双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 波乱の婚約式編

見知らぬ場所

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 閉じた扉を見て、ベッドの上で拳を握りしめた。
 シーツが皺になるくらい強く握り、憤りを胸の中で吐き出す。
(ふ ざ け る な!!)
 拳をベッドに押しつけて怒りを押し殺す。そうしていないと心の内から叫びが漏れそうだった。
 惹かれた?残して帰ることが考えられなかった?そのどれもが実に許しがたい内容だ。
 勝手に拉致しておいて何がすまないと思っているだ!馬鹿にするにもほどがある。
 いらだちをどうにか押さえつけて息を吐く。
 荒れた呼吸を殊更にゆっくりと行うことで心を落ち着かせる。
 ここで叫んでもどうにもならない。
 騒いだらさっきの護衛役だか監視役だかが入ってきて黙らされるだろう。
 嫌になるほど現状を理解できていた。
 握り締めていたシーツから手を離す。
 無理矢理に落ち着かせた思考で状況を把握しようと窓のから外を見る。
「どこ、ここ……」
 呟く言葉に溜め息が混じる。
 言われたとおり王都でないのはわかった。
 建ち並ぶ建物にも違和感がないのでセレスタ国内だと言うのも信用できそうだ。
 流石に国外に出るまで意識不明だったとは思えない。
 薬が効きすぎたと言っていたが、マールアにたどり着くまで昏睡していたら命の危機だろう。
 最後の記憶からして眠っていたのは一日か、長くて二日くらいか。
 どこまで連れて来られたのか、そこまで考えてはっと胸元に手を伸ばす。
 首に掛けていた魔道具を取り出し、取られていないのを確かめる。
 ヴォルフに送った物と対になる通信機が手元にあることに安堵した。
(よかった……)
 ここからでは届かないのはわかっているけれど、可能性は繋がっている。
 見つからないように魔道具を服の下に戻し、ベッドに戻った。
 着たままだったローブを脱ぎ、持っている物を確認する。
 ローブのポケットくらいは検めたようだがその下の服などは検めなかったようでいくつかの魔道具は手付かずで残っていた。
 多分ユリノアスの従者も男性揃いだったせいだろう。
 反対の立場で考えたら所持品を検めないなんてありえないが、今はその幸運に感謝する。
 とはいえローブに入っていた魔道具を取られたのは痛い。
 身を守る魔道具もその中にあったのに、これでは本当に逃げられなくなりそうだ。
(どういう行程でマールアに帰るつもりなのか……)
 それがわかれば現在地にも予想がつくのに。
 出した物をしまってベッドに寝転ぶ。
 まだ身体がだるい。
 魔法が使えない以上、この不調は治るのを待つしかないわけだ。
 医術の心得がある者がいると言っていたが、手を借りる気はしない。
 どうせすぐに逃げられないのなら今具合が悪かったところで大した問題でもないのだし。
 枕に額を押し付けて目を閉じると、めまいのような症状が襲ってくる。
 気持ち悪さを堪えていると、いつの間にか眠りに落ちていた。
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