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セレスタ 波乱の婚約式編
マリナの不在 2
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マリナの不在は伏せられているが全員にというわけではない。
父である国王陛下、内務卿、外務卿には当然報告しているし、魔術師長とその部下、私の近衛騎士たちは当然知っている。
それ以外でも父や内務卿、外務卿が話すべきと思った人間には話しているだろう。
ようやくと言ってはいけないが、マリエール様が帰り、大きく人を動かせるようになった。
手掛かりひとつ掴めていない今の状況に焦りを感じていたのは私も同じこと。
マリナが消えてすでに5日。
そろそろマリナが側にいないことを訝しむ者が増えてくるだろう。
すでに気がついている者は気がついている。
使者が帰るまでおとなしくしているだけのこと。
騒ぎ出すのは時間の問題だった。
予想通りというべきか……。
マリエール様が帰った途端に意気揚々とマリナを批判しに来た貴族の姿に内心怒りを覚える。
「王子! 双翼のマリナ殿はどこへ行ったのですか?
フレスの王族を見送るときにさえ姿を見せないというのはいかがなものでしょうか」
「……」
黙って話を聞いていると自分の台詞に興奮したのか声が大きくなっていく。
「王子の婚約式という国家の祝賀に姿を見せないなどありえません!」
「マリナはちゃんと婚約式に出席していただろう」
双翼としてヴォルフと共に常に私の側にいたのだが、言いたいのはそういうことではないのだろう。
「式典にだけ出ればいいというものではありません!
使者を迎え、セレスタの滞在を心地よくすごしていただくのも側近としての務めでしょう。
フレスの王族から信頼を得ているというのに見送りもしないとは! フレスとの関係が悪化したらマリナ殿の責任もあります!」
そもそも双翼は主となった王族の護衛が仕事であって、他国の使者のご機嫌取りは仕事内容に含まれていない。
まあ、状況的にしなければならない時というのはあるが。
馬鹿馬鹿しいのでその部分には触れずに流し、大切な部分のみ反論する。
「フレスが我が国に牙を剥くことはないよ」
彼の国がどれだけセレスタを重く見ていると思っているのか。
もちろんセレスタ側でもフレスとの絆を大切にし、お互いに心を配っている。
マリエール様もマリナが全く姿を見せないことに違和感はあったようだが、何も言わずに帰って行った。
余計なことに首を突っ込む危険を彼女は理解している。
「マリエール様は聡明な方だ。 私たちの立場も自分の立場もよくわかっている。
私の護衛がマリエール様を訪う必要がないことも理解しているし、そのことで悪感情を抱くこともない」
暗に文句をつけてきた貴族よりもマリエール様の方が双翼を理解していると告げる。
男は言葉に詰まり悔しそうに唇を噛んだ。
退出を促そうとすると、外からディルクが入ってくる。
「王子、少しよろしいですか」
貴族に頭を下げ、私の側まで来て、急を告げた。
落ち着いた態度だが瞳には焦燥が宿っている。
緊急の用事がない限りは謁見中に割り込んでくることはない。
相応のことがあったと察し、貴族を部屋から追い出す。
まだ何か言いたそうにしていたが、ディルクと私を見てこれ以上時間を引き延ばしても益はないと思い直し退出していった。
ディルクに部屋で聞くと言い謁見室を出る。
逸る心を抑えながら自室に戻り報告を聞く。
ディルクが持ってきた報告は驚くものだった。
「マリナから手紙が届いた?」
手紙を持って来たのはマリナの友人と名乗る令嬢。
事態が動き出したことを感じ、急いでその令嬢を連れてくるよう命じる。
隣で話を聞いていたヴォルフも瞳に期待を乗せていた。
父である国王陛下、内務卿、外務卿には当然報告しているし、魔術師長とその部下、私の近衛騎士たちは当然知っている。
それ以外でも父や内務卿、外務卿が話すべきと思った人間には話しているだろう。
ようやくと言ってはいけないが、マリエール様が帰り、大きく人を動かせるようになった。
手掛かりひとつ掴めていない今の状況に焦りを感じていたのは私も同じこと。
マリナが消えてすでに5日。
そろそろマリナが側にいないことを訝しむ者が増えてくるだろう。
すでに気がついている者は気がついている。
使者が帰るまでおとなしくしているだけのこと。
騒ぎ出すのは時間の問題だった。
予想通りというべきか……。
マリエール様が帰った途端に意気揚々とマリナを批判しに来た貴族の姿に内心怒りを覚える。
「王子! 双翼のマリナ殿はどこへ行ったのですか?
フレスの王族を見送るときにさえ姿を見せないというのはいかがなものでしょうか」
「……」
黙って話を聞いていると自分の台詞に興奮したのか声が大きくなっていく。
「王子の婚約式という国家の祝賀に姿を見せないなどありえません!」
「マリナはちゃんと婚約式に出席していただろう」
双翼としてヴォルフと共に常に私の側にいたのだが、言いたいのはそういうことではないのだろう。
「式典にだけ出ればいいというものではありません!
使者を迎え、セレスタの滞在を心地よくすごしていただくのも側近としての務めでしょう。
フレスの王族から信頼を得ているというのに見送りもしないとは! フレスとの関係が悪化したらマリナ殿の責任もあります!」
そもそも双翼は主となった王族の護衛が仕事であって、他国の使者のご機嫌取りは仕事内容に含まれていない。
まあ、状況的にしなければならない時というのはあるが。
馬鹿馬鹿しいのでその部分には触れずに流し、大切な部分のみ反論する。
「フレスが我が国に牙を剥くことはないよ」
彼の国がどれだけセレスタを重く見ていると思っているのか。
もちろんセレスタ側でもフレスとの絆を大切にし、お互いに心を配っている。
マリエール様もマリナが全く姿を見せないことに違和感はあったようだが、何も言わずに帰って行った。
余計なことに首を突っ込む危険を彼女は理解している。
「マリエール様は聡明な方だ。 私たちの立場も自分の立場もよくわかっている。
私の護衛がマリエール様を訪う必要がないことも理解しているし、そのことで悪感情を抱くこともない」
暗に文句をつけてきた貴族よりもマリエール様の方が双翼を理解していると告げる。
男は言葉に詰まり悔しそうに唇を噛んだ。
退出を促そうとすると、外からディルクが入ってくる。
「王子、少しよろしいですか」
貴族に頭を下げ、私の側まで来て、急を告げた。
落ち着いた態度だが瞳には焦燥が宿っている。
緊急の用事がない限りは謁見中に割り込んでくることはない。
相応のことがあったと察し、貴族を部屋から追い出す。
まだ何か言いたそうにしていたが、ディルクと私を見てこれ以上時間を引き延ばしても益はないと思い直し退出していった。
ディルクに部屋で聞くと言い謁見室を出る。
逸る心を抑えながら自室に戻り報告を聞く。
ディルクが持ってきた報告は驚くものだった。
「マリナから手紙が届いた?」
手紙を持って来たのはマリナの友人と名乗る令嬢。
事態が動き出したことを感じ、急いでその令嬢を連れてくるよう命じる。
隣で話を聞いていたヴォルフも瞳に期待を乗せていた。
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