双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

文字の大きさ
上 下
128 / 368
セレスタ 帰還編

事後処理 2

しおりを挟む
「さて、この度の視察でマールアの間者と接触したと聞きましたが、詳しく説明願えますか」
 執務室に入るなり外務卿が核心を問う。
「その様子だと先にある程度は話を聞いていそうだな」
「ええ、多少は」
 王子の言葉に内務卿、外務卿が揃って首肯する。
「まずは結果から話そうか…。
 マールアの間者と見られる者だが、全部で4人。
 今はレグルス守備騎士団にて拘束されている」
 すでに捕らえられていると聞いても二人の表情は厳しい。
「犯人たちは全てレグルス守備騎士団が捕らえており、私たちは姿を見せてはいない」
 そこまで言うとようやく二人の表情にも安堵が見える。
 外務卿はマールアとの外交という立場から、内務卿はセレスタの防衛という観点からこの事件を危険視していた。
「では、王子や近衛騎士たちの姿は見られていないと」
「ああ、私は勿論のこと近衛騎士たちも捕縛には関わらせていない」
 危険はすべて排除して行動していたと王子が答える。
「では、マリナ殿は?」
 追跡していたマリナの姿は見られているのではないか、と外務卿は危惧していた。
「追跡は技師の持っていた魔道具を頼りに一本以上離れた道から追っていたので気づかれてはないと思います」
 マリナは自分の見解を述べる。
「彼らが気が付いていたのなら、レグルスを出た際に待機などせず、即座に国境に向けて移動したでしょう。
 途中王子に連絡を取るため魔法を使った時も彼らは全く気づきませんでしたし、魔法や魔力に関して全くの無知だと言わざるを得ません」
 多少なりとも敏感な人間ならマリナが王子たちに地図を見せた時に気が付いてないとおかしい。
 また、魔道具の反応がなかったことから、彼らが魔力を遮断したり魔力を感知する機器すら持っていないのがわかった。
「なるほど。 街の外から中まで届くような魔法を行使したのに気付かないなら相当だな」
 魔法を使える使えないは別として、魔法が使われているような気配というのは、少し学んだ者ならなんとなくわかるものだ。
 街中にはそれこそ魔道具が溢れているので普段意識はしなくても、あんな人里離れた場所なら普通気づく。
「ええ、捕縛の際には突入を楽にするために一つだけ魔法を使いましたけれど、彼らが私の干渉に気付くことはないでしょう」
 あの魔法が魔術師によるものか魔道具によるものかなんてわかるわけがない。
 レグルス守備騎士団にも魔術師はいるし、光を発する魔道具だってある。
「技師が探知が得意だと言うので辺り一帯を探知してもらいましたが、捕らえられた男たち以外に隠れて見ているような人間はいませんでした」
 連絡要員が隠れている可能性も考えていた。杞憂でよかったけれど。
 技師の能力のおかげでマリナは大分楽をさせてもらった。
「そこまで確認したのか…」
 外務卿が感嘆なのか呆れなのかという声で呟く。
 取りこぼしはしたくなかったので。
「やれやれ、ならば私の出る幕はありませんな」
 外務卿がほっとした顔になる。
 場合によっては、マールア相手に交渉内容を詰めなければならなかったのだから、大変だ。
 弱腰になんてなれるわけがないし、強硬な態度を取り過ぎてもいけない。
 神経を使う仕事だと思う。
 出番が無くなってよかったと心から思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【書籍化・3/7取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない

gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

人体実験サークル

狼姿の化猫ゆっと
恋愛
人間に対する興味や好奇心が強い人達、ようこそ。ここは『人体実験サークル』です。お互いに実験し合って自由に過ごしましょう。 《注意事項》 ・同意無しで相手の心身を傷つけてはならない ・散らかしたり汚したら片付けと掃除をする [SM要素満載となっております。閲覧にはご注意ください。SとMであり、男と女ではありません。TL・BL・GL関係なしです。 ストーリー編以外はM視点とS視点の両方を載せています。 プロローグ以外はほぼフィクションです。あとがきもお楽しみください。]

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...