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セレスタ 弟さんの結婚式編
ミリアム様のプレゼント
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そろそろ家に帰らなくてもいいんだろうか、ミリアム様を見てそんなことを思った。
「お姉様、成人おめでとうございます」
「……ありがとうございます」
なんで知ってるのかとか言いたいことが多少あるけれどそれは呑み込む。
相変わらずお姉様呼びを止める気のないミリアム様は無邪気な笑顔で祝福の言葉をくれる。
「はい、これ。 誕生日プレゼントです」
差し出されたのは一本のボトル。
どう見てもお酒に見える。
ミリアム様が包みを剥がして中身が見えるように差し出す。
この前ヴォルフが飲ませてくれたお酒みたいに綺麗な絵が描かれたラベルをしている。
(お酒って……、あまり贈る物じゃなくない?)
相手がお酒好きなら違和感がないかもしれないが、成人したての…それも女性に贈る物ではないと思う。
くれたのが令嬢というのもとてもおかしく感じる。
シャルロッテたちを見る限り令嬢はあまりお酒の話題を口にするものではなさそうだし、食べ物を贈るならお菓子とかじゃないかな。
不審そうなマリナの表情を見てミリアム様が笑う。
嫌なものを含んだ笑みに警戒が高まる。
「これはとても特殊なお酒なんです。
是非一度だけでも味わっていただきたくて、わざわざ取り寄せたんですよ」
貴重な物であるらしいお酒は見た目には変わったところがない。
高級品っぽいデザインをしたただのお酒に見える。
(……って、特殊?)
特別じゃなくて特殊という言い方に引っ掛かりを覚えた。
「特殊?」
訝しげな目を向けるとミリアム様が一層笑みを深めた。
「信頼できる方と一緒に味を見てみてください」
その文句が余計に不安を煽る。
「これはですねえ、人のお話を聞きやすくなるという変わったお酒なんです」
「……!?」
物騒な贈り物に顔を顰める。
ミリアム様を責めるような目で見るけれどまったく気にした様子がない。
「そこまで危ない物は入っていないのですけれどね?
配合に秘密があって、すこーしだけ思考を麻痺させる効果があるのです」
話を聞くと十分危ない物に聞こえた。
絶対に普通に売っているものじゃない。
取り寄せたって、どんな所からだ。
両手で差し出されるけれど腕を組んで受け取るのを拒否する。
態度で拒否するマリナにミリアム様が囁く。
「知ってると知らないでは大違いですよ?」
じっと瞳を見つめると笑みの奥に真剣な光が感じられた。
表情からは窺えないけれど、どことなく必死な雰囲気がある。
「…これはどのくらいで効果があるものなんですか?」
ミリアム様がマリナに抱く懸念。
味を見るという話から考えるとこれを使ってみてと言っているわけではない。
ということは……。
マリナの問いに嬉しそうに答えるミリアム様。
「グラスに半量くらいでも慣れない方には効果がありますよ」
「そうですか…」
グラスに半量でいいということは小さな小瓶で持ち歩けばこっそり混ぜることも可能ということでしょう。
ここで拒否し続けるほどマリナは恐れ知らずではない。
「ご厚意に感謝します」
ボトルを受け取るとミリアム様は嬉しそうに笑った。
これはミリアム様なりの気遣いだと思うことにした。嬉しくは全くないけれど。
ヴォルフは酒を勧めてくる人間が増えると懸念していたけれど、ミリアム様の話を聞く限りではその中にこういった物を混ぜ込んでくる輩がいるかもしれないということだ。
貴族たちの悪辣さに眩暈がしそうだ。危険を教えてくれたのは助かる。
今度内務卿やアデーレ様たちにも話を聞いてみよう。
「これは禁止されている物ではないのですよね」
配合が、とわざわざ言ったのなら原材料に問題はないはず。
「ええ、大丈夫ですよ」
「よく禁止されませんね」
何でそんな危険物が出回っているのかと思う。
するとミリアム様が平和的な使い方を口にする。
「腹を割って話したいことがあるときや喧嘩した旦那さんに素直に謝りたいときなどに使ったりもできるものですから。
味を知っていれば黙って使ったりしても意味がないですしね」
確かに知っていた場合には黙って混入させた相手とそのまま話を続けようとは思わないだろう。
その場合相手を警戒させるだけなので意味がない。
「どちらで手に入れられたのですか」
「秘密です」
にっこりと微笑んで言うミリアム様に胡乱気な眼差しを向ける。
「違法ではありませんけれどマリナ様は関わらない方がいい所ですわ」
言葉の内容を吟味する。
「近々取締りの対象になりそうだということでしょうか」
与えられた情報から適当にあたりを付けてみる。
残念、というようにミリアム様が笑った。
「無理に効果を強めた物を作らない限りは取り締まり対象にはならないと思います。
いうなればこれはちょっと酔いやすく作られたお酒ですので」
「なるほど…?」
少々納得できないものを抱えながら頷く。
つまり世慣れていない純粋な人間なら、言葉次第で言うことを聞いてもらうことができる、ということか。
溜息を吐いてミリアム様を見る。
本当に予想を超えたことをしてくれる人だ。
危険性は理解できた。
成人間もない人間にこういう物を使う人がいるということ。
そして今後寄ってくる可能性が高い……。
ふっと口元に笑みが浮かぶ。
手段がわかればそれに合わせて対策を練るだけ。
「ご忠告にありがとうございました」
マリナが浮かべた笑みを見てミリアム様も楽しそうに笑った。
「喜んでいただけて良かったですわ」
喜んではいないと言いかけて口を閉じる。
確かに少し楽しくなっている自分がいた。
「そうですね、不本意ですが楽しくなってきました」
悪い笑みを交わす。
こういうイイ性格をしているところは似てると思う。
なんか、ミリアム様はアデーレ様とも気が合いそうな気がした。
「お姉様、成人おめでとうございます」
「……ありがとうございます」
なんで知ってるのかとか言いたいことが多少あるけれどそれは呑み込む。
相変わらずお姉様呼びを止める気のないミリアム様は無邪気な笑顔で祝福の言葉をくれる。
「はい、これ。 誕生日プレゼントです」
差し出されたのは一本のボトル。
どう見てもお酒に見える。
ミリアム様が包みを剥がして中身が見えるように差し出す。
この前ヴォルフが飲ませてくれたお酒みたいに綺麗な絵が描かれたラベルをしている。
(お酒って……、あまり贈る物じゃなくない?)
相手がお酒好きなら違和感がないかもしれないが、成人したての…それも女性に贈る物ではないと思う。
くれたのが令嬢というのもとてもおかしく感じる。
シャルロッテたちを見る限り令嬢はあまりお酒の話題を口にするものではなさそうだし、食べ物を贈るならお菓子とかじゃないかな。
不審そうなマリナの表情を見てミリアム様が笑う。
嫌なものを含んだ笑みに警戒が高まる。
「これはとても特殊なお酒なんです。
是非一度だけでも味わっていただきたくて、わざわざ取り寄せたんですよ」
貴重な物であるらしいお酒は見た目には変わったところがない。
高級品っぽいデザインをしたただのお酒に見える。
(……って、特殊?)
特別じゃなくて特殊という言い方に引っ掛かりを覚えた。
「特殊?」
訝しげな目を向けるとミリアム様が一層笑みを深めた。
「信頼できる方と一緒に味を見てみてください」
その文句が余計に不安を煽る。
「これはですねえ、人のお話を聞きやすくなるという変わったお酒なんです」
「……!?」
物騒な贈り物に顔を顰める。
ミリアム様を責めるような目で見るけれどまったく気にした様子がない。
「そこまで危ない物は入っていないのですけれどね?
配合に秘密があって、すこーしだけ思考を麻痺させる効果があるのです」
話を聞くと十分危ない物に聞こえた。
絶対に普通に売っているものじゃない。
取り寄せたって、どんな所からだ。
両手で差し出されるけれど腕を組んで受け取るのを拒否する。
態度で拒否するマリナにミリアム様が囁く。
「知ってると知らないでは大違いですよ?」
じっと瞳を見つめると笑みの奥に真剣な光が感じられた。
表情からは窺えないけれど、どことなく必死な雰囲気がある。
「…これはどのくらいで効果があるものなんですか?」
ミリアム様がマリナに抱く懸念。
味を見るという話から考えるとこれを使ってみてと言っているわけではない。
ということは……。
マリナの問いに嬉しそうに答えるミリアム様。
「グラスに半量くらいでも慣れない方には効果がありますよ」
「そうですか…」
グラスに半量でいいということは小さな小瓶で持ち歩けばこっそり混ぜることも可能ということでしょう。
ここで拒否し続けるほどマリナは恐れ知らずではない。
「ご厚意に感謝します」
ボトルを受け取るとミリアム様は嬉しそうに笑った。
これはミリアム様なりの気遣いだと思うことにした。嬉しくは全くないけれど。
ヴォルフは酒を勧めてくる人間が増えると懸念していたけれど、ミリアム様の話を聞く限りではその中にこういった物を混ぜ込んでくる輩がいるかもしれないということだ。
貴族たちの悪辣さに眩暈がしそうだ。危険を教えてくれたのは助かる。
今度内務卿やアデーレ様たちにも話を聞いてみよう。
「これは禁止されている物ではないのですよね」
配合が、とわざわざ言ったのなら原材料に問題はないはず。
「ええ、大丈夫ですよ」
「よく禁止されませんね」
何でそんな危険物が出回っているのかと思う。
するとミリアム様が平和的な使い方を口にする。
「腹を割って話したいことがあるときや喧嘩した旦那さんに素直に謝りたいときなどに使ったりもできるものですから。
味を知っていれば黙って使ったりしても意味がないですしね」
確かに知っていた場合には黙って混入させた相手とそのまま話を続けようとは思わないだろう。
その場合相手を警戒させるだけなので意味がない。
「どちらで手に入れられたのですか」
「秘密です」
にっこりと微笑んで言うミリアム様に胡乱気な眼差しを向ける。
「違法ではありませんけれどマリナ様は関わらない方がいい所ですわ」
言葉の内容を吟味する。
「近々取締りの対象になりそうだということでしょうか」
与えられた情報から適当にあたりを付けてみる。
残念、というようにミリアム様が笑った。
「無理に効果を強めた物を作らない限りは取り締まり対象にはならないと思います。
いうなればこれはちょっと酔いやすく作られたお酒ですので」
「なるほど…?」
少々納得できないものを抱えながら頷く。
つまり世慣れていない純粋な人間なら、言葉次第で言うことを聞いてもらうことができる、ということか。
溜息を吐いてミリアム様を見る。
本当に予想を超えたことをしてくれる人だ。
危険性は理解できた。
成人間もない人間にこういう物を使う人がいるということ。
そして今後寄ってくる可能性が高い……。
ふっと口元に笑みが浮かぶ。
手段がわかればそれに合わせて対策を練るだけ。
「ご忠告にありがとうございました」
マリナが浮かべた笑みを見てミリアム様も楽しそうに笑った。
「喜んでいただけて良かったですわ」
喜んではいないと言いかけて口を閉じる。
確かに少し楽しくなっている自分がいた。
「そうですね、不本意ですが楽しくなってきました」
悪い笑みを交わす。
こういうイイ性格をしているところは似てると思う。
なんか、ミリアム様はアデーレ様とも気が合いそうな気がした。
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