたことを思い出させられた。
「まだ昼を取っていないだろう。 ついでに食べに行くぞ」
「言われてみたら……、そうだったわね」
お昼の時間はとうに過ぎているけれど、まだ何も食べていなかった。
気が付いたら急激に空腹を実感する。
夜まではまだ時間があり、我慢できそうもない。
ヨハンさんに教えてもらった治療院に向かったら食事にしよう。
騎士団宿舎の食堂ご飯は夜のお楽しみにしてマリナたちは宿舎を出て治療院に向かった。
治療院は騎士団の宿舎から左程離れていなかった。
中に入ると朝の騒ぎを引きずって、まだ騒然とした気配が漂っている。
入り口で受付をしている女性に朝の騒ぎで運ばれた人たちが運ばれた部屋を聞くと、朝会った医者が通りがかった。
「おや、魔術師のお嬢さん」
「あ、どうも」
この人も朝から休んでいないのだろう。表情こそ穏やかだけど疲れた雰囲気をしている。
「お疲れ様です」
「いやいや、お嬢さんこそ高度な魔術を使って疲れただろう。
具合でも悪くしたかね?」
心配そうな顔をされて慌てて否定する。これ以上仕事を増やしてはいけない。
「いえいえ、元気ですよ。
そうではなく、ここに運ばれた方のことについてお聞きしたくて」
「旅の魔術師と聞いていたが、知り合いでもいたのかね」
知り合いは運ばれた方ではないので説明に困る。
「いえ、そういうわけではないのですが。
意識不明だった男性のところにアンネさんという女性がいらっしゃいませんか?」
「ああ、あの子ならまだ付き添っておるよ」
医者の答えに心配が湧く。朝からずっと付き添っているんだろうか。
「そうですか……。 案内していただいてもよろしいでしょうか?」
「かまわんよ、付いて来なさい」
先に立って歩いていく医者の後を追いかけ院内を歩く。
「朝からずっと怪我人の治療の続きと家族への説明に追われていてな、ようやく人心地ついたところなのだ」
「そうでしたか……、怪我の程度はどのくらいでしょうか」
「なに、すぐに治療をしてもらえたおかげでほとんどの者は全治一週間から半月と言ったところだ。
一番重症だったクルトだけはもう少し時間がかかるだろうが」
数人だけが入院の必要することになるけど自宅療養できる人の方が多いらしい。
「さて、ここがクルトの病室だ。
アンネはクルトが運ばれてからずっと側についとる。 そろそろ休憩も必要だろう、お嬢さんが上手く連れ出してやってくれ」
「わかりました」
なんだか押し付けられたような気もするけれどまあいいかと思い直す。
頼んだぞと立ち去って行く医者に患者の家族らしき人が声を掛ける。
彼が休みを取れるのはもう少しだけ先のようだ。
病室に入ると思い詰めた目をしたアンネさんが目に入る。
「アンネさん」
「マリナさん……、ヴォルフさんも」
声を掛けると力ない声が返ってくる。これは医者も心配するはずだ。
「少し休憩に行きませんか?」
「でも、クルトさんが……」
眠る男性を見て顔を痛ましそうな表情に染める。
立とうとしないアンネさんの手を取ると、零れ落ちそうに涙が湛えられた瞳と視線が合った。
「クルトさんは大丈夫です。 一命は取り留めましたし、お医者さんも見ていてくれますから」
意識が戻っていないのは心配だけど急変するような容体にも見えない。
大丈夫ですよと念を押すとアンネさんはようやく立ち上がった。
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