双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 弟さんの結婚式編

魔術師の素養 1

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 執務が終わってメルヒオールのところに行く。
 面白い効果は見つかったんだろうか。
 どんなものが出てきたとしても、それを活かす方法を見つけるのが作り出したマリナの仕事だ。
 建物の入り口に向かってのんびりと足を進める。
 この前とは反対の表側から建物に近づく。
 普段ひっそりとしている場所だけに、言い争う声はよく響く。
「うるさいな、帰れよ」
「あら、貴方に私を追い返す権限などはないと思いますけれど?」
 魔道具を取りに来たら男女の言い争う声が聞こえた。
 片方がメルヒオールだったので足を止める。
 視線を向けると木の実色の瞳と目が合った。
「お姉様っ!」
 マリナの下に駆け寄る令嬢はついこの前会ったばかりの…。
「ミリアム・グレッツナー様…?」
 確かそんな名前だと侯爵から聞いた。
 名前を呼ぶと瞳を煌めかせてマリナを見つめる。
「名前を呼んでいただけるなんて光栄ですわ。
 叶うなら是非ミリアと呼んで欲しいです」
 熱の篭った瞳を向けられて顔を顰める。
 こんな目を向けられる覚えはない。
「どうして此処に?」
 彼女の家は王都からは離れているし、ご両親も王宮勤めではないので王宮に来るような用事もないだろう。
 問われて彼女が頬を染める。
「この間の衝撃が忘れられないのです」
 手を組み合わせマリナに一歩近づく。
「空が手に届く場所にあると気づかせてくださったこと、感謝しています。
 難しいと理解はしているのです。 それでも憧れを憧れのままで終わらせるのは無為なことですわ」
 熱に浮かされたような顔を見てマリナは一歩下がる。
 嫌な予感が頭の中を占める。
「是非私を弟子にしてくださいませ!!」
 彼女の声が辺りに響き渡る。
 絶対嫌だとマリナは心の中で叫ぶ。
(どうしてこんなことに…!)
 マリナが魔法をかけたせいだろうか。新しい扉を開いたとうっとりと語るミリアム様を直視していられない。
 引いた分だけ近寄ってくるミリアム様にはっきりと断りを告げる。
「私は弟子は取りません。
 未だ若輩の身ですし、弟子に割く時間はありませんから」
 双翼としての仕事を優先すれば、人に教えている時間なんて取れない。
 いずれ弟子を取ることがあるとしても、それはだいぶ先のことになる。
 今はまだ、マリナの弟子になるというのは荊に囲まれるようなものだ。
 身を守ることのできない人間にその名を与えることは出来なかった。
 そして、令嬢に魔術を教えるなんてことも出来ない。
「ましてあなたのようなご令嬢を弟子にすることは出来ません」
「まあ、どうしてですの?」
 わかっているだろうにそんなことを聞く。
 理由を上げればひとつひとつそれを潰していくつもりなんだろう。
 答えに困ったマリナを救ったのはメルヒオールだった。
「ソイツに魔術を習うつもりなの? どうかしてるよ」
 助け舟で追突してきた。
 何の助けにもならなかったメルヒオールに令嬢が食って掛かる。
「どうかしているのは貴方の方です。 お姉様に向かってなんて暴言ですか。
 大体お姉様のところに案内しなさいと言っただけなのに、帰れなんてどういうつもりですの!」
 マリナの耳に聞こえてきた言い争いはそれだったらしい。
 知ってもどうにもならない、もう止めようという気すら失せてきた。
「貴方のような朴念仁にはお姉様の素晴らしさがわからないのでしょうね。
 魔術の能力だけでなくその崇高な心こそ讃えられるべきの…」
 言い争う二人の声を聴きながら眉間をほぐす。
 どうでもいいけれどお姉様とか意味のわからない呼び方は何なのだろう。
 彼女の方が年上だったはずだけれど…。
 魔道具を返してもらわないといけないけどこのまま逃げたい。
 しかしメルヒオールと言い争いながらも彼女がこちらを注意しているのがわかる。
 下手に動けば気づかれてしまう。
 打開策が思い浮かばなくて思考を放棄しそうになった。
「先程から何を騒いでいるのですか」
 入口の近くで騒いでいたマリナたちをジグ様が腕を組んで見下ろしている。
 全く予想しなかった人物の介入に全員が言葉を止めた。
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