双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 波乱の婚約式編

監視役 1

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 国境を越えどこかの街に着く。
 いくつか街を通り過ぎていたけどここはどの街だろう。
 フレスの地図は一応頭に浮かぶ。
 でもどこから入ったのかわからないからあまり役には立ってない。
 街に入り速度を緩めた馬車が石畳の上を走る。
 ガラガラと音が頭に響く。
「疲れたか?」
 まだ薬が残っているのかと思っているとカイゼが顔色を見て聞いてくる。
「少し」
 大丈夫と言葉を迷ったけれど強がって無理をすることに意味がなさそうなので正直に答えた。
 世話役とユリノアスが紹介したのでマリナの体調管理もカイゼの仕事だろうし。
 馬車が止まり、扉を開けようとすると外から勝手に開かれた。
「ずっと馬車に乗っていたから疲れただろう」
 にこやかな笑みを浮かべたユリノアスが扉の前に立っている。
 手を貸すと言われる前にマリナはさっさと降りた。
 伸ばそうとした手が行き場を失って一瞬彷徨ったがすぐに取り繕い話しかけてくる。
「食事がてら街を散策しよう。
 何か食べたいものはあるか?」
 特にはないと答える。食欲もあまりなかった。
 マリナが返事をしたことにうれしそうに笑うユリノアスに無視してやればよかったと思う。
 反発心だけで行動するのは利にならないとわかっているけれど。
「そうか、なら私の好みで決めてしまうが構わないか?」
 うきうきと店を選ぶユリノアスから視線を外し街並みを見つめる。
 交通の要衝なのか人も多く、行き交う馬車も多様な形をしていた。
 頭の中の地図にいくつか印を付ける。
「考え事はほどほどにした方がいいな」
 すぐ後ろから囁かれた声に視線を向けるとカイゼが笑みを浮かべながらマリナの挙動を観察していた。
「ほら、殿下が大分先にいる。
 はぐれないように気をつけろよ」
 わかりやすい忠告にわざとらしく溜め息を吐く。
「物珍しいので見とれていただけです」
 答えて足を進める。
 我ながら適当な言い訳だ。
 カイゼも信用していないだろうと思ったが、理解を示すように頷いた。
「まあ、あんまり王宮から出ない生活だったんだろうしな。
 仕事を増やさないでくれよ。
 はしゃいで迷子になるタイプじゃないみたいだけど」
「この状況ではしゃげる人間がいたらお目にかかりたいものですが」
 タイプ以前に誘拐犯に囲まれている状態でそんな気分になれるわけがない。
「ははっ、それもそうか」
 マリナの反論におかしそうに笑うカイゼを横目で睨む。
 良く笑えるなと冷眼を向けてもカイゼは笑いを止めない。
 言っても無駄なのはわかっている。
 マリナが何か言ったくらいで響く心を持っていたらそもそもこんな仕事してないだろう。
 ユリノアスがマリナを呼ぶ声が聞こえた。
 どうやら店が決まったらしい。
 カイゼを無視して店に向かって歩き出す。
 どうせ逃がさないようにマリナの後ろをついてくるのはわかっていた。
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