双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 故郷編

旅の途中で 4

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 通りに出た所で二人と別れる。
 アンネリーさんはこれから仕事があるらしいけど、アンネさんが心配だからと一緒に帰って行った。
 それから仕事に向かうつもりなんだろう。若干心配しすぎではないかと思うけどあの男性の様子では心配が募るのも当然か。
 マリナたちが目撃する以前にもアンネさんに強引に迫ったことがあるみたいだし。
 微笑んだ瞳に宿った決意を思い浮かべる。
 上手くいくといいんだけど……、と心の中で呟いたら頭に手が乗せられた。
「飯にするか」
「うん……、そうね!」
 声に出して気持ちを切り替える。
 きっともう通りの店は開かれているだろうし、街の散策は途中にして戻ることにした。
「何食べたい?」
 朝は早いけど過ぎなければお酒を飲んでもいいだろう。
 夏の夜に炭酸酒は合う。喉が渇いているのでおいしくいつもよりおいしく感じられそうだ。
「鶏肉が食べたい気分だな」
「メニューにあるといいね」
 あれこれと話しながら店に向かう。
 予想通り通りにはテーブルが並べられていて、ちらほら仕事を終えたらしき人々が酒を飲みながら食事を楽しんでいる。
 座ってテーブルに乗せられたメニューを見る。どうやら近くの店で共同で料理を提供しているらしく、思ったより種類が多かった。
「これにしよっかな」
 マリナは野菜を酢と香辛料で味付けした料理にした。ヴォルフは食べたがっていた鳥料理があったのでそれを頼んだ。
 日本で言う焼き鳥に近い料理だけど味付けは塩と香辛料のみでシンプルだ。お酒に合いそう。
 料理が来るまでお酒を飲んで待つ。
「外で飲むのって初めてね」
 自分たちの部屋以外の場所でお酒を酌み交わすのは初めてだった。
 外食自体あんまりしないので珍しいことだ。
 外での食事といえば視察先での野営の方が回数が多いかもしれない。
「そうだな。 たまにはいいものだ」
 ヴォルフが柔らかく笑う。
 こんな穏やかな顔を見せるのもまた珍しい。
 昼の名残の暑さに風が心地よくてマリナも表情を緩める。
「ああ、緊張する」
 口にして緊張を和らげる。故郷が近づいていることを思うとやっぱり緊張してしまう。
 おばさんたちはマリナのことをわかってくれるかな。
 家の場所すらもわからなくなっていたらどうしよう。
 田舎のことなので家の場所なんて変わっていないと思うけど、幼いころの記憶は色々と曖昧だし、不安は尽きなかった。
 素直に不安を零すマリナにヴォルフは笑いを零す。
 口を尖らせて不満を表情に表すとますます表情を緩ませる。
「なんで笑うのよ」
「あんまり見ない表情を見たと思ってな」
 そう言うヴォルフの表情が幸せそうで何も言えなくなってしまう。
 照れ臭さを誤魔化すようにお酒に口を付ける。
 ちらりと見上げると視線が交わり沈黙が落ちた。
 気まずいものではなく、穏やかな空気が間に満ちる。
 沈黙を破ったのは運ばれた料理とそれを持って来た給仕の声だった。
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