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セレスタ 帰還編
事後処理 4
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そうマリナが安心して退出しようとしたとき、部屋の扉が吹き飛んだ。
比喩でなく吹き飛んだ扉板がマリナと魔術師長の張った結界に弾かれて床に落ちる。
「…メルヒオール」
怒りを押し殺した声で魔術師長が扉を吹き飛ばした人間の名を呼ぶ。
入口に立っている人間は悪びれた様子もなく、そして挨拶もなく魔術師長の部屋に入って来た。
扉を吹き飛ばした時点で挨拶の有無は問題でない気もする。
中肉中背、明るい茶色の髪に同じく明るい茶色の瞳と、取り立てて変わったところのないように見える彼は王宮魔術師の一人。
平凡に見えるのは容姿のみだというのは王宮で働く誰もが知っている。
そんな変人、メルヒオールは魔術師長の弟子でもあった。
弟子の暴挙に怒りを覚えながらも言っても無駄だと思っているのか、握りしめた拳を叩きつけるのではなく息を吐いて拳を解いた。
魔術師長の様子を気にも留めず部屋に入ってきたメルヒオールの瞳がぎらりと光ったのを見て机の上の魔道具を守る。
伸ばした手が魔法障壁に弾かれたことに顔を顰めたメルヒオールがマリナの方を向いた。
「あなたは触らないでください」
何か言われる前にマリナから注意する。
「相変わらずケチだな」
「なんて言われてもあなたには触らせませんからね」
淡々と返すマリナに子供みたいに唇を尖らせて魔術師長に顔を向ける。
「師長、これ貸してください」
「お前は何を聞いているんだ」
呆れが絶妙に含まれた声にもメルヒオールは反省しない。
所有者を無視した台詞にマリナの目つきが鋭くなっていく。
「嫌です。 その人に触らせるくらいなら自分で検証します」
「だろうな…」
嫌がる理由がわかっている魔術師長は真顔で頷く。
「実験と検証が終わって効果が確かめられた後ならかまいませんけれど、現段階では絶っっ対に嫌です」
加減を知らないメルヒオールが実験に加わったら被害がでかくなる。
そのくせ自分は無傷でけろっとしているのだ。
メルヒオールならこの魔道具で爆発実験をしかねない、それも王宮の中庭とかで。
過去にも似たような事故…、事件?を起こした彼をマリナは全く信用していない。
自分が作った魔道具で大規模災害なんて起こされたら堪らない。たとえ自分が実験に参加していなくても製作者である以上どこかに名前が残る。
睨みつけない程度の強さでメルヒオールを見る。
怒りや憤りなどの感情の揺らぎは相手を喜ばせるだけ、そう知っているマリナは視線に感情を乗せないように気をつけた。
「実験にはフィルを参加させる。 メルヒオール、お前は今やっている研究に注力しろ」
魔術師長の冷静な声が間に割って入る。
決定事項として告げられた言葉に食い下がろうとしたメルヒオールだったが魔術師長の額に浮いた青筋を見て素直に引いた。
彼には絶対に触らせないと改めて言ってくれたので魔道具は預けて帰ることにする。
悲劇を作り出した人間として名前が王国史に乗らないならいいです、と釘を刺すと重々しい表情で肯いてくれた。
師匠にまでこんな顔をさせるほど信用がないってどうなんだろう。
自分の師匠の顔を思い浮かべて一人呟く。
心配はかけてるかもしれないけど、こういう方面での心配はされてないはずだ。
こんな無茶な人間と同じ魔術師という括りなのがとっても嫌だった。
比喩でなく吹き飛んだ扉板がマリナと魔術師長の張った結界に弾かれて床に落ちる。
「…メルヒオール」
怒りを押し殺した声で魔術師長が扉を吹き飛ばした人間の名を呼ぶ。
入口に立っている人間は悪びれた様子もなく、そして挨拶もなく魔術師長の部屋に入って来た。
扉を吹き飛ばした時点で挨拶の有無は問題でない気もする。
中肉中背、明るい茶色の髪に同じく明るい茶色の瞳と、取り立てて変わったところのないように見える彼は王宮魔術師の一人。
平凡に見えるのは容姿のみだというのは王宮で働く誰もが知っている。
そんな変人、メルヒオールは魔術師長の弟子でもあった。
弟子の暴挙に怒りを覚えながらも言っても無駄だと思っているのか、握りしめた拳を叩きつけるのではなく息を吐いて拳を解いた。
魔術師長の様子を気にも留めず部屋に入ってきたメルヒオールの瞳がぎらりと光ったのを見て机の上の魔道具を守る。
伸ばした手が魔法障壁に弾かれたことに顔を顰めたメルヒオールがマリナの方を向いた。
「あなたは触らないでください」
何か言われる前にマリナから注意する。
「相変わらずケチだな」
「なんて言われてもあなたには触らせませんからね」
淡々と返すマリナに子供みたいに唇を尖らせて魔術師長に顔を向ける。
「師長、これ貸してください」
「お前は何を聞いているんだ」
呆れが絶妙に含まれた声にもメルヒオールは反省しない。
所有者を無視した台詞にマリナの目つきが鋭くなっていく。
「嫌です。 その人に触らせるくらいなら自分で検証します」
「だろうな…」
嫌がる理由がわかっている魔術師長は真顔で頷く。
「実験と検証が終わって効果が確かめられた後ならかまいませんけれど、現段階では絶っっ対に嫌です」
加減を知らないメルヒオールが実験に加わったら被害がでかくなる。
そのくせ自分は無傷でけろっとしているのだ。
メルヒオールならこの魔道具で爆発実験をしかねない、それも王宮の中庭とかで。
過去にも似たような事故…、事件?を起こした彼をマリナは全く信用していない。
自分が作った魔道具で大規模災害なんて起こされたら堪らない。たとえ自分が実験に参加していなくても製作者である以上どこかに名前が残る。
睨みつけない程度の強さでメルヒオールを見る。
怒りや憤りなどの感情の揺らぎは相手を喜ばせるだけ、そう知っているマリナは視線に感情を乗せないように気をつけた。
「実験にはフィルを参加させる。 メルヒオール、お前は今やっている研究に注力しろ」
魔術師長の冷静な声が間に割って入る。
決定事項として告げられた言葉に食い下がろうとしたメルヒオールだったが魔術師長の額に浮いた青筋を見て素直に引いた。
彼には絶対に触らせないと改めて言ってくれたので魔道具は預けて帰ることにする。
悲劇を作り出した人間として名前が王国史に乗らないならいいです、と釘を刺すと重々しい表情で肯いてくれた。
師匠にまでこんな顔をさせるほど信用がないってどうなんだろう。
自分の師匠の顔を思い浮かべて一人呟く。
心配はかけてるかもしれないけど、こういう方面での心配はされてないはずだ。
こんな無茶な人間と同じ魔術師という括りなのがとっても嫌だった。
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