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セレスタ 波乱の婚約式編
俺とシャルロッテとアルフと爺様と 2
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絶句する俺たちをよそにジジイが茶を飲む。
なんでそんなに落ち着いてんだよ。
苛立ちが胸を支配する。
「どういうことだよ」
いきなり聞かされた話に戸惑うよりも不審が先に立った。
「言葉の通りだ」
ジジイの落ち着き払った態度が感情を逆なでする。
「だから意味がわかんねえんだよ!!
全然説明になってないだろうが!!」
立ち上がって説明しろと詰め寄る。
それだけでどう判断しろってんだ。
「お前は相変わらず口が悪いな」
「今はそんなことは関係ねえだろ!!」
「ちょ、ちょっと! お爺様もテオも落ち着いて!」
一番混乱しているはずのシャルロッテに止められて冷静さが戻る。
アルフが俺の肩に手を置き座るように促す。
「お爺様、どういうことですの?
攫われたって、いつ……。
いえ、どうして……?」
混乱して考えがまとまらないままシャルロッテの口から言葉が零れていく。
「いつかは知らぬが婚約式の前後だろう。マールアの者が王宮に入れたのはその時だけだ。
どうしてというなら恐らくはマリナ殿の持つ力を狙ってだな。
彼女は魔術師として非常に優秀なのだろう?」
確かにあいつの魔術の腕は今のセレスタ随一と言われているほどだ。
「マールア……。 あまり魔術が発展していない国ですね」
アルフが口にするマールアの情報にジジイが頷く。
「ああ、あまり魔術を好んではいないと聞いているが、周りの国がセレスタより魔術を学んでいることに危機感を持っているようだな」
「だから手っ取り早く魔術師を攫うことにしたってのかよ」
マールアがセレスタに対してきな臭い動きをしているのは知っている。
だからといって正式に招かれた使者が王宮で働いている人間を攫っていくって有り得ないだろう。
シャルロッテが不安に瞳を揺らす。
「そんな……。 それではマリナはどうなるのです!?」
「心配するな。 王子はマリナ殿を救出するため騎士団を派遣すると宣言した」
「騎士団を?」
初耳だ。そもそもあいつが攫われたってことも初耳だが。
アルフを見るとアルフも聞いてないと首を振る。
俺と違って見習いでないアルフも聞いてないってことは実際に向かう少数にしか知らされてないってことなんじゃないか?なんでジジイが知ってんだ。
「マリナ殿の姿が見えないことは一部貴族の間で問題になっていてな、同時に国境で騎士団が厳重に馬車を検める動きをしていたというので不審に思っていた。
今日は王子に仔細を聞こうという集まりだったのだ」
騎士団に所属する俺たちですら知らない情報を集める貴族たちの情報網に警戒が走る。
あいつの姿が見えなくなってたことすら俺は知らなかった。
下っ端だから知らなかったは言い訳にならない。
何より俺は近衛騎士のピリピリした雰囲気を感じていたはずだ。
自分の足らなさに嫌気がさす。
「その場で王子は私たちに宣言をされた。
一両日中に噂が広まると思ったのでな。
先にシャルロッテには話しておこうと思ったのだ」
なるほどな。噂でいきなり知らされたらシャルロッテは激しく動揺するだろう。
それを防ぐために今日会いに来たのか。
相変わらずシャルロッテには甘い爺様だ。
その配慮に安堵が湧くのは自分もシャルロッテの泣き顔なんて見たくないからだろう。
普段の強気な顔が不安に曇るところを見たら落ち着かない気分になる。
シャルロッテの顔には驚きと不安があったが、ジジイが大丈夫だと言ったからかまだ落ち着いていた。
王子から直接話を聞いたジジイの話だからというのもあるだろうな。
「そんなわけだから、噂を聞いても落ち着いていなさい。
王子が言った以上必ずマリナ殿は戻ってくるだろうからな」
「はい……」
まだ不安そうだったが納得したのかシャルロッテは笑みを作って返事をした。
「そうだわ、フローラにも話しておかないと」
心配しちゃう、とシャルロッテが腰を浮かす。
「フロレンティーナ嬢もマリナ殿と面識があったのか?」
意外そうな顔をしたジジイが俺を見る。
俺も知らねえよそんなの。
「何度か一緒にお茶をしたことがあるわ。
時間が空いたら一緒に王都で買い物しましょうって約束してたの」
初耳だ。あの見るからに気弱な伯爵令嬢がシャルロッテとあの女に挟まれて楽しめるのか?
「フローラは魔法を習ったこともあるからマリナとも話が弾んでるわよ?」
俺とジジイの視線を受けてシャルロッテが答える。
「へえ……」
意外過ぎる。委縮して話も出来なさそうなのにな。
ジジイはシャルロッテの言葉を聞いて何か考えている。
悪い顔してんなあ。
シャルロッテがあの女の名前を呼び捨てにしたとき目がぎらついたのを俺は見逃さなかった。
ほんと親父と似てんな。
野心家で力を求めることに貪欲だ。
シャルロッテには甘いところもあるが家のためになると考えればその交友関係を利用することも選択肢に入れる。
貴族としては普通のあり方なんだろうけどな。
この家に婿に入るアルフの未来が少し心配になった。
なんでそんなに落ち着いてんだよ。
苛立ちが胸を支配する。
「どういうことだよ」
いきなり聞かされた話に戸惑うよりも不審が先に立った。
「言葉の通りだ」
ジジイの落ち着き払った態度が感情を逆なでする。
「だから意味がわかんねえんだよ!!
全然説明になってないだろうが!!」
立ち上がって説明しろと詰め寄る。
それだけでどう判断しろってんだ。
「お前は相変わらず口が悪いな」
「今はそんなことは関係ねえだろ!!」
「ちょ、ちょっと! お爺様もテオも落ち着いて!」
一番混乱しているはずのシャルロッテに止められて冷静さが戻る。
アルフが俺の肩に手を置き座るように促す。
「お爺様、どういうことですの?
攫われたって、いつ……。
いえ、どうして……?」
混乱して考えがまとまらないままシャルロッテの口から言葉が零れていく。
「いつかは知らぬが婚約式の前後だろう。マールアの者が王宮に入れたのはその時だけだ。
どうしてというなら恐らくはマリナ殿の持つ力を狙ってだな。
彼女は魔術師として非常に優秀なのだろう?」
確かにあいつの魔術の腕は今のセレスタ随一と言われているほどだ。
「マールア……。 あまり魔術が発展していない国ですね」
アルフが口にするマールアの情報にジジイが頷く。
「ああ、あまり魔術を好んではいないと聞いているが、周りの国がセレスタより魔術を学んでいることに危機感を持っているようだな」
「だから手っ取り早く魔術師を攫うことにしたってのかよ」
マールアがセレスタに対してきな臭い動きをしているのは知っている。
だからといって正式に招かれた使者が王宮で働いている人間を攫っていくって有り得ないだろう。
シャルロッテが不安に瞳を揺らす。
「そんな……。 それではマリナはどうなるのです!?」
「心配するな。 王子はマリナ殿を救出するため騎士団を派遣すると宣言した」
「騎士団を?」
初耳だ。そもそもあいつが攫われたってことも初耳だが。
アルフを見るとアルフも聞いてないと首を振る。
俺と違って見習いでないアルフも聞いてないってことは実際に向かう少数にしか知らされてないってことなんじゃないか?なんでジジイが知ってんだ。
「マリナ殿の姿が見えないことは一部貴族の間で問題になっていてな、同時に国境で騎士団が厳重に馬車を検める動きをしていたというので不審に思っていた。
今日は王子に仔細を聞こうという集まりだったのだ」
騎士団に所属する俺たちですら知らない情報を集める貴族たちの情報網に警戒が走る。
あいつの姿が見えなくなってたことすら俺は知らなかった。
下っ端だから知らなかったは言い訳にならない。
何より俺は近衛騎士のピリピリした雰囲気を感じていたはずだ。
自分の足らなさに嫌気がさす。
「その場で王子は私たちに宣言をされた。
一両日中に噂が広まると思ったのでな。
先にシャルロッテには話しておこうと思ったのだ」
なるほどな。噂でいきなり知らされたらシャルロッテは激しく動揺するだろう。
それを防ぐために今日会いに来たのか。
相変わらずシャルロッテには甘い爺様だ。
その配慮に安堵が湧くのは自分もシャルロッテの泣き顔なんて見たくないからだろう。
普段の強気な顔が不安に曇るところを見たら落ち着かない気分になる。
シャルロッテの顔には驚きと不安があったが、ジジイが大丈夫だと言ったからかまだ落ち着いていた。
王子から直接話を聞いたジジイの話だからというのもあるだろうな。
「そんなわけだから、噂を聞いても落ち着いていなさい。
王子が言った以上必ずマリナ殿は戻ってくるだろうからな」
「はい……」
まだ不安そうだったが納得したのかシャルロッテは笑みを作って返事をした。
「そうだわ、フローラにも話しておかないと」
心配しちゃう、とシャルロッテが腰を浮かす。
「フロレンティーナ嬢もマリナ殿と面識があったのか?」
意外そうな顔をしたジジイが俺を見る。
俺も知らねえよそんなの。
「何度か一緒にお茶をしたことがあるわ。
時間が空いたら一緒に王都で買い物しましょうって約束してたの」
初耳だ。あの見るからに気弱な伯爵令嬢がシャルロッテとあの女に挟まれて楽しめるのか?
「フローラは魔法を習ったこともあるからマリナとも話が弾んでるわよ?」
俺とジジイの視線を受けてシャルロッテが答える。
「へえ……」
意外過ぎる。委縮して話も出来なさそうなのにな。
ジジイはシャルロッテの言葉を聞いて何か考えている。
悪い顔してんなあ。
シャルロッテがあの女の名前を呼び捨てにしたとき目がぎらついたのを俺は見逃さなかった。
ほんと親父と似てんな。
野心家で力を求めることに貪欲だ。
シャルロッテには甘いところもあるが家のためになると考えればその交友関係を利用することも選択肢に入れる。
貴族としては普通のあり方なんだろうけどな。
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