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セレスタ 帰還編
救出劇のその後で 2
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食事が一段落したところで王子が話し始める。
「さて、みんなも知ってのとおり、今回の事件の背後にはマールアがいた」
全員が神妙な顔で頷く。
その意味がわからない者はこの場にはいない。
「マリナ」
「はい」
呼ばれて立ち上がる。片されたテーブルの上には今回の動きをまとめた簡略図が置いてある。
「男たちはマールアの工作員だと思われます」
詳しい尋問はこれからになるけれど、男たちがマールアの人間だというのは本人たちも認めている。
技師の証言もある以上、彼らは罪から逃れられない。
男たちはセレスタの法に則って裁かれることになるだろう。
現在技師はレグルス守備騎士団で保護されている。
無事王子の下で働くことも了承してもらったので一安心だ。
といっても今すぐ工房を畳んで来てもらうのは無理な話なので、それまでレグルスの騎士が警護してくれることになった。
かなり興味を持っていたので可能な限り急いで王都に来るだろう。
こちらで新しい工房を用意するつもりだったが、彼は王都に工房を構えることよりも王宮内で研究することを選んだ。
魔力の制御が苦手だと言っていたので補助をしてくれる魔術師がいることも王宮勤めを選択した理由の一つだと思う。
「男たちが入国したと思われるのがこちらです」
身元照会をされたときに怪しまれない為だろう、彼らは正規の手順で入国していた。
「ソルガイア経由で入国したことがここからわかっています」
ソルガイアはその特殊な事情から国境警備の権限が移譲することもあり、彼らはその隙を突いてソルガイアを抜けることも出来たはず。
それをしなかったのは、セレスタに追及されることを避けるためと考えられた。
「マールアが今一番関心を持っているのはセレスタでは当たり前となっている技術だと考えられます」
例えば灯りの魔道具や火を出す魔道具。生活の中に当たり前に根付いている技術をマールアは欲しがっている。
保管庫なども国土の広いマールアでは重宝されるだろう。
「そういった物ならばマールア国内で広がってもセレスタや他国に怪しまれにくく、手にすることが容易だからです」
技術は一度伝わったら勝手に広がっていく。
奪われたら取り返すのは不可能だろう。
セレスタもそれが正当なものなら何も言わない。
他国が技術を向上させている間に、セレスタはもっと高みを目指しているからだ。
魔法大国セレスタ。
その技術は魔法においても魔道具においても、名に恥じぬ発展を続けている。
奪われるわけにはいかなかった。
慎重に考えられた計画なのに準備が不足していたのは、魔法に対するマールアの認識が他国と違っていた為。
今回はそれに助けられたが、次回もこう上手くいくとは限らない。
もっと慎重に巧妙に入り込んで来るだろう。
その時も未然に防がなければならない。
王子が真剣な瞳でレグルスの騎士たちに語りかける。
「マールアが一番入り込みやすいのがこの街だ」
近隣諸国の中では一番隙の多いソルガイアを通ってマールアはこの街を狙う。
可能性の高い危険として彼らも普段から意識している。
しかし王子から直接与えられる言葉は彼らの認識を更に変えるだろう。
「レグルス守備騎士団の重要さは単に国境に近い大都市というだけではない。
いち早く危険に気づき、警戒を伝えるのがそなたたちレグルス守備騎士が担う最重要任務だ」
一人一人の目を見ながら語る王子の姿にレグルスの騎士たちは表情を引き締めていた。
その胸の内が感動に震えているのがマリナにはよくわかる。
自分が同じように感じたからだけではなく、彼らの高揚する魔力が肌で感じられるからだ。
同じように近衛騎士たちやヴォルフは燃え上がる闘志や忠誠心を感じているだろう。
瞳が煌いているのは感動に震える心が面に見えているから。
王子の演説に打ち震えているのは我らとて同じことだと近衛騎士たちからも同様の高揚感が伝わってきた。
「さて、みんなも知ってのとおり、今回の事件の背後にはマールアがいた」
全員が神妙な顔で頷く。
その意味がわからない者はこの場にはいない。
「マリナ」
「はい」
呼ばれて立ち上がる。片されたテーブルの上には今回の動きをまとめた簡略図が置いてある。
「男たちはマールアの工作員だと思われます」
詳しい尋問はこれからになるけれど、男たちがマールアの人間だというのは本人たちも認めている。
技師の証言もある以上、彼らは罪から逃れられない。
男たちはセレスタの法に則って裁かれることになるだろう。
現在技師はレグルス守備騎士団で保護されている。
無事王子の下で働くことも了承してもらったので一安心だ。
といっても今すぐ工房を畳んで来てもらうのは無理な話なので、それまでレグルスの騎士が警護してくれることになった。
かなり興味を持っていたので可能な限り急いで王都に来るだろう。
こちらで新しい工房を用意するつもりだったが、彼は王都に工房を構えることよりも王宮内で研究することを選んだ。
魔力の制御が苦手だと言っていたので補助をしてくれる魔術師がいることも王宮勤めを選択した理由の一つだと思う。
「男たちが入国したと思われるのがこちらです」
身元照会をされたときに怪しまれない為だろう、彼らは正規の手順で入国していた。
「ソルガイア経由で入国したことがここからわかっています」
ソルガイアはその特殊な事情から国境警備の権限が移譲することもあり、彼らはその隙を突いてソルガイアを抜けることも出来たはず。
それをしなかったのは、セレスタに追及されることを避けるためと考えられた。
「マールアが今一番関心を持っているのはセレスタでは当たり前となっている技術だと考えられます」
例えば灯りの魔道具や火を出す魔道具。生活の中に当たり前に根付いている技術をマールアは欲しがっている。
保管庫なども国土の広いマールアでは重宝されるだろう。
「そういった物ならばマールア国内で広がってもセレスタや他国に怪しまれにくく、手にすることが容易だからです」
技術は一度伝わったら勝手に広がっていく。
奪われたら取り返すのは不可能だろう。
セレスタもそれが正当なものなら何も言わない。
他国が技術を向上させている間に、セレスタはもっと高みを目指しているからだ。
魔法大国セレスタ。
その技術は魔法においても魔道具においても、名に恥じぬ発展を続けている。
奪われるわけにはいかなかった。
慎重に考えられた計画なのに準備が不足していたのは、魔法に対するマールアの認識が他国と違っていた為。
今回はそれに助けられたが、次回もこう上手くいくとは限らない。
もっと慎重に巧妙に入り込んで来るだろう。
その時も未然に防がなければならない。
王子が真剣な瞳でレグルスの騎士たちに語りかける。
「マールアが一番入り込みやすいのがこの街だ」
近隣諸国の中では一番隙の多いソルガイアを通ってマールアはこの街を狙う。
可能性の高い危険として彼らも普段から意識している。
しかし王子から直接与えられる言葉は彼らの認識を更に変えるだろう。
「レグルス守備騎士団の重要さは単に国境に近い大都市というだけではない。
いち早く危険に気づき、警戒を伝えるのがそなたたちレグルス守備騎士が担う最重要任務だ」
一人一人の目を見ながら語る王子の姿にレグルスの騎士たちは表情を引き締めていた。
その胸の内が感動に震えているのがマリナにはよくわかる。
自分が同じように感じたからだけではなく、彼らの高揚する魔力が肌で感じられるからだ。
同じように近衛騎士たちやヴォルフは燃え上がる闘志や忠誠心を感じているだろう。
瞳が煌いているのは感動に震える心が面に見えているから。
王子の演説に打ち震えているのは我らとて同じことだと近衛騎士たちからも同様の高揚感が伝わってきた。
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