双翼の魔女は異世界で…！？

セレスタ 帰還編

視察 ６

　侯爵が出て行ったのを確認して部屋を見渡す。
　王子やマリナたちと一緒に来て荷解きをしていた騎士、先行隊として先にレグルスに来ていた騎士、みんな揃っている。
　関係者しかいなくなったのでストレートに聞く。
「で、何があったんですか」
　心なしかヴォルフを囲む位置にみんなが立ってる気がする。
　でも近衛のみんながヴォルフに怒ることなんて無いと思うんだけど…。
　それぞれの顔を見回していく。
　目は合うものの誰も口を開こうとはしない。ちょっと街に行った数時間の間に何があったんだか。
　その中の一人の顔を見て、手に持った菓子の存在を思い出した。
「ギュンターさん、言ってたお菓子買ってきましたよ」
　レグルス出身のギュンターさんが、レグルスに来るなら是非食べてほしいと言っていたお菓子。
　実はとっても楽しみにしていた。
　菓子箱を振って見せると部屋の少し空気が緩む。
「取りあえずお茶入れるので、みんなで食べましょう」
　何か食べれば少しは空気も軽くなるかもしれない。
　それに歩き回ったら喉が渇いた。
　マリナの言葉を合図に何人かの騎士が動き出す。
　マリナが入れたお茶をギュンターさんとディルクさんがテーブルに運んでくれる。
　伯爵邸の居間は広いけれど流石に全員は座れない。
　それ以前に護衛全員が座って寛ぐわけにはいかないので半分は立ったままカップを傾けている。
「それで？　何があったんでしょうか」
　ソファに座ってさっきと同じことを聞く。
　視線が一斉にこちらに向く。…正確に言うと隣に座ったヴォルフに集まっていた。
「何があったの？」
　横目でヴォルフを見ながら聞く。
　ギュンターさんおすすめのお菓子は確かにおいしかった。
　ヴォルフが口を開かないのでお菓子に手を伸ばす。
　一口で入らない大きさのお菓子を二つに割り、口に入れる。
　さくさくとした感触が心地いい。
　口からお菓子がなくなって、今度はお茶を飲む。
　さっぱりした味わいのお茶を嚥下して残り半分を食べる。
　お茶とも相性がいい。
　帰る前にもう一回買いに行こう。
　名物と言われるだけあって本当においしかった。