双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 故郷編

旅の途中で 1

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 天候に恵まれてよかった。
 青い空を見上げて口元を緩める。
 ここしばらく雨も振らなかったので走りやすいし、見事な青空は憂鬱な心を晴らしてくれる。
 考えてみたら旅立ちの日はいつも晴れていた。
 故郷を出た日もそうだし、今日もこうして空は雨の気配なんて微塵もない。
「どうかしたか?」
 顔を上げて視界いっぱいに空を映していると先を行っていたヴォルフが足を緩めて隣に並ぶ。
「なんでもない。 ただ、いい天気だなって思って」
「そうだな。 思ったよりも早く街に着きそうだな」
 まず目指すのはクルックス地方の中核都市。
 アルフェラは一日で辿り着けるほど近い場所ではないのでまずはクルックス地方で一番大きい街に向かう。
 二日目の昼過ぎにアルフェラに着く予定だった。
 事前に調べた通り、険しい道もなく順調すぎるくらいに進んでいる。
 そんな時にこそ問題と出くわすものだけれど、何事もなく辿り着いた。
 ちゃんと休憩を挿みながら走っていたのに明るいうちに着くとは思わなかった。夜になると予想していたのに。
 宿に荷物を置いて食事に出る。
 マリナもヴォルフも食事にこだわりは無い方だけれど、せっかく遠い街まで来たので名物を食べたい。
 明日も出立は早いので朝は簡単な物になってしまうから、尚更だ。
「夕方以降は通りにテーブルを出して料理を楽しめるみたいだな」
「気持ちよさそうね」
 まだ暑さの残る季節なので、風を感じながら食事をできるのは心地よさそう。
「ちょっと早いみたいだから適当に散歩して来ようかな。
 街を一周してきたらちょうどいい時間になりそうじゃない?」
 陽は傾き始めているので少ししたら始まりそうだけど、通りの端でぼけっと突っ立っていても邪魔よね。
 じっと待っているのもつまらないし、この街には初めて来るのでどんなところかざっくりとでも知っておきたい。いずれ役に立つかもしれない。
 ヴォルフもただ待っているのは退屈に感じたのか了承してくれた。
 こうしてふたりでゆっくりと時間を取れるのは久しぶりだ。
 普段は夜にどちらかの部屋で就寝までのわずかな時間を過ごすだけなので素直にうれしかった。
 街中は明るい色の建物が多く、見ていて楽しい。
 外壁が赤みを増していく太陽に照らされてほんのり色づいてきている。
 街の中心の通りからは色々な店が見えた。
 レグルスと違ってのんびりした雰囲気を感じる。
 この辺りは昔から穀倉地帯として栄えてきた歴史がある。
 近く国境を接する隣国も同じく農業が盛んなので領土争いになったこともない。
 攻め入ってくるには国境近くではないし、セレスタは昔から魔術に優れ周辺国より一歩抜きん出ていたので仕掛けるには力に不安があったのだろう。
 おかげでこの近くの国とは戦争になったことはない。
 争いに巻き込まれることがなかったので人々も陽気で穏やかな性質を持つ人が多いと聞いた。
 呼び込みをする人やその声に答える人の様子を見ていると習った事柄が実感として理解できてくる。
 他の街と比べて低い城壁もその証だろう。
 ただ歩いているだけでも十分に楽しめる。
 不自然なところはないか半分仕事として観察はしているけれど、心は楽しむ方に主軸を置いていた。
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