双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 弟さんの結婚式編

式の日 3

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 にぎやかさを取り戻した庭園。
 人々は思い思いに二人の登場を待っている。
 子供などはじっとしているのが退屈なのか同じ年くらいの子で集まり遊んでいた。
 うるさくしないのが貴族の子女らしいと思う。
 感心していると侯爵が会場に姿を現した。
 騒ぎが治まったタイミングを見計らって侯爵が挨拶をする。
 二人の為に集まってくれたことへの感謝を述べ、屋敷に視線を向けた。
 人々の視線が一点に集まる。
 今日の主役が手を取り合って庭園に降りてきた。
 感嘆に息を呑む音があちらこちらから上がる。
 マリナも同様に見惚れた。
 首元と袖を覆う部分は肌が透ける生地を使って、露出を抑えながらも野暮ったさを感じさせない。
 胸元に飾られているのが昨日話していた首飾りだろう。
 一つだけ目立って大きい石は存在を主張しすぎることもなく、むしろクリスさんの楚々とした美しさを印象付けて輝いていた。
 クリスさんのドレスは白い生地に瞳と同じ色の糸がで刺繍がされている。
 真っ白なドレスはすっきりとしたラインで裾に施された緑の刺繍が見事だった。
 アレクさんも同じように白の礼服に緑の刺繍が施されている。
 非の打ちどころがなくお似合いのふたりだった。
 招かれた人々も瞳に祝福の光を湛え挨拶をするふたりを見つめている。
 少女たちは言葉もなく見惚れているようだった。
 ふたりがそれぞれ挨拶を済ませたあと、侯爵がグラスを持つ。
「今日の良き日を迎え、新たな道を歩き出すことになる。
 互いを信じ、思い合い、存分に幸せになってほしい。
 ふたりの行く先に数多の祝福が降り注ぐことを願って!!」
 侯爵が酒の入ったグラスを掲げると、あちらこちらでもグラスを打ち鳴らす音が響く。
 マリナも隣にいるヴォルフとグラスを合わせた。
 グラスに口を突けると爽やかな果実の香りがする。
 先程の令嬢が手にしていたのと同じ果実を使った飲み物は甘くておいしい。
 マリナの持ったグラスにはアルコールは入っていない。同じ果実を使っているがただのジュースだ。
 もう少しで成人だけれど、一応法律には従うべきとちゃんとジュースを選んでいる。
 一瞬やり過ぎたかと思った先程の出来事だけれど、どう考えても成人を迎えていない子供相手に酒をかけるという不作法をしたのは向こうだった。
 気にすることはなかったと一人で頷く。
 うっかりぶつかったという風を装っても態度を見ればわざとなのがわかる。
 あれが顔にかかったりでもしていたら取り返しのつかないことだった。
 思い返してぞっとする。
 顔に持っていた飲み物を掛けるというのは明確に喧嘩を売っている。
 しめしを付けるためにも正式なちゃんとした抗議をしないといけないところだった。
 正直そういうのは面倒なのであまり好きじゃない。
 かといって意味も無く許すことも出来ない。甘い顔をすれば自分の首を絞めるだけだった。
 あの令嬢はどこまでそういったことが理解出来ていたんだろうか。
 見るとアレクさんとクリスさんが庭園を回り招待客に順番に挨拶をしている。
 大変そうだけど幸せそうだ。
 見てる方も幸せな気持ちになる。
 しばらくしてふたりがマリナたちのところにやってきた。
「クリスさん、とっても綺麗です!!」
 力一杯主張するマリナに、クリスさんがはにかむ。
 本当に綺麗。可愛らしく頬を染めて目を伏せる姿は、こちらも恥じらってしまいそうな愛らしさがあった。
 ドレスは近くでよく見ると白い部分も細かな刺繍があり、恐ろしく手のかかった作品なのがわかる。
 近くで見せてもらって首飾りにおもしろい仕掛けがあるのに気付く。
 クリスさんに聞くとマリナの予想を肯定する返事が返ってきた。
 身に着ける人のことを思って作られたのがよくわかる。
 贈った人は本当に奥様のことを大切にしていたんだなと思った。
 ヴォルフとアレクさんも言葉を交わしている。
 アレクさんの目がマリナに向く。
「マリナさん、兄上のことをよろしくお願いします。 無茶ばかりする人なので」
 弟から見ると無茶に見えるらしい。マリナから見るとそこまで無茶でもないと思うのに。
「無茶ばかりするのはこいつも同じだぞ」
 アレクさんにヴォルフの言葉を信じた様子はない。
 ヴォルフの言うことの方が真実なので曖昧に微笑んで誤魔化した。
「クリスティーナ殿もアレクのことをよろしく頼む。
 こいつは淋しがり屋なので大変だと思うが、貴女ならこいつを愛しんでくれると思う」
 意趣返しのような言葉を本気で言うヴォルフにアレクさんが苦笑している。
 クリスさんがはい!と真剣な顔で誓う、その様子に情けなく眉毛を下げるのがおもしろい。
 ふたりが他の招待客に挨拶に向かう背中を見送ってヴォルフとマリナも招待客と話をしに向かう。
 誰もが顔に笑みを乗せて旅立つ二人の前途を祝っていた。
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