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セレスタ 弟さんの結婚式編
初めてのお酒
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マリナの部屋に来たヴォルフは珍しく何かを持って来た。
「何? それ」
「これか? 酒だ」
「お酒?」
ヴォルフが見せたボトルには綺麗なラベルが貼られている。
「これから夜会で勧められことも増えるだろうから、慣れておくに越したことはない」
薄赤い色をしたお酒は飲みやすい初心者向けの物だと言う。
「ふーん」
確かに。護衛として居る場合はいいが、参加者になっているときはもう未成年だからと断れない。
どのくらいが限界かを知っておくのも必要だ。
「慣れるまでは俺以外の前では酒を飲むなよ」
「わかった」
夜会で見る貴族たちを見るにお酒は厄介な物だと思う。
限界を知らずに醜態を晒すのは困る。
ヴォルフが栓を開け、グラスに注ぐ。
本当にきれいな色をしている。
グラスを見つめていると手に取るように促された。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
なんだかくすぐったい気持ち。
軽くグラスを打ち合わせて液体を口にする。
酸味と微かな苦みが喉を通っていく。
アルコールが通った後が熱い。
冷えた物を呑んだのに熱いなんて不思議な感じだ。
でも…。
「おいしい」
言われたとおり飲みやすくておいしかった。
すっきり甘くてジュースよりも爽やかな気がする。
「でもヴォルフが時々飲んでるのとは違うわよね」
騎士たちが飲んでいるのとも色が違う。
「あれは度数が高いから初心者には出せない」
「そっか」
それもそうだ。
グラスが空いたので注いでもらう。
飲みやすいのでどんどん飲んでしまいそうだ。
一緒に持って来てくれた果物を口にする。
どうしてかマリナが好む物ばかりだった。
「そういえば、私の誕生日なんて誰に聞いたの?」
ヴォルフに教えた記憶はない。
美菜さんの誕生日の時に聞かれたけど答えてないはずだ。
「内務卿に聞いた」
意外な名前が出てきた。
てっきり王子か師匠にでも聞いたかと思ったのに。
でも内務卿なら知ってて当然だ。
王子の側にいる者で内務卿が知らないことはないだろう。
双翼候補になった時点で洗いざらい調べているはずだ。
……内務卿なら余計なことは言わないだろうしね。
王子なら物言いたげな視線を向けられるだろうし、近衛のみんなだとまたお説教が待っている。
師匠もなんか余計な事言いそうだし。
調べてまで祝ってくれたことは素直にうれしい。
「ありがとう」
ヴォルフに凭れてお礼を言う。
好きな人に祝ってもらうのってこんなにうれしいものなんだ。
ふわふわと浮かれた気分なのは嬉しさでかお酒のせいか。
どちらかわからない。
ヴォルフがグラスに口を付けるマリナを見て感心したように言う。
「体質的に酒を受け付けないということはなさそうだな」
「ああ、たまにそういう人いるね」
断れなかったのか一口二口飲んで顔を青くしている人を見たことがある。
あそこまでダメならいっそアルコールは医者に止められていると言い訳が出来そうだけど。
良識のある人ならそこで無理強いはしてこないものだ。
嫌がらせをしたい人には逆効果になるけど。
「ただアルコールに強い体質だと酒量を間違えやすいからな。
体調には気を付けろよ」
「はーい」
いつもならこのくらい飲めるという考え方は駄目らしい。
真面目なアドバイスなので真剣に聞く。
実例混じりのアドバイスはとてもためになる。
近衛騎士たちの失態については聞かないことにした方が良さそうだけど。内輪の話だしね。
任務を離れているときの失敗はある程度は無かったものとして扱われる。
ギュンターさんが飲み過ぎると誰彼かまわず奥さんの惚気を話し出すとか、ミヒャエルさんが見習いの頃飲み過ぎて人事不省になったことがあるとか、知らない顔をしていた方がいいような気がした。
ギュンターさんのはともかくミヒャエルさんは真面目だからその話を持ちだしたら落ち込んでしまいそうだ。
情報だけ頭に入れておこう。
結局この日、酔って気分が悪くなることはなかった。
楽しかったし、どことなくヴォルフも機嫌が良かったような気がした。
「何? それ」
「これか? 酒だ」
「お酒?」
ヴォルフが見せたボトルには綺麗なラベルが貼られている。
「これから夜会で勧められことも増えるだろうから、慣れておくに越したことはない」
薄赤い色をしたお酒は飲みやすい初心者向けの物だと言う。
「ふーん」
確かに。護衛として居る場合はいいが、参加者になっているときはもう未成年だからと断れない。
どのくらいが限界かを知っておくのも必要だ。
「慣れるまでは俺以外の前では酒を飲むなよ」
「わかった」
夜会で見る貴族たちを見るにお酒は厄介な物だと思う。
限界を知らずに醜態を晒すのは困る。
ヴォルフが栓を開け、グラスに注ぐ。
本当にきれいな色をしている。
グラスを見つめていると手に取るように促された。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
なんだかくすぐったい気持ち。
軽くグラスを打ち合わせて液体を口にする。
酸味と微かな苦みが喉を通っていく。
アルコールが通った後が熱い。
冷えた物を呑んだのに熱いなんて不思議な感じだ。
でも…。
「おいしい」
言われたとおり飲みやすくておいしかった。
すっきり甘くてジュースよりも爽やかな気がする。
「でもヴォルフが時々飲んでるのとは違うわよね」
騎士たちが飲んでいるのとも色が違う。
「あれは度数が高いから初心者には出せない」
「そっか」
それもそうだ。
グラスが空いたので注いでもらう。
飲みやすいのでどんどん飲んでしまいそうだ。
一緒に持って来てくれた果物を口にする。
どうしてかマリナが好む物ばかりだった。
「そういえば、私の誕生日なんて誰に聞いたの?」
ヴォルフに教えた記憶はない。
美菜さんの誕生日の時に聞かれたけど答えてないはずだ。
「内務卿に聞いた」
意外な名前が出てきた。
てっきり王子か師匠にでも聞いたかと思ったのに。
でも内務卿なら知ってて当然だ。
王子の側にいる者で内務卿が知らないことはないだろう。
双翼候補になった時点で洗いざらい調べているはずだ。
……内務卿なら余計なことは言わないだろうしね。
王子なら物言いたげな視線を向けられるだろうし、近衛のみんなだとまたお説教が待っている。
師匠もなんか余計な事言いそうだし。
調べてまで祝ってくれたことは素直にうれしい。
「ありがとう」
ヴォルフに凭れてお礼を言う。
好きな人に祝ってもらうのってこんなにうれしいものなんだ。
ふわふわと浮かれた気分なのは嬉しさでかお酒のせいか。
どちらかわからない。
ヴォルフがグラスに口を付けるマリナを見て感心したように言う。
「体質的に酒を受け付けないということはなさそうだな」
「ああ、たまにそういう人いるね」
断れなかったのか一口二口飲んで顔を青くしている人を見たことがある。
あそこまでダメならいっそアルコールは医者に止められていると言い訳が出来そうだけど。
良識のある人ならそこで無理強いはしてこないものだ。
嫌がらせをしたい人には逆効果になるけど。
「ただアルコールに強い体質だと酒量を間違えやすいからな。
体調には気を付けろよ」
「はーい」
いつもならこのくらい飲めるという考え方は駄目らしい。
真面目なアドバイスなので真剣に聞く。
実例混じりのアドバイスはとてもためになる。
近衛騎士たちの失態については聞かないことにした方が良さそうだけど。内輪の話だしね。
任務を離れているときの失敗はある程度は無かったものとして扱われる。
ギュンターさんが飲み過ぎると誰彼かまわず奥さんの惚気を話し出すとか、ミヒャエルさんが見習いの頃飲み過ぎて人事不省になったことがあるとか、知らない顔をしていた方がいいような気がした。
ギュンターさんのはともかくミヒャエルさんは真面目だからその話を持ちだしたら落ち込んでしまいそうだ。
情報だけ頭に入れておこう。
結局この日、酔って気分が悪くなることはなかった。
楽しかったし、どことなくヴォルフも機嫌が良かったような気がした。
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