双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 帰還編

救出劇のその後で 1

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 伯爵邸でマリナたちは食事をしながら報告会をしていた。
 給仕も断りテーブル一杯に料理が並ぶ状態は壮観だ。
 普通貴族の食事は給仕が付いて一品ずつ運ばれてくるものだけど、みんな何も言わずに食べている。
 ジークさんたちも意外なことに戸惑うことなく自分で料理を取り食べていた。
 まあ、王宮の食堂では似たようなものだし、近衛といっても騎士だから慣れているのかもしれない。
 生粋の貴族でも騎士になってからは野営なんかも経験しているだろうし。
 それでも普段は普通の貴族と同じ食事を好むかと思っていた。
 レグルスの騎士たちはこれが当たり前なのか好き勝手に料理を皿に取り堪能している。
 伯爵邸の使用人たちは突然人数が増えた夕食の支度にも見事に対応していた。
 通常伯爵邸で並ぶことのない量の食事は種類も多く好きな物が取れるのでうれしい。
 戸惑っただろうに完璧な仕事ぶりに感嘆を覚える。
 …一番戸惑ったのは王子がここで一緒に食事をすることだろうけれど。
 にこにこと笑いながら自分で皿を持ち料理をよそう王子。
 王宮なら許されない食事風景をとても楽しんでいるようだった。
 レグルスの騎士たちも恐縮しながらも王子と同じ料理を楽しんでいる。
 慣れてきた者は王子に料理の説明をしていた。
「これはこの辺りで良く食べますけど、家ごとに中身や味付けが違っておもしろいんですよ」
 王子が食べているのはパイを小振りにしたような料理だ。
 かぶりついたら二口で終わりそうな物を綺麗にナイフで割って食べている。
「ほう、ここにあるだけでも数種類あるが、どれも美味い。
 家ごとに違いがあるのなら差し入れをもらった時などはさぞ盛り上がるだろうな」
「そうなんですよ、美味いやつがあったら主婦同士はレシピを交換したりしてます」
 レシピを教えてほしいと言われる人は料理上手の証として認められ、妙齢の女性ならたくさんの求婚が舞い込むらしい。
 最初に王子が普段通りで良いといったおかげか、ぎこちなさはあってもレグルスの騎士たちは王子と普通に話している。
 貴重な機会を楽しんでいるようで何よりだと思っていると横から皿に乗った料理を差し出される。
「これも食べろ」
「…あっちの方が良い」
 お腹は空いていたけど、空き過ぎてサラダや卵料理などの軽い物ばかり食べていたら、見かねたのかヴォルフが肉を差し出してきた。
 差し出された分厚いステーキでなくテーブルにある煮込まれた肉料理を指して言うとヴォルフが取ってくれる。
「脂身ついてないやつが良い」
 注文を付けると好き嫌いするなと言いながらマリナの希望通りの物を取り分けて渡してくれた。
 柔らかくなるまで煮込まれた肉を味わっているとヴォルフが聞いてくる。
「お前は肉が嫌いなわけじゃないんだよな?」
「? ええ」
 赤身肉は好きだ。
 ヴォルフはマリナが断ったステーキを食べながら首を傾げている。
「何でこれは食べなかったんだ?」
「脂身は好きじゃない。 あと鳥の皮の部分とかも」
 ステーキはおいしそうだったけれどでっかい脂身も付いていてちょっと手に取る気が無くなった。
 脂身部分を見ていたら感触を思い出してぶるりと震えた。どうしてもムリだ。
 嫌いな部分だけ残すなんてそんな行儀の悪いことは出来ないし。
「そうだったのか、肉を食べたり食べなかったりしてるから何故なのかと思った」
「感触がちょっとね…」
 頑張って食べられないことはない。
 感触を気にしないように呑み込めば何とか…。嫌だけど。
 多分ヴォルフはマリナの好みなんて知らないだろうから遠慮したりせずに正直に言うことにしている。
 料理を楽しみながら色んな人と話をする。今さらだけどこれは報告会というより慰労会なんじゃないか…?そう思ったけれどお腹を満たすのに集中することにした。
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