双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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セレスタ 帰還編

視察 3

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 二人―――、侯爵とマリナが出て行った後、ヴォルフの機嫌は目に見えて悪化した。
「ヴォルフ、何をそんなに気にしているんだ?」
 リヒャルトが躊躇いがちに聞く。
「わからん」
「侯爵とマリナが一緒にいるのが気に入らないのか?」
 問われても自分で把握していないものを説明は出来ないだろう。
 マリナを値踏みされるのも気に入らないのかもしれないが、それはしかたないことだ。
「普段何も言ってこないくせに今回に限って突然来たり視察にまでついて来るというのが解せない」
 うーん。確かに普段はコンタクトを全く取っていないようだけど、それは…。
「ヴォルフが何も説明しなかったのが悪いんじゃないか?」
 事情を知っているリヒャルトはストレートに苦言を呈する。
「全くそういった話の無い息子にに婚約者が出来たなんて噂が聞こえたら真偽を確かめたくなるのは当然だ。
 ヴォルフが何にも言わなかったなら却って気になったと思うし」
 相手がどういう人物なのか調べるのは貴族なら当たり前だと言われている。
「それに、弟の結婚式には一緒に出席するつもりなんだろ?
 そうしたら侯爵としてもマリナがどういった子なのか知っておかないと呼べないだろう」
 ヴォルフの表情を見てリヒャルトが呆れた顔になった。
 私も双翼自分の部下たちの関係が不安になってきた。
「何も考えてなかった、…まさか忘れてたわけじゃないよな」
 いくらなんでも、と言えないところがヴォルフだ。
「そりゃお前が悪い。 マリナは流石に考えてたと思うけど、お前が言わなきゃマリナだってどうも出来ないだろう」
 呼ばれてもいないのに参加は出来ない。ふたりの関係を考えたら揃って結婚式に参加するのが一番問題がないのに、考えてないなんて。それは侯爵も焦る。
 そういえばもうすぐだったな、みたいな顔をしているヴォルフに普段は穏やかなリヒャルトも段々顔を険しくしていた。
「後二月もないんだぞ? 女性だったらドレスとか装飾品の用意とか、本当ならもっと前から準備をしているものなんだ!」
 ヴォルフは騎士の正装で良いだろうけれど、さすがにマリナはそれではね…。
 思わずため息が出る。
「ちゃんと聞かなかった私も悪いけれど、自分から話さないといけないよ。
 休みの調整とかも含めてきちんと話をしなさい」
 ふたりが休むなら近衛の人間とも連携が必要になってくる。
「ちゃんと報告しろよ?」
 心配だという顔を隠さないでリヒャルトが付け足す。
 主役でなくても女性には相応の準備というものがある。
 あまり口を挿むのもいけないと思っていたが、そうも言ってられないのかもしれない。
 リヒャルトは確実に進捗を気にするだろう。
 マリナに聞けば早くても、これはヴォルフが処理することだった。
 呆れ顔のリヒャルト、帰ってきた騎士たちもこれを聞いたら黙ってはいられないだろうな。
 特に結婚している者や家族に姉妹がいる者は、どれだけ準備に手が掛けるかを知っているだけに、他人事だと思っても口を出すだろう。
 借りている屋敷がにぎやかになりそうな予感にため息を零すだけだった。
 それが呆れや疲れだけではなく、関われるという楽しさが少し入っていたのは秘密だ。
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