双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

文字の大きさ
上 下
232 / 368
セレスタ 波乱の婚約式編

マリナの行方 2

しおりを挟む
 近くにいた騎士の一人を使いに出してからメルヒオールが魔道具に魔力を流す。
 王宮で広範囲に影響のある魔術を使うには事前に連絡をしておかないと魔力を感知した騎士や魔術師たちが駆けつけてくることになる。
 セレスタの王宮にはいくつもの魔力を感知する魔道具や重要な場所を守るための結界が仕掛けられているので、不用意に魔術を使うと大騒ぎになってしまう。
 まして王子の婚約式に招待された他国の要人が何人もいる中での騒ぎはシャレにならない。
 要人を狙った襲撃かと疑われかねない行動なので、さすがにメルヒオールも報告しに行った騎士が戻ってくるまで魔道具を使おうとはしなかった。
 影響を与えない範囲で構造を調べてはいたが。
「……」
 人目につかないように室内に移動したところでメルヒオールが魔道具を握る。
 透明の石の部分が淡く光り出す。
 メルヒオールが流す魔力に呼応して明滅する光を見守る。
 しかし、いくら待っても望む反応はなかった。
「ダメだね。 反応しない」
 淡々とした声で呟いたメルヒオールが魔力を流すのを止める。
「アイツ他にもなにか言ってなかった?
 どのくらいまでが効果範囲だとか」
 魔道具をもらった時のことを思い出しながらメルヒオールの問いに答える。
「王宮から王都の端までなら人によっては届くと言っていた」
 ヴォルフの言葉にメルヒオールは顎に手を当てて思案を始めた。
「……アイツならどこまでだと言っていた?」
 ややあって顔を上げたメルヒオールが再度ヴォルフに問いかける。
「王都内なら問題ないが隣町までは無理だと言っていたな」
 聞かれたままに答えるとメルヒオールが険しい顔で口を開く。
「フィルの奴を呼んできてくれる? いなければ師長でもいい」
 険しい顔のまま部屋にいた近衛騎士の一人に告げる。
 言われた騎士は戸惑った様子でヴォルフやギュンターを窺う。
「言う通りに頼む。 あとジーク……、は忙しいな。 ディルクかハルトを連れてきてくれ」
 ギュンターが指示を出すと近衛騎士は急いで出て行った。
 たった数刻マリナの姿が見えない。
 それだけのことなのに、この場にいる誰もが不穏な空気を感じていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【書籍化・3/7取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない

gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...