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セレスタ 帰還編
事後処理 3
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内務卿と外務卿が揃って退出して、王子は視察の内容を纏めようと執務机に向かう。
早く報告しなさいと内務卿に言われたのでマリナは魔術師長の所へ向かうことにした。
「では私は魔術師長のところへ行ってきます」
「ああ、魔道具のことか。 気をつけて」
王宮内で何に気をつけるのかと反論はしない。
面倒くさい。若干憂鬱な気持ちで執務室を後にした。
魔術師長がいるのは王子の執務室から離れた、王宮の端っこにある。
廊下をひたすら歩いて行く。
誰にも会いませんように、と心の中で念じながら行ったおかげか、魔術師長の部屋に辿り着くまで誰にも会わなかった。
「失礼します」
二度ノックをして扉を開く。
王宮魔術師の部屋ではノックをして返事がなければ開けて入るというルールがある。
研究に没頭していて音に気が付かない者や、没頭しすぎて寝食忘れて倒れている者、実験に失敗して意識のない者などがそれなりの頻度で発生するためだ。
一部の周りに関心を払える魔術師と出入りを許された女官が日に何度か異変が起こっていないか確認をしている。
その『関心を払える一部』である魔術師長はマリナを待っていたようで部屋に入ると立ち上がって出迎えた。
「思ったより早くて良かった」
座りなさいと促されて執務机の脇にある椅子を適当に持って来て座る。
魔術師長は自身の椅子に座り直して、マリナを見た。
「取りあえず見せてくれるか」
言われたとおりに魔道具を執務机の上に出す。
艶のある黒色の木材で作られた大きな机には余計なものは何も乗っていない。
広い机の上に置くとその魔道具の小ささが際立つ。
「これは…、予想を超える大きさだ」
これほどまで小さいとは…、と魔術師長が唸る。
「現時点でわかっている効果は?」
「魔道具の位置情報の補足と魔道具を基点とした周囲の探査及び魔法の発動を確認しています」
レグルスでマリナが使ったのはその三つの機能だけだ。
魔道具で王子の位置を確認して、そこがどういった場所か調べて魔法の光で地図を描く。
言葉にすると単純で大したことではないように聞こえる。
けれど使い方によってはとても危険な物になってしまう。
その危険性をわかっているから魔術師長もこれほど深刻な顔をしているのだ。
「発動できる魔法の種類は確認していますか?」
「いえ、ただ使った感触ではそれなりの規模の魔法も使えると感じました」
この魔道具を目印に爆発を起こそうと思ったら多分出来るし、今気が付いたけどこれを起点に洪水を起こすことも出来るんじゃないか。
(うわ、気が付いてよかった。 気づかなかったら危険を軽視して使いたがる人間が出るわ)
思いついたことを告げると更に険しい顔になる。
「そこまでですか…!」
「ええ、使える人間は限られていますが危険性に違いはないでしょう」
まず魔道具を補足し離れた場所に魔力を送るのも難しいが、問題はその後、狙った魔法を発動させそれを制御するのがとても難しい。
今の段階では暴発したときにどちらに影響があるのかわからない。魔道具の側なのか使った人間の方なのか、あるいは両方か。
実験と検証を繰り返して調べていくしかない。
魔術師長が預かって効果を調べていくことに決まった。
危険度が量れていないのでわかるまで他の人間には触らせないと言う。
確約してくれたので一安心かな。
暴走しがちな王宮魔術師たちもジグ様なら抑えてくれるだろう。
早く報告しなさいと内務卿に言われたのでマリナは魔術師長の所へ向かうことにした。
「では私は魔術師長のところへ行ってきます」
「ああ、魔道具のことか。 気をつけて」
王宮内で何に気をつけるのかと反論はしない。
面倒くさい。若干憂鬱な気持ちで執務室を後にした。
魔術師長がいるのは王子の執務室から離れた、王宮の端っこにある。
廊下をひたすら歩いて行く。
誰にも会いませんように、と心の中で念じながら行ったおかげか、魔術師長の部屋に辿り着くまで誰にも会わなかった。
「失礼します」
二度ノックをして扉を開く。
王宮魔術師の部屋ではノックをして返事がなければ開けて入るというルールがある。
研究に没頭していて音に気が付かない者や、没頭しすぎて寝食忘れて倒れている者、実験に失敗して意識のない者などがそれなりの頻度で発生するためだ。
一部の周りに関心を払える魔術師と出入りを許された女官が日に何度か異変が起こっていないか確認をしている。
その『関心を払える一部』である魔術師長はマリナを待っていたようで部屋に入ると立ち上がって出迎えた。
「思ったより早くて良かった」
座りなさいと促されて執務机の脇にある椅子を適当に持って来て座る。
魔術師長は自身の椅子に座り直して、マリナを見た。
「取りあえず見せてくれるか」
言われたとおりに魔道具を執務机の上に出す。
艶のある黒色の木材で作られた大きな机には余計なものは何も乗っていない。
広い机の上に置くとその魔道具の小ささが際立つ。
「これは…、予想を超える大きさだ」
これほどまで小さいとは…、と魔術師長が唸る。
「現時点でわかっている効果は?」
「魔道具の位置情報の補足と魔道具を基点とした周囲の探査及び魔法の発動を確認しています」
レグルスでマリナが使ったのはその三つの機能だけだ。
魔道具で王子の位置を確認して、そこがどういった場所か調べて魔法の光で地図を描く。
言葉にすると単純で大したことではないように聞こえる。
けれど使い方によってはとても危険な物になってしまう。
その危険性をわかっているから魔術師長もこれほど深刻な顔をしているのだ。
「発動できる魔法の種類は確認していますか?」
「いえ、ただ使った感触ではそれなりの規模の魔法も使えると感じました」
この魔道具を目印に爆発を起こそうと思ったら多分出来るし、今気が付いたけどこれを起点に洪水を起こすことも出来るんじゃないか。
(うわ、気が付いてよかった。 気づかなかったら危険を軽視して使いたがる人間が出るわ)
思いついたことを告げると更に険しい顔になる。
「そこまでですか…!」
「ええ、使える人間は限られていますが危険性に違いはないでしょう」
まず魔道具を補足し離れた場所に魔力を送るのも難しいが、問題はその後、狙った魔法を発動させそれを制御するのがとても難しい。
今の段階では暴発したときにどちらに影響があるのかわからない。魔道具の側なのか使った人間の方なのか、あるいは両方か。
実験と検証を繰り返して調べていくしかない。
魔術師長が預かって効果を調べていくことに決まった。
危険度が量れていないのでわかるまで他の人間には触らせないと言う。
確約してくれたので一安心かな。
暴走しがちな王宮魔術師たちもジグ様なら抑えてくれるだろう。
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