双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 帰還編

ご飯

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 レイフェミア様が怪我をしてから二週間。
 王子とレイフェミア様が特別な関係になってからも二週間。
 何事もなければこのまま婚約、結婚と話が進んで行く。
 内務卿などはもう段取りを考えて行動しているだろう。
 早過ぎない程度に急ぎたいと思っているはずなので。
 マリナたち双翼にも少しだけ変化が起きていた。
「マリナ、腹が減った」
 部屋に入って来るなり、ヴォルフがそう言う。
「だからヴォルフのお腹を満たせるほどの物はないってば」
 呆れを交えながら答える。
 今日はレイフェミア様が王子に会いに来ていた。
 王子とヴォルフは一緒に食事を摂ることも多かったけれど、王子がレイフェミア様と晩餐を約束している日はお二人の邪魔をしたくないと遠慮している。
 流石におふたりが食事を楽しんでいるところに割り込もうとは思わない。マリナでも嫌だ。
 一緒に席に着くように言われても断るでしょう、普通。
 護衛を務めてからマリナの部屋にくるのは良いけど、その前に食堂で食べてくればいいのに。
 本当に大したものは置いてないし、すぐ食べられるのはお菓子ばかりだ。
 甘いものを好まないのに、どうしてそういうことを言うのかな。
 隣室に向かって簡単に食べられる物だけ持ってくる。
「お前の作った料理が食べたい」
「えー?」
 材料も調理器具も無いのにどうしろと。
「向こうの世界で作ったようなの?」
「ああ。 思い出すと無性に食べたくなる」
 ほぼ炒め物しかしてなかったような記憶があるのだけれど。
 そこまで食べたくなるものなんて作ったかな?
「ああ、しょうゆ味が食べたいとかそういうこと?」
 あれは日本に行かないと手に入らない。
 調味料を買うためだけに異世界に行くというのはいくらなんでも…。
 便利に使いすぎるとよくないと思う。
「違う…」
 異世界の味が恋しいのかと思えば違うと否定される。
「お前の料理が食べたいと言ってるだろう!」
「???」
 マリナが作った料理なんて本当に大したものではないんだけど。
 そこまで言われるとうれしいような照れくさいような、複雑な気分だった。
「じゃあ新しい魔道具設置しないとね」
 向こうの世界で使っていたのも小さな電磁調理器だけだったので、小さな物を置けば同じような使い方が出来そう…。
「ヴォルフの部屋に置いていい?」
「かまわないが、何でだ?」
 マリナの部屋でもいいんだけれど…。
「私の部屋だと食事がしづらいでしょう?
 ヴォルフの部屋の方がテーブルが大きくて食べやすいと思う」
 マリナの部屋には椅子が少ない。
「ベッドに座って食事を取るのはちょっと…。
 食べづらいでしょう、テーブルが低くて」
 カップを取るくらいなら気にならなくても、ご飯を食べるには向かない。
 そういう使い方を想定していないし。
「それもそうだな」
 ヴォルフが納得する。
「じゃあそれはまた今度ね。 届いたら持って行くから」
 一緒に鍋も買わないと。
 食器はどうしよう…。
 ヴォルフもマリナもこだわりはないので鍋と一緒に届けてもらおうかな。
 とりあえず今日は一緒に食堂に行こう。
 この時間ならおばさんはいないはず。
 目を輝かせて話を広げる人に噂の火種を上げる気は無かった。
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