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セレスタ 帰還編
事後処理 メルヒオールについて
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自室に戻って本などを保管している部屋に入る。
大きな紙を机の上に広げて動かないように端を固定してじっと紙面を見つめた。
置いた紙から視線を外し、壁際の椅子に座ってノートを広げる。
何も考えずにペンを走らせていくと頭の中が整理されていく気がした。
「おい」
開いた扉から声を掛けられて顔を上げる。
いつの間にかヴォルフが部屋に来ていたみたい。
「ごめん、気づかなかった。 いつからいたの?」
「今来たところだ。 扉を叩いても返事がなかったから勝手に入らせてもらった」
きっちりノックはしたらしい。全然気が付かなかった。
書きかけのノートを広げたまま机の上に置いて入ってすぐの部屋に戻る。
お茶を入れようと続き部屋に行こうとしたら後ろから抱きしめられてベッドに座らされた。
「どうしたの?」
いつもの姿勢だけど、お茶を入れる前からこの体勢になったのは初めてだ。
「ん? なんか煮詰まってでもいたのか?
険しい顔してたぞ」
「そう…?」
自分の頬を触ってみる。なんとなく硬い気はする。
柔らかくなるかな、と引っ張ってみた。
頭上から呆れた気配がしたかと思うとさっきより強く抱きしめられる。
肩を引かれて背中が密着する。そのまま目を閉じると頭を撫でられた。
髪を梳く手の感触は心地よい。
「疲れたか?」
視察の疲れが出たのかと聞かれて首を振る。
そういった疲れは全然ない。
疲れているとしたら気疲れだろう。
「ちょっと嫌なことがあっただけよ」
だから考え事に没頭したら頭の中がすっきりするかもしれないと思って書き物をしていた。
効果はちゃんとあった。途中で中断したけどさっきよりは気持ちが荒んでない。
「メルヒオールとそんなに仲が悪いのか?」
魔術師長に会いに行ったのを知っているからかそんなことを聞いてくる。
魔術師長は能力も性格も普通に長として相応しい人格者なので魔術師長と揉めたとは考えなかったみたい。
マリナ自身も魔術師長と揉めることなんて考えられないけれど。
意見が相容れないことがあっても話が出来る人だ。
話し合いもなく自分の意見だけを押し通そうとする人間とは違う。
「仲は別に悪くはないわよ、意見が合わないだけで」
ついでにあんまり人間として好きにはなれないだけで、嫌っているというほどでもないし。
思ったままを口にしているとヴォルフの手がマリナの肩に回る。
首の前を通る腕に手を乗せるとヴォルフの肩から力が抜けたような気がした。
「何か気に入らなかった?」
些細な変化だけれどなんとなく気になって聞いてみる。
「本音の態度を見せるくらいにはメルヒオールのことを信用しているのかと思ってな」
馬鹿なことを。と口に出さなかった自分を褒めたい。
「信用しているのは能力だけよ」
メルヒオールはどうしようもなく悪人というわけではない。
ただ自分の大事なもの以外に興味がなく、他者に危害が加わってもかまわないと考えるような人間なだけだ。
そしてそこがマリナが一番気に食わないところだった。
「ふうん」
そう言ってマリナの髪を撫でる。
「つまり人格を除けば信頼に値する人間だということか」
「…人格を除く意味ってあるの?」
能力だけは確かに一級品だけど、どう動くかわからない人間なんて危なくて使えないと思う。
大きな紙を机の上に広げて動かないように端を固定してじっと紙面を見つめた。
置いた紙から視線を外し、壁際の椅子に座ってノートを広げる。
何も考えずにペンを走らせていくと頭の中が整理されていく気がした。
「おい」
開いた扉から声を掛けられて顔を上げる。
いつの間にかヴォルフが部屋に来ていたみたい。
「ごめん、気づかなかった。 いつからいたの?」
「今来たところだ。 扉を叩いても返事がなかったから勝手に入らせてもらった」
きっちりノックはしたらしい。全然気が付かなかった。
書きかけのノートを広げたまま机の上に置いて入ってすぐの部屋に戻る。
お茶を入れようと続き部屋に行こうとしたら後ろから抱きしめられてベッドに座らされた。
「どうしたの?」
いつもの姿勢だけど、お茶を入れる前からこの体勢になったのは初めてだ。
「ん? なんか煮詰まってでもいたのか?
険しい顔してたぞ」
「そう…?」
自分の頬を触ってみる。なんとなく硬い気はする。
柔らかくなるかな、と引っ張ってみた。
頭上から呆れた気配がしたかと思うとさっきより強く抱きしめられる。
肩を引かれて背中が密着する。そのまま目を閉じると頭を撫でられた。
髪を梳く手の感触は心地よい。
「疲れたか?」
視察の疲れが出たのかと聞かれて首を振る。
そういった疲れは全然ない。
疲れているとしたら気疲れだろう。
「ちょっと嫌なことがあっただけよ」
だから考え事に没頭したら頭の中がすっきりするかもしれないと思って書き物をしていた。
効果はちゃんとあった。途中で中断したけどさっきよりは気持ちが荒んでない。
「メルヒオールとそんなに仲が悪いのか?」
魔術師長に会いに行ったのを知っているからかそんなことを聞いてくる。
魔術師長は能力も性格も普通に長として相応しい人格者なので魔術師長と揉めたとは考えなかったみたい。
マリナ自身も魔術師長と揉めることなんて考えられないけれど。
意見が相容れないことがあっても話が出来る人だ。
話し合いもなく自分の意見だけを押し通そうとする人間とは違う。
「仲は別に悪くはないわよ、意見が合わないだけで」
ついでにあんまり人間として好きにはなれないだけで、嫌っているというほどでもないし。
思ったままを口にしているとヴォルフの手がマリナの肩に回る。
首の前を通る腕に手を乗せるとヴォルフの肩から力が抜けたような気がした。
「何か気に入らなかった?」
些細な変化だけれどなんとなく気になって聞いてみる。
「本音の態度を見せるくらいにはメルヒオールのことを信用しているのかと思ってな」
馬鹿なことを。と口に出さなかった自分を褒めたい。
「信用しているのは能力だけよ」
メルヒオールはどうしようもなく悪人というわけではない。
ただ自分の大事なもの以外に興味がなく、他者に危害が加わってもかまわないと考えるような人間なだけだ。
そしてそこがマリナが一番気に食わないところだった。
「ふうん」
そう言ってマリナの髪を撫でる。
「つまり人格を除けば信頼に値する人間だということか」
「…人格を除く意味ってあるの?」
能力だけは確かに一級品だけど、どう動くかわからない人間なんて危なくて使えないと思う。
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