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セレスタ 波乱の婚約式編
王都探索 3
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二人は仲良く街を歩きながら時折店に入って買い物をしているようだ。
気になることがひとつ。
「ねえ、あれ彼女が自分で買ってるんじゃないわよね?」
シャルロッテも気になったようで声に厳しいものが混じっている。
食堂の給仕が買うには少々量が多い。
店から出る度に紙袋や箱が増えている。
それを持っているのがシャルロッテの従兄弟だというのもおかしい。
まるで従者のように荷物を持ち女性の後ろを歩く従兄弟の様子にシャルロッテの視線が厳しくなっていく。
「何故従者の真似事をしているのです?!
荷物は人を呼んで運ばせればいいではないですか!」」
抑えてはいるけれど声には不快さと怒りがはっきりと表れていた。
「お爺様が見たらなんとおっしゃるか……! 不甲斐ない!!」
「シャルロッテ? 声を抑えてください」
拳を握って怒りを吐くシャルロッテの声が段々大きくなってきたので注意をする。
シャルロッテが怒るのも当然だとは思うけど。
うーん。どう見ても悪い女性に引っかかったようにしか思えない。
前を行く二人の姿は買い物を楽しむ女性と付き従う使用人に変化していた。
実際の身分を思うと面倒しか浮かばない。
女性は彼が子爵家の人間だと知っているのだろうか。
彼は困った言動を繰り返す人間ではあるけれど、所作が見苦しいということはない。
平民で彼のような所作を身に着けるとしたら貴族を相手にするような商人が多いだろう。
もしかしたらちょっとした商人の息子くらいに思っているのかもしれなかった。
そのくらいなら金づるとして扱っても騙された方が迂闊だったと言われるだけだ。
貴族だと知っているのなら普通は恐れ多くてそんな扱いは出来ない。普通は。
店頭に並べられた帽子を見つめて何かを囁く女性。
手に抱えた荷物を見て渋い顔をする彼の耳元で女性が何事かを囁く。
顔をにやけさせ店に入って行った彼が出てきた時には手には新しい箱が増えていた。
「もう我慢できません、帰ったらお父様とお爺様に事の次第を報告しますわ!」
従兄弟の醜態にシャルロッテが息巻く。
「それは少々早計なのでは?
まずは彼があの品を彼女に買ったという確証がないと」
それに自身の給与で買い与えているなら家族が軽く注意をすればいい。
「どう見てもあの女性がねだって買わせているとしか考えられないでしょう!
大体あの女性物の帽子を持って帰ってどうするのよ!」
他の女性への贈り物を選んでもらっていた…、なんてことがないのはマリナにも想像は付く。
厄介なことになったと思う。
荷物を抱えた男性を従え街を歩く女性は、周りの注目を浴びて得意気な顔をしている。
それだけの品を買わせる魅力があるのだと、羨望の視線を向ける通行人に対して自慢げな笑みを返す。
嫌な笑みだ。
それを見てシャルロッテが顔を怒りに染める。
情けない、と従兄弟への文句を小さな声で呟く。
握りしめた拳が彼女の怒りの強さを表していた。
いっそ彼らの前に姿を現して叱責したいと言い出すのを聞いて止める。
シャルロッテが出て行ったら痴話喧嘩みたいに取られてしまいそうで。
(しかたない……)
シャルロッテを止めるためにマリナも少し協力することにした。
折良く二人が足を休めるためにカフェへ入って行く。
話を聞ける距離に行けば何かわかるかもしれない。
「シャルロッテ、彼らの話を聞くために同じ店に入りますが、彼らが何を話していても騒がないでもらえますか」
「さっきは気づかれるから同じ店には入らないと言っていたじゃないの」
「ええ、今度は魔術を使って気づかれないようにしますので」
本当ならこんなことに魔術を使いたくないのだけど、今回は仕方ない。
彼が騙されて貢がされているなら詳細を知っておく必要がある。
女性や金銭問題で身を持ち崩す人もいる。
騎士を目指す彼がそうなってしまっているなら、彼の家族と上司には事の次第を報告する必要があった。
シャルロッテに静かにしているようにと念押しをして店に入った。
気になることがひとつ。
「ねえ、あれ彼女が自分で買ってるんじゃないわよね?」
シャルロッテも気になったようで声に厳しいものが混じっている。
食堂の給仕が買うには少々量が多い。
店から出る度に紙袋や箱が増えている。
それを持っているのがシャルロッテの従兄弟だというのもおかしい。
まるで従者のように荷物を持ち女性の後ろを歩く従兄弟の様子にシャルロッテの視線が厳しくなっていく。
「何故従者の真似事をしているのです?!
荷物は人を呼んで運ばせればいいではないですか!」」
抑えてはいるけれど声には不快さと怒りがはっきりと表れていた。
「お爺様が見たらなんとおっしゃるか……! 不甲斐ない!!」
「シャルロッテ? 声を抑えてください」
拳を握って怒りを吐くシャルロッテの声が段々大きくなってきたので注意をする。
シャルロッテが怒るのも当然だとは思うけど。
うーん。どう見ても悪い女性に引っかかったようにしか思えない。
前を行く二人の姿は買い物を楽しむ女性と付き従う使用人に変化していた。
実際の身分を思うと面倒しか浮かばない。
女性は彼が子爵家の人間だと知っているのだろうか。
彼は困った言動を繰り返す人間ではあるけれど、所作が見苦しいということはない。
平民で彼のような所作を身に着けるとしたら貴族を相手にするような商人が多いだろう。
もしかしたらちょっとした商人の息子くらいに思っているのかもしれなかった。
そのくらいなら金づるとして扱っても騙された方が迂闊だったと言われるだけだ。
貴族だと知っているのなら普通は恐れ多くてそんな扱いは出来ない。普通は。
店頭に並べられた帽子を見つめて何かを囁く女性。
手に抱えた荷物を見て渋い顔をする彼の耳元で女性が何事かを囁く。
顔をにやけさせ店に入って行った彼が出てきた時には手には新しい箱が増えていた。
「もう我慢できません、帰ったらお父様とお爺様に事の次第を報告しますわ!」
従兄弟の醜態にシャルロッテが息巻く。
「それは少々早計なのでは?
まずは彼があの品を彼女に買ったという確証がないと」
それに自身の給与で買い与えているなら家族が軽く注意をすればいい。
「どう見てもあの女性がねだって買わせているとしか考えられないでしょう!
大体あの女性物の帽子を持って帰ってどうするのよ!」
他の女性への贈り物を選んでもらっていた…、なんてことがないのはマリナにも想像は付く。
厄介なことになったと思う。
荷物を抱えた男性を従え街を歩く女性は、周りの注目を浴びて得意気な顔をしている。
それだけの品を買わせる魅力があるのだと、羨望の視線を向ける通行人に対して自慢げな笑みを返す。
嫌な笑みだ。
それを見てシャルロッテが顔を怒りに染める。
情けない、と従兄弟への文句を小さな声で呟く。
握りしめた拳が彼女の怒りの強さを表していた。
いっそ彼らの前に姿を現して叱責したいと言い出すのを聞いて止める。
シャルロッテが出て行ったら痴話喧嘩みたいに取られてしまいそうで。
(しかたない……)
シャルロッテを止めるためにマリナも少し協力することにした。
折良く二人が足を休めるためにカフェへ入って行く。
話を聞ける距離に行けば何かわかるかもしれない。
「シャルロッテ、彼らの話を聞くために同じ店に入りますが、彼らが何を話していても騒がないでもらえますか」
「さっきは気づかれるから同じ店には入らないと言っていたじゃないの」
「ええ、今度は魔術を使って気づかれないようにしますので」
本当ならこんなことに魔術を使いたくないのだけど、今回は仕方ない。
彼が騙されて貢がされているなら詳細を知っておく必要がある。
女性や金銭問題で身を持ち崩す人もいる。
騎士を目指す彼がそうなってしまっているなら、彼の家族と上司には事の次第を報告する必要があった。
シャルロッテに静かにしているようにと念押しをして店に入った。
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