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セレスタ 帰還編
ふたりの時間
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レグルスで買った装飾品が届いたのでヴォルフが部屋まで持って来てくれた。
自室で見るとまた雰囲気が違って見える。
「やっぱりこれにしてよかった。 色が合ってて綺麗」
どちらも用意してあるドレスに合っているのでよかった。
持って行くのは薄緑と水色のドレスなのでどちらを合わせても良い。
その日の雰囲気と気分で着るドレスを選ぶつもり。
実際にドレスと合わせてみたらイメージが違ってたなんてこともあるから、ちょっとほっとした。
クローゼットにしまって戻るとヴォルフはベッドに座って寛いでいる。
最近は自分の部屋にヴォルフがいるのも少し慣れてきた。
肩が触れ合う距離に座るのはまだ慣れないけれど。
間を少し開けて座ると距離を詰められる。
逃げたくなる身体を抑えてカップを取るとヴォルフも同じようにカップを傾けた。
そういえばレグルスで買ったお菓子があったっけ。
立ち上がってお菓子を持ってくる。
「よっぽど気に入ったんだな」
「そうね、ちょっと買い過ぎたかも」
頻繁に行くことはできないので少し多めに買ってきた。
師匠に渡しに行ったら机の引き出しに入らないと言っていたので代わりに少しお菓子を貰ってきている。
おかげでマリナの部屋にはいつもよりたくさんのお菓子がある。
日持ちがする物ばかりだからいいけど。
座り直して肩に凭れかかる。自分からの方が緊張しない。
ヴォルフの腕が自然に肩に回る。
腕の重みを感じるとほっとするのは、慣れてきたからなのかな。
自分より高い体温を感じていると眠くなってしまいそう。
せっかく一緒にいるのに寝てしまうのも悪い。
そう思うのに身体から力がどんどん抜けていく。
「マリナ?」
ヴォルフの声に返事を返す。
けれど、ちゃんと言葉になったかもうわからなかった。
まさか自分といるときに寝るとは思わなかった。
最近慣れてきたとはいえ、あれだけ緊張して身を固くしていたのに。
肩にもたれていたマリナを引き寄せ膝の上に抱き上げる。
腕に頭を乗せた姿は安心しきっていて、達成感と落胆を同時に感じる。
「油断しすぎだ」
以前にも思ったことを改めて強く思う。
信頼の証なのかもしれないが、腕の中でこうも無防備になられると対処に困る。
レグルスの街をマリナと二人歩いたときの衝動はまだ忘れていない。
いつもとは違う服を着て隣を歩くマリナは愛らしくて目を奪われた。
同時にただのか弱い少女にしか見えない姿に動揺をする。
通りを歩いていた時も他の男から視線を浴びていた。
本人は気づいているのか無視しているだけなのか、全く気にした様子がなく、そんな様子にヴォルフの方が気を揉んだ。
自分から離れたら誰かが寄ってくるんじゃないか。マリナを傷つけるんじゃないか、そんな疑心に駆られた。
実際は上手く切り抜けて来るか実力行使で相手を叩きのめして来るだろうが。
あどけない寝姿からはそんなことが出来るようには見えない。
このまま抱きしめて眠れたら、と思うが流石にこの前みたいに噂になっても困る。
ましてベッドの上では言い訳のしようがない。
この部屋はマリナがきっちり防御しているので勝手に入って来れないだろうが、けじめとして諦める。
今日は早々に自室に帰ることにした。
眠ったマリナをベッドに横たえ布団をかける。
無防備な寝顔に湧くのは衝動よりも愛しさだった。
自室で見るとまた雰囲気が違って見える。
「やっぱりこれにしてよかった。 色が合ってて綺麗」
どちらも用意してあるドレスに合っているのでよかった。
持って行くのは薄緑と水色のドレスなのでどちらを合わせても良い。
その日の雰囲気と気分で着るドレスを選ぶつもり。
実際にドレスと合わせてみたらイメージが違ってたなんてこともあるから、ちょっとほっとした。
クローゼットにしまって戻るとヴォルフはベッドに座って寛いでいる。
最近は自分の部屋にヴォルフがいるのも少し慣れてきた。
肩が触れ合う距離に座るのはまだ慣れないけれど。
間を少し開けて座ると距離を詰められる。
逃げたくなる身体を抑えてカップを取るとヴォルフも同じようにカップを傾けた。
そういえばレグルスで買ったお菓子があったっけ。
立ち上がってお菓子を持ってくる。
「よっぽど気に入ったんだな」
「そうね、ちょっと買い過ぎたかも」
頻繁に行くことはできないので少し多めに買ってきた。
師匠に渡しに行ったら机の引き出しに入らないと言っていたので代わりに少しお菓子を貰ってきている。
おかげでマリナの部屋にはいつもよりたくさんのお菓子がある。
日持ちがする物ばかりだからいいけど。
座り直して肩に凭れかかる。自分からの方が緊張しない。
ヴォルフの腕が自然に肩に回る。
腕の重みを感じるとほっとするのは、慣れてきたからなのかな。
自分より高い体温を感じていると眠くなってしまいそう。
せっかく一緒にいるのに寝てしまうのも悪い。
そう思うのに身体から力がどんどん抜けていく。
「マリナ?」
ヴォルフの声に返事を返す。
けれど、ちゃんと言葉になったかもうわからなかった。
まさか自分といるときに寝るとは思わなかった。
最近慣れてきたとはいえ、あれだけ緊張して身を固くしていたのに。
肩にもたれていたマリナを引き寄せ膝の上に抱き上げる。
腕に頭を乗せた姿は安心しきっていて、達成感と落胆を同時に感じる。
「油断しすぎだ」
以前にも思ったことを改めて強く思う。
信頼の証なのかもしれないが、腕の中でこうも無防備になられると対処に困る。
レグルスの街をマリナと二人歩いたときの衝動はまだ忘れていない。
いつもとは違う服を着て隣を歩くマリナは愛らしくて目を奪われた。
同時にただのか弱い少女にしか見えない姿に動揺をする。
通りを歩いていた時も他の男から視線を浴びていた。
本人は気づいているのか無視しているだけなのか、全く気にした様子がなく、そんな様子にヴォルフの方が気を揉んだ。
自分から離れたら誰かが寄ってくるんじゃないか。マリナを傷つけるんじゃないか、そんな疑心に駆られた。
実際は上手く切り抜けて来るか実力行使で相手を叩きのめして来るだろうが。
あどけない寝姿からはそんなことが出来るようには見えない。
このまま抱きしめて眠れたら、と思うが流石にこの前みたいに噂になっても困る。
ましてベッドの上では言い訳のしようがない。
この部屋はマリナがきっちり防御しているので勝手に入って来れないだろうが、けじめとして諦める。
今日は早々に自室に帰ることにした。
眠ったマリナをベッドに横たえ布団をかける。
無防備な寝顔に湧くのは衝動よりも愛しさだった。
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