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セレスタ 波乱の婚約式編
当然の疑問 2
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腹に当たった刃物に身を固くする。
向かいの男性が止めようと身を乗り出し、馬車の中に緊張感が走った。
一瞬で刃を突き付けるその速さに仲間の男性もかける言葉を探す。
緊迫した空気を払ったのもカイゼの声だった。
「ごめんね? ちょっと静かにしてもらわなきゃならないからさ」
さっきまでの会話で気分を害したのではないようだけど、どうして刃物を出したのか疑問が浮かぶ。
軽い口調で謝るカイゼは楽しそうな顔でマリナの反応を見ている。
不用意なことをしたら本当に刺されそうだ。
考えているうちにカイゼが動いた理由がわかった。
馬車の速度が緩くなり、窓から建物が増えてきたのが見える。
一瞬見えた旗の色に思わず腰を浮かしそうになった。
カイゼの目がマリナを射抜く。
騒ぐな――。
無言の命令に視線で了承を返す。
溜め息を吐き、身体から力を抜いて視線を窓に戻した。
目に映るのは黄と黄緑の二色で描かれたセレスタの国旗と水色に白い星が描かれたフレスの国旗。
ここはセレスタとフレスの国境だった。
馬車を別に用意させていた時から予想はしていたけれど、フレスを通ってマールアに向かうつもりのようだ。
遠回りになるけれど、セレスタが追っ手を向けることを考えてフレス経由を選んだのか。
馬車はゆっくりと歩くような速度で国境に向かう。
国境警備の騎士が目に入り、カイゼが刃を意識させるようにわずかに力を込めた。
「……」
セレスタ国外に出てしまうという焦りもある。
けれど、ここで声を上げたところでカイゼに押さえられてしまうだろう。
向かいの男性もカイゼの行動の意味を知ってマリナが動かないよう警戒を強めている。
ここで逃げることはできない。
そう悟って黙って窓の外を見つめた。
セレスタの国旗はごくシンプルな色をしている。
黄色は黄金に光る大地を、黄緑の光は魔法の輝きを表す。
焼きつくような感情は怒りか、悲しみか。
フレスに入り、セレスタの国旗が見えなくなっても、マリナは窓から視線を外せなかった。
「いい加減刃物を離してくれませんか?」
国境を越え、フレスに入ってもカイゼから警戒は取れなかった。
マールアに入るまで油断はしないという気持ちの表れなのかもしれないけれど、正直揺れで刺さったらどうするのかと不安でしょうがない。
そんな不注意はしないかもしれないけれど、刃物を突き付けられたまま寛げるほど図太い神経はしていない。
「ああ、悪い。 つい忘れてた」
そう言って刃物を離す。
ようやく差し迫った緊張から解放された。
刺さないとは思っていても刃物を突きつけられて緊張しない人間はいない。
「警戒しすぎじゃありませんか?」
騒がれたら困るとはいえ、魔法も使えない相手に対する警戒とは思えないんだけど。
マリナの文句にカイゼが反論する。
「いやいや、あの程度の警戒はして当然だ。
もしかしたらあんたを見知っている騎士がいる可能性だってゼロじゃないしな」
もっと油断してくれていいのだけれど、流石にセレスタに潜入していた間諜だけあって警戒心も判断力も高い。
嫌な相手だと思ったマリナの内心を知ってかカイゼは楽しそうに笑っていた。
向かいの男性が止めようと身を乗り出し、馬車の中に緊張感が走った。
一瞬で刃を突き付けるその速さに仲間の男性もかける言葉を探す。
緊迫した空気を払ったのもカイゼの声だった。
「ごめんね? ちょっと静かにしてもらわなきゃならないからさ」
さっきまでの会話で気分を害したのではないようだけど、どうして刃物を出したのか疑問が浮かぶ。
軽い口調で謝るカイゼは楽しそうな顔でマリナの反応を見ている。
不用意なことをしたら本当に刺されそうだ。
考えているうちにカイゼが動いた理由がわかった。
馬車の速度が緩くなり、窓から建物が増えてきたのが見える。
一瞬見えた旗の色に思わず腰を浮かしそうになった。
カイゼの目がマリナを射抜く。
騒ぐな――。
無言の命令に視線で了承を返す。
溜め息を吐き、身体から力を抜いて視線を窓に戻した。
目に映るのは黄と黄緑の二色で描かれたセレスタの国旗と水色に白い星が描かれたフレスの国旗。
ここはセレスタとフレスの国境だった。
馬車を別に用意させていた時から予想はしていたけれど、フレスを通ってマールアに向かうつもりのようだ。
遠回りになるけれど、セレスタが追っ手を向けることを考えてフレス経由を選んだのか。
馬車はゆっくりと歩くような速度で国境に向かう。
国境警備の騎士が目に入り、カイゼが刃を意識させるようにわずかに力を込めた。
「……」
セレスタ国外に出てしまうという焦りもある。
けれど、ここで声を上げたところでカイゼに押さえられてしまうだろう。
向かいの男性もカイゼの行動の意味を知ってマリナが動かないよう警戒を強めている。
ここで逃げることはできない。
そう悟って黙って窓の外を見つめた。
セレスタの国旗はごくシンプルな色をしている。
黄色は黄金に光る大地を、黄緑の光は魔法の輝きを表す。
焼きつくような感情は怒りか、悲しみか。
フレスに入り、セレスタの国旗が見えなくなっても、マリナは窓から視線を外せなかった。
「いい加減刃物を離してくれませんか?」
国境を越え、フレスに入ってもカイゼから警戒は取れなかった。
マールアに入るまで油断はしないという気持ちの表れなのかもしれないけれど、正直揺れで刺さったらどうするのかと不安でしょうがない。
そんな不注意はしないかもしれないけれど、刃物を突き付けられたまま寛げるほど図太い神経はしていない。
「ああ、悪い。 つい忘れてた」
そう言って刃物を離す。
ようやく差し迫った緊張から解放された。
刺さないとは思っていても刃物を突きつけられて緊張しない人間はいない。
「警戒しすぎじゃありませんか?」
騒がれたら困るとはいえ、魔法も使えない相手に対する警戒とは思えないんだけど。
マリナの文句にカイゼが反論する。
「いやいや、あの程度の警戒はして当然だ。
もしかしたらあんたを見知っている騎士がいる可能性だってゼロじゃないしな」
もっと油断してくれていいのだけれど、流石にセレスタに潜入していた間諜だけあって警戒心も判断力も高い。
嫌な相手だと思ったマリナの内心を知ってかカイゼは楽しそうに笑っていた。
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