双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 波乱の婚約式編

誕生日の贈り物 1

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 書き止めた構想の全体図を見ながら思案する。
 メルヒオールと話しながらふざけて作ったメモは大半がそのままは使えないものだった。
 まあ、楽しかったのでそれはいいけど。
 初めからそのまま使える案が出てくるとは思っていない。
 ただおもしろいアイディアも聞けたので十分な収穫はあった。
 マリナの目下の悩みはそれではなく、間近に迫った誕生日のことだった。
「誕生日って何をしたらいいのかしら?」
 ヴォルフは一緒に過ごせればいいと言っていたけれど、どうせなら喜ばせたいと思うのは当たり前の心情だ。
 けれどヴォルフが喜ぶ物に全く心当たりがない。
 思い出そうとこめかみをぐりぐり押さえながら最近ヴォルフが喜んでいたことを浮かべる。
 ぱっと思い浮かんできたのは黒犬姿のヴォルフが料理を頬張っているところだった。
(違う、これじゃない)
 あれはあまりに粗食が続いていたからだし、今は解消されているので飢えているわけがない。
 マリナが作った物をおいしいと言って食べてくれるのは嬉しいけれど、それじゃいつもと同じになってしまう。
 頑張って思い出そうとするけれど、さっきの雑念のせいか全く浮かんでこない。
 ヴォルフは元々物欲が殆どない。
 侯爵家の部屋に入れてもらったときあまりに物が無くて驚いたくらいだ。
 マリナも同じようなものだが魔術に関する物は手に入れている。
 ヴォルフの場合、武具に思い入れはあっても蒐集癖はない。
(いっそ何か魔道具でも贈ろうかしら)
 良い考えな気がする。
 仕事にも役立つ物なら尚良い。
 時間が無いので前に書き止めていたアイディアから形になりそうな物を探す。
 その中から目に留まったのは、日本に行っていたときに浮かんだアイディアの一つだった。
 日本で使っていた物は全て置いて来てしまったのでセレスタに戻った後に改めて記憶から書き起こした物だけれど、これが一番良いと思う。
 双翼としても役に立つし、二人で何処かに出かけた時にも使える。
 何よりマリナとしても作ってみたい。
 日本で思い浮かんだ時に上がった問題点を書き出していく。
 問題点を全てクリアするのは無理だ。
 ただ、目的を果たすためには他の方法でも代用ができる。
 ヴォルフの誕生日までに形にするべく張り切った。
 その結果ちょっと寝不足気味になったのは、予想通り。
 怒ったヴォルフに寝るまで付き添われたのは誤算だった。
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