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セレスタ 帰還編
内務卿の感慨
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王子がようやく覚悟を決めてレイフェミア殿に求愛をした。
あれをそう言っていいのかは微妙だが、上手く収まってよかったと思う。
待った甲斐があったというもの。
「やれやれ、私も肩の荷が降りました」
中々行動に移さないので少々焦れたが、結果は上々だ。
「そなたは相変わらず息子に甘いな」
聞こえてきた苦言に笑みを返す。
「並び立つ唯一くらい、自分で選びたいではないですか」
長い年月を共に過ごす伴侶なのだから。
傷付け合い、守り合い癒し合える人間。
誰かに押し付けられた花嫁ではそうはいかない。
王子は優しいので、私たちが選んだ相手でも慈しみ大切にするだろう。
しかしそれでは自分を心から愛することは出来ないかもしれない。
飾らない自分を認めてもらえる相手、王子にはそういった伴侶を得て欲しかった。
年寄りの感傷と言ってしまえばそれまでだが。
「そうでないと拗ねて執務をせず閉じ籠ってしまうやもしれませんしな。
何せ王子の血筋は前科がある」
ちらりと椅子に座る人物を見下ろすと眉間に皺を寄せて口を噤む。
もう数十年も前のことだがはっきりと覚えている。
大混乱した王宮と殿下の間に立って奔走する自分。
まだ内務卿などと言う大層な役職のない一文官に、よくも無茶な役割を振ってくれたと先代国王には恨み言を言いたい。
それがこうして役職付きになり、代替わりをした陛下の側近として勤めるようになり、王子のお目付け役をするに至った。
人生とはわからぬものだ。
今の私を当時の自分が見たら目と頭を疑うだろう。
国の重鎮に収まって陛下に嫌味を言うまでに図太くなるとは予想もしないに違いない。
「昔のことをいつまでも…」
忌々しそうに呟く陛下。
これは私だけが使える陛下への切り札だ。
「苦労しましたからな。
それに比べたら王子のなんと優秀なことか」
職務放棄もしなければ強引に相手に迫って困らせるということもない。
反対に押しが弱くてはらはらしたが、それも王子の良さだろう。
「甘すぎだろう、その半分でも私に優しく接する気はないのか!」
「こればかりはどうにもなりませんな」
幼少から見守ってきた王子の方に点が傾きやすいのは仕方がない。
当時の陛下はそれはもう我が強く自分を曲げなかった。
私も若かったので何度怒鳴りつけたくなったことか。
陛下は甘やかしては駄目だと学習したのもその頃だ。
これはもう、変えられないだろう。
今までの行いと関係性は変えられない。
「まったく…。 私も孫が楽しみだから良いが」
気の早いことだ。お二人はようやく恋人になったばかりだというのに。
年寄りは先走り過ぎていけない。
自分のことを棚に上げてそう思う。
「これからが楽しみですな」
まずは時期を見計らって婚約を発表し、結婚式などはその一、二年後くらいがいいだろう。
すでに準備は始まっていた。
セレスタの技術の粋を集めた式になる。
王子の慶事に国中が喜びに溢れるだろう。
その時を想い自然と笑みが零れる。
陛下も同じ気持ちだったようで、浮かんだ笑みは映したように似ていた。
あれをそう言っていいのかは微妙だが、上手く収まってよかったと思う。
待った甲斐があったというもの。
「やれやれ、私も肩の荷が降りました」
中々行動に移さないので少々焦れたが、結果は上々だ。
「そなたは相変わらず息子に甘いな」
聞こえてきた苦言に笑みを返す。
「並び立つ唯一くらい、自分で選びたいではないですか」
長い年月を共に過ごす伴侶なのだから。
傷付け合い、守り合い癒し合える人間。
誰かに押し付けられた花嫁ではそうはいかない。
王子は優しいので、私たちが選んだ相手でも慈しみ大切にするだろう。
しかしそれでは自分を心から愛することは出来ないかもしれない。
飾らない自分を認めてもらえる相手、王子にはそういった伴侶を得て欲しかった。
年寄りの感傷と言ってしまえばそれまでだが。
「そうでないと拗ねて執務をせず閉じ籠ってしまうやもしれませんしな。
何せ王子の血筋は前科がある」
ちらりと椅子に座る人物を見下ろすと眉間に皺を寄せて口を噤む。
もう数十年も前のことだがはっきりと覚えている。
大混乱した王宮と殿下の間に立って奔走する自分。
まだ内務卿などと言う大層な役職のない一文官に、よくも無茶な役割を振ってくれたと先代国王には恨み言を言いたい。
それがこうして役職付きになり、代替わりをした陛下の側近として勤めるようになり、王子のお目付け役をするに至った。
人生とはわからぬものだ。
今の私を当時の自分が見たら目と頭を疑うだろう。
国の重鎮に収まって陛下に嫌味を言うまでに図太くなるとは予想もしないに違いない。
「昔のことをいつまでも…」
忌々しそうに呟く陛下。
これは私だけが使える陛下への切り札だ。
「苦労しましたからな。
それに比べたら王子のなんと優秀なことか」
職務放棄もしなければ強引に相手に迫って困らせるということもない。
反対に押しが弱くてはらはらしたが、それも王子の良さだろう。
「甘すぎだろう、その半分でも私に優しく接する気はないのか!」
「こればかりはどうにもなりませんな」
幼少から見守ってきた王子の方に点が傾きやすいのは仕方がない。
当時の陛下はそれはもう我が強く自分を曲げなかった。
私も若かったので何度怒鳴りつけたくなったことか。
陛下は甘やかしては駄目だと学習したのもその頃だ。
これはもう、変えられないだろう。
今までの行いと関係性は変えられない。
「まったく…。 私も孫が楽しみだから良いが」
気の早いことだ。お二人はようやく恋人になったばかりだというのに。
年寄りは先走り過ぎていけない。
自分のことを棚に上げてそう思う。
「これからが楽しみですな」
まずは時期を見計らって婚約を発表し、結婚式などはその一、二年後くらいがいいだろう。
すでに準備は始まっていた。
セレスタの技術の粋を集めた式になる。
王子の慶事に国中が喜びに溢れるだろう。
その時を想い自然と笑みが零れる。
陛下も同じ気持ちだったようで、浮かんだ笑みは映したように似ていた。
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