双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 波乱の婚約式編

マールアの第一王子 1

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 ユリノアスの許可があったのでマリナは時々あの庭園に行っていた。
 特に何をするわけでもないけれど、部屋に籠っているよりは外に出た方が楽しい。
 庭園は本当に広い。歩きつかれたので水路の端に腰掛けて足を揺らす。
 人がいないので多少行儀悪くてもいいだろう。カイゼも何も言わないし。
 カイゼは黙ってマリナの行動を見ている。
 マリナが大人しくしているせいか、カイゼは何も注意をしてこない。
 ぼーっと水面を見つめていたマリナは近くに人が来るまで気が付かなかった。
「そなたは……?」
 声が聞こえてマリナは顔を上げた。
 水路を二つ挟んだ遊歩道に一人の男性が立っている。
 カイゼの反応を見るまでもなく、誰だかわかった。
「セレスタの魔術師、マリナと申します」
 立ち上がって礼をすると、近くまできた男性が納得したように頷く。
「ああ、ユリノアスから聞いている。 セレスタのたえなる星を手に入れたと」
 詩めいた言葉で返されて内心面倒臭いなと思う。
「星屑はいずれ消え去る定め。 そうなれば存在したことすらも記憶から消えてしまうものです」
「そなたもいずれ消えゆく星だと?」
「はい。 人は皆、星よりも儚く消えゆくものです」
 比喩で答えながらむずがゆさを感じる。
 マリナの周りには普段から回りくどい言い方を好む人間はいないのでどうにもなれない。
 相手の身分を思えば平素な話し方をするわけにもいかないので合わせている。
 マリナの答えに男性が目を細めて笑う。
「そなたの瞳には消えゆく定めの儚さは感じられないな。
 どちらかといえば消える直前すらも燃え上がる、炎のような強さを感じる」
「ありがとうございます」
 彼が褒めたつもりかどうかはわからないが、そう答えておく。
 儚げと言われるよりは強い、もしくはしぶといと言われた方が認められていると感じる。時と場合によるが。
 少なくともマリナにとって儚げというのは褒め言葉ではない。
「ふっ、否定もせぬか。
 なるほど、ユリノアスが惹かれたというのは自身で輝く綺羅星か」
 また詩的な表現で返ってきた。そういった表現が好きなのか、だとしたら会話が続くと苦しい。
「私が何者かはすでにわかっていような」
「ええ。 第一王子ユースティス様」
 艶やかな黒髪に、瞳はユリノアスと同じ水色。
 理知的で静かな面差しは、幼さや甘さを加えたらユリノアスに良く似ている。
 どう見ても血縁関係があるようにしか見えなかった。
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