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セレスタ 帰還編
慌てるふたり 1
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公爵家に戻り、いつも寛いでるソファに崩れ落ちる。
「聞かなければよかった…」
後悔しても後の祭。
いっそ気づかない振りをしていればよかったのかもしれない。
自分が王太子殿下に想われているのではないか、なんてとんでもないことだと思う。
うぬぼれだと笑ってくれたらどんなに気が楽になったことか。
双翼の魔術師、マリナ様は終始冷静な顔でレイフェミアの言葉を否定した。
断ってもかまわないと言いながら、考えてみて欲しいとも告げられる。
レイフェミアの心次第だというように。
「どうしたらいいの…?」
マリナ様だけの考えではなく、殿下のお側にいる方の総意でもあるなんて。
そもそも殿下から何も言われてないのに…。
「…!」
自分で考えた言葉にはっとする。
そう、まだ殿下から何も言われていない。
周囲の先走りかもしれないということもある。
なら、どうすればいいか。
―――殿下に直接聞いてみればいい。
この時、レイフェミアは天啓を受けた気すらしていた。
よくよく考えれば大間違いだったのがわかっただろうに。
つまり、それだけ殿下の気持ちに動揺していたということでもあった。
マリナが着いたときには普段静かな庭園が騒然としていた。
「ねえ、ヴォルフ。 あれ、どうしたの?」
邪魔をしないように少し離れたところから警護していたヴォルフに聞く。
師匠の所に顔を出してから庭園に来たマリナには、何が起こっていたのか全く分からない。
テーブルの上にはお茶が零れ、椅子の側に割れたカップが転がっている。
視線の先には指先を切ったらしいレイフェミア様とおろおろとしている王子。
内務卿はマリナたちがいるのとは反対側の入り口で頭を抱えている。
近衛騎士たちもどうしたものかと顔を見合わせていて、慌てた雰囲気は感じるけれど、特別緊迫した様子はない。
「王子とレイフェミア様が茶を楽しんでいて」
「予定どおりね」
執務が終わったらお茶を一緒にする約束をもらえたと喜んでいた。
「楽しげに話していたんだが、突然王子が慌てだして」
「うん」
何か言われたのね。それで?
「カップを倒しお茶が零れ」
「なるほど」
ポットでなくて良かった。
ふたりとも火傷はしていないみたい。
「転がったカップが地面に落ちて割れた」
「へえ」
結構気に入っていた絵柄だったのに、王子が。
繊細な絵付けを施されたカップが無残な姿になっている。
「慌てたレイフェミア様がカップを拾おうとして…」
「怪我をしたと」
給仕を呼ぶのではなく、自分で拾おうとするなんて、余程動揺していたのだろう。
「……」
「……コントか」
異世界で見たテレビで、たまにやっていたお笑い番組のような連鎖被害。
思わず呟くマリナに不敬だと顔を顰めるヴォルフ。
だって…。
あまりにも連続した不幸に、つい言いたくなってしまった。
「取りあえずレイフェミア様の怪我を治療しましょう。 指先とはいえ、王宮内で怪我をさせて、そのまま帰らせる訳にはいかないわ」
責任を持って治療しないと、王子が可哀想なことになる。
大したことないと微笑むレイフェミア様に、青褪めた王子は返事を返すことも出来ないでいる。
早急に治療と事態の収拾を図る必要を感じた。
えっと…。原因はレイフェミア様とお話ししたことじゃないよね?
違うといいな、と思いながらマリナはふたりの下に急いだ。
「聞かなければよかった…」
後悔しても後の祭。
いっそ気づかない振りをしていればよかったのかもしれない。
自分が王太子殿下に想われているのではないか、なんてとんでもないことだと思う。
うぬぼれだと笑ってくれたらどんなに気が楽になったことか。
双翼の魔術師、マリナ様は終始冷静な顔でレイフェミアの言葉を否定した。
断ってもかまわないと言いながら、考えてみて欲しいとも告げられる。
レイフェミアの心次第だというように。
「どうしたらいいの…?」
マリナ様だけの考えではなく、殿下のお側にいる方の総意でもあるなんて。
そもそも殿下から何も言われてないのに…。
「…!」
自分で考えた言葉にはっとする。
そう、まだ殿下から何も言われていない。
周囲の先走りかもしれないということもある。
なら、どうすればいいか。
―――殿下に直接聞いてみればいい。
この時、レイフェミアは天啓を受けた気すらしていた。
よくよく考えれば大間違いだったのがわかっただろうに。
つまり、それだけ殿下の気持ちに動揺していたということでもあった。
マリナが着いたときには普段静かな庭園が騒然としていた。
「ねえ、ヴォルフ。 あれ、どうしたの?」
邪魔をしないように少し離れたところから警護していたヴォルフに聞く。
師匠の所に顔を出してから庭園に来たマリナには、何が起こっていたのか全く分からない。
テーブルの上にはお茶が零れ、椅子の側に割れたカップが転がっている。
視線の先には指先を切ったらしいレイフェミア様とおろおろとしている王子。
内務卿はマリナたちがいるのとは反対側の入り口で頭を抱えている。
近衛騎士たちもどうしたものかと顔を見合わせていて、慌てた雰囲気は感じるけれど、特別緊迫した様子はない。
「王子とレイフェミア様が茶を楽しんでいて」
「予定どおりね」
執務が終わったらお茶を一緒にする約束をもらえたと喜んでいた。
「楽しげに話していたんだが、突然王子が慌てだして」
「うん」
何か言われたのね。それで?
「カップを倒しお茶が零れ」
「なるほど」
ポットでなくて良かった。
ふたりとも火傷はしていないみたい。
「転がったカップが地面に落ちて割れた」
「へえ」
結構気に入っていた絵柄だったのに、王子が。
繊細な絵付けを施されたカップが無残な姿になっている。
「慌てたレイフェミア様がカップを拾おうとして…」
「怪我をしたと」
給仕を呼ぶのではなく、自分で拾おうとするなんて、余程動揺していたのだろう。
「……」
「……コントか」
異世界で見たテレビで、たまにやっていたお笑い番組のような連鎖被害。
思わず呟くマリナに不敬だと顔を顰めるヴォルフ。
だって…。
あまりにも連続した不幸に、つい言いたくなってしまった。
「取りあえずレイフェミア様の怪我を治療しましょう。 指先とはいえ、王宮内で怪我をさせて、そのまま帰らせる訳にはいかないわ」
責任を持って治療しないと、王子が可哀想なことになる。
大したことないと微笑むレイフェミア様に、青褪めた王子は返事を返すことも出来ないでいる。
早急に治療と事態の収拾を図る必要を感じた。
えっと…。原因はレイフェミア様とお話ししたことじゃないよね?
違うといいな、と思いながらマリナはふたりの下に急いだ。
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