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セレスタ 波乱の婚約式編
マリナの不在 1
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魔術師長ジグムントは客人の部屋に謝罪に訪れていた。
「まあ、マリナさんは時間が取れないんですの?
私、彼女とお話しできるのをとても楽しみにしていましたのに」
「マリナも貴女との時間を楽しみにしていたようですね……。
こちらの都合で申し訳なく思っております」
フレスの王妹殿下マリエール様へマリナに用事ができたので時間が取れない旨を伝えた。
視線を下げて残念だと伝えるマリエール様に申し訳ないと重ねて謝罪をする。
マリエール様の滞在中はマリナが対応することが多かったのでとても残念そうだ。
他の魔術師でも不都合はないのだが、マリエール様がマリナを気に入っていることもあり彼女に応対をお願いしていた。
マリナもマリエール様と話をするのを楽しんでおり、快く引き受けてくれていたのだが……。
行方不明になるなんて誰も想像もしなかった。
婚約式が始まる前の数日はマリナが案内役をしていたので不在を疑うことはないと思うが油断はできない。
顔を上げて探るような視線を向けてくる彼女に気を引き締めた。
「何か問題でもあったのですか?」
「いいえ、ただマリナでなければ対応できないことなのです。
今はまだ明かせませんがいずれセレスタの根幹を担うことになる技術なのでおいそれと他の魔術師には任せられず……、申し訳ありません」
新しい技術と言ったところでマリエール様の目が色を変える。
「まあ……。 王宮魔術師ではなくマリナさんが中心になっているのですか?」
「ええ。 マリナが考案した魔道具ですので、彼女が中心となって開発を進めています」
頭の中でマリナが作った通信機を浮かべながら答える。
本人がいないので全くの空論だが、マリナが許可を出し多数の実用に向けて動けばセレスタが変わる技術だ。
真実味を感じたのかマリエール様は真剣な瞳で頷く。
「それでは仕方がないですわね。 新しい技術はいつも難しいものですもの」
引いてくれたことに安堵した。
追及を厳しくされても困るだけだったので引き際が良かったことに感謝する。
申し訳なさはあるが、いくら友好国とはいえ話せるわけがない。
何食わぬ顔で辞去し、ジグムントはマリナの捜索に戻った。
部屋に戻るとメルヒオールとフィルが難しい顔で報告にやってきた。
「その顔だとあまりいい結果は得られていないようですね」
「申し訳ありません。 マリナが持っていた魔道具の痕跡もまだ掴めていません」
「魔道具を使った形跡もないから王宮を出たときには意識がなかったんだと思うけど……。
本当なんでアイツ発信機持ってなかったんだ」
悪態を吐くがメルヒオールなりに心配しているのがわかる。
「マリナも自分が標的になることは予想してなかったでしょうからね」
メルヒオールが小さく舌打ちをする。珍しく感情的になっているのはそれだけメルヒオールにとってマリナが心を許してる相手だということ。
喜ばしいことだが、こんなことで判明したのでなければ良かった。
マリナがいなくなって2日。
手掛かりが得られないことに焦りを見せ始めていた。
「まあ、マリナさんは時間が取れないんですの?
私、彼女とお話しできるのをとても楽しみにしていましたのに」
「マリナも貴女との時間を楽しみにしていたようですね……。
こちらの都合で申し訳なく思っております」
フレスの王妹殿下マリエール様へマリナに用事ができたので時間が取れない旨を伝えた。
視線を下げて残念だと伝えるマリエール様に申し訳ないと重ねて謝罪をする。
マリエール様の滞在中はマリナが対応することが多かったのでとても残念そうだ。
他の魔術師でも不都合はないのだが、マリエール様がマリナを気に入っていることもあり彼女に応対をお願いしていた。
マリナもマリエール様と話をするのを楽しんでおり、快く引き受けてくれていたのだが……。
行方不明になるなんて誰も想像もしなかった。
婚約式が始まる前の数日はマリナが案内役をしていたので不在を疑うことはないと思うが油断はできない。
顔を上げて探るような視線を向けてくる彼女に気を引き締めた。
「何か問題でもあったのですか?」
「いいえ、ただマリナでなければ対応できないことなのです。
今はまだ明かせませんがいずれセレスタの根幹を担うことになる技術なのでおいそれと他の魔術師には任せられず……、申し訳ありません」
新しい技術と言ったところでマリエール様の目が色を変える。
「まあ……。 王宮魔術師ではなくマリナさんが中心になっているのですか?」
「ええ。 マリナが考案した魔道具ですので、彼女が中心となって開発を進めています」
頭の中でマリナが作った通信機を浮かべながら答える。
本人がいないので全くの空論だが、マリナが許可を出し多数の実用に向けて動けばセレスタが変わる技術だ。
真実味を感じたのかマリエール様は真剣な瞳で頷く。
「それでは仕方がないですわね。 新しい技術はいつも難しいものですもの」
引いてくれたことに安堵した。
追及を厳しくされても困るだけだったので引き際が良かったことに感謝する。
申し訳なさはあるが、いくら友好国とはいえ話せるわけがない。
何食わぬ顔で辞去し、ジグムントはマリナの捜索に戻った。
部屋に戻るとメルヒオールとフィルが難しい顔で報告にやってきた。
「その顔だとあまりいい結果は得られていないようですね」
「申し訳ありません。 マリナが持っていた魔道具の痕跡もまだ掴めていません」
「魔道具を使った形跡もないから王宮を出たときには意識がなかったんだと思うけど……。
本当なんでアイツ発信機持ってなかったんだ」
悪態を吐くがメルヒオールなりに心配しているのがわかる。
「マリナも自分が標的になることは予想してなかったでしょうからね」
メルヒオールが小さく舌打ちをする。珍しく感情的になっているのはそれだけメルヒオールにとってマリナが心を許してる相手だということ。
喜ばしいことだが、こんなことで判明したのでなければ良かった。
マリナがいなくなって2日。
手掛かりが得られないことに焦りを見せ始めていた。
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