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セレスタ 波乱の婚約式編
猫 3
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階下に降りると同じセレスタの王都潜入組のサレアと本国との連絡役のアザムがこちらを向いた。
机の上はサレアが手に入れてきただろう品で埋め尽くされている。
情報ついでに金品も手に入れてくる手腕は流石だ。
半分以上は私情と趣味だろうが、文句を言うつもりは毛頭ない。
振ってくる仕事の割に給料が少ないというのは間諜仲間の一致した意見だ。
こうして自分の能力で手に入れてくる分は丸々自分の物になるので、上手くやればおいしい仕事だが。
「何騒いでたの?」
サレアが問いかけてくる。
「猫が入り込んでいた。 抱き上げたら怒られたよ」
引っ掻かれた傷を指しながら答えた。
容赦なく引っ掻いてくれたのでしばらくは顔を洗う時に染みるかもしれない。
「馬鹿ねぇ、猫は勝手に触ったら怒るのが当たり前でしょう」
「そこはテクニック次第だろ、中には触ってくれって寄ってくる猫もいるんだ」
最初は嫌がっていても人に馴らしていけばゴロゴロ鳴いて喜ぶものだ。
「じゃあテクニックが悪かったのね」
嘲笑うようにサレアが口の端を上げる。
「精進するよ」
肩を竦めて話を変える。アザムは俺とサレアの軽口を苦々しそうに見ていた。
ふとさっきの猫の瞳を思い出す。
強い光を宿した緑の瞳。
全力で拒んだ視線の強さに笑みが零れた。
(ああいうのを手懐けるのはおもしろいんだけどな……)
嫌がっていた奴が警戒しながらも俺の手を受け入れる瞬間は実に気分が良い。
まあ野良ならもう会うこともないだろう。
小さかったし庇護者のいない世界で生きていけるとは思わない。
万が一出会うことがあったら今度は紳士的に声を掛けてみるか、と馬鹿なことを考えた。
窓から飛び出したマリナはそのまま壁を蹴り、屋根まで上がってきた。
猫の身体能力はすごく、軽々と屋根から屋根へ飛び移る。
完全に離れたところで身体から力が抜けた。
(危なかった……)
猫の姿で良かったと心から思う。
マリナを捕まえた男は力の使い方が上手く、この姿でなかったらきっと逃げられなかった。
捕まえられるまで存在に気付かなかったことといい、マリナには荷が重い相手だ。
あの男のことも報告に上げる必要がある。
王宮の騎士見習いに近づいている女性と男性二人。
間諜がそれだけとも限らない。
後は情報収集を専門とする人間や逮捕する騎士に任せることにした。
疑われることなく逃げられてほっとする。
拠点を放棄されたらせっかく見つけた意味がない。
まさかこんなことになるとは思いもしなかった。
シャルロッテの従兄弟の異変からマールアの間諜に行きつくとは。
どう繋がるかわからないものだ。
(シャルロッテはちゃんと帰ったかな)
馬車に乗るまでは見送れなかったので少し心配だ。
王都の真ん中で危険もないだろうけれど、後で家に帰ったかだけ問い合わせることにする。
王宮まで帰るべく屋根から降りた。
変化を解いて王宮に向かって歩き出す。
王宮に戻ったマリナはシャルロッテも無事に帰ったと聞いて安心していた。
途中、トラブルに巻き込まれたことを知るまでは。
机の上はサレアが手に入れてきただろう品で埋め尽くされている。
情報ついでに金品も手に入れてくる手腕は流石だ。
半分以上は私情と趣味だろうが、文句を言うつもりは毛頭ない。
振ってくる仕事の割に給料が少ないというのは間諜仲間の一致した意見だ。
こうして自分の能力で手に入れてくる分は丸々自分の物になるので、上手くやればおいしい仕事だが。
「何騒いでたの?」
サレアが問いかけてくる。
「猫が入り込んでいた。 抱き上げたら怒られたよ」
引っ掻かれた傷を指しながら答えた。
容赦なく引っ掻いてくれたのでしばらくは顔を洗う時に染みるかもしれない。
「馬鹿ねぇ、猫は勝手に触ったら怒るのが当たり前でしょう」
「そこはテクニック次第だろ、中には触ってくれって寄ってくる猫もいるんだ」
最初は嫌がっていても人に馴らしていけばゴロゴロ鳴いて喜ぶものだ。
「じゃあテクニックが悪かったのね」
嘲笑うようにサレアが口の端を上げる。
「精進するよ」
肩を竦めて話を変える。アザムは俺とサレアの軽口を苦々しそうに見ていた。
ふとさっきの猫の瞳を思い出す。
強い光を宿した緑の瞳。
全力で拒んだ視線の強さに笑みが零れた。
(ああいうのを手懐けるのはおもしろいんだけどな……)
嫌がっていた奴が警戒しながらも俺の手を受け入れる瞬間は実に気分が良い。
まあ野良ならもう会うこともないだろう。
小さかったし庇護者のいない世界で生きていけるとは思わない。
万が一出会うことがあったら今度は紳士的に声を掛けてみるか、と馬鹿なことを考えた。
窓から飛び出したマリナはそのまま壁を蹴り、屋根まで上がってきた。
猫の身体能力はすごく、軽々と屋根から屋根へ飛び移る。
完全に離れたところで身体から力が抜けた。
(危なかった……)
猫の姿で良かったと心から思う。
マリナを捕まえた男は力の使い方が上手く、この姿でなかったらきっと逃げられなかった。
捕まえられるまで存在に気付かなかったことといい、マリナには荷が重い相手だ。
あの男のことも報告に上げる必要がある。
王宮の騎士見習いに近づいている女性と男性二人。
間諜がそれだけとも限らない。
後は情報収集を専門とする人間や逮捕する騎士に任せることにした。
疑われることなく逃げられてほっとする。
拠点を放棄されたらせっかく見つけた意味がない。
まさかこんなことになるとは思いもしなかった。
シャルロッテの従兄弟の異変からマールアの間諜に行きつくとは。
どう繋がるかわからないものだ。
(シャルロッテはちゃんと帰ったかな)
馬車に乗るまでは見送れなかったので少し心配だ。
王都の真ん中で危険もないだろうけれど、後で家に帰ったかだけ問い合わせることにする。
王宮まで帰るべく屋根から降りた。
変化を解いて王宮に向かって歩き出す。
王宮に戻ったマリナはシャルロッテも無事に帰ったと聞いて安心していた。
途中、トラブルに巻き込まれたことを知るまでは。
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