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セレスタ 帰還編
災い転じて 4
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「シャルロッテ様は本当に真面目な方ですねぇ」
融通が利かないともいいますけれど、と言うマリナ様の声は静かで揶揄するような響きもない。
どうしてそんな穏やかに語りかけるのです。
「償ってもらうほどのことでもない、と言っても納得してくれないでしょうか」
困らせていることがわかっても自分が許せない。
マリナ様が深いため息を吐く。
呆れか怒りか、いずれによるものでもシャルロッテは受け止めなければいけない。
「シャルロッテ様、顔を上げてください」
静かな声にゆっくりと顔を上げる。
先程までの温かみのある表情を消し去りシャルロッテを見据えていた。
マリナ様が無表情で口を開く。
「本当にいいのかしら?」
がらりと口調を変えて問いかける。
意味がわからなくてマリナ様の顔を見返す。
理解できていないシャルロッテにもう一度同じ言葉を掛ける。
「あなたを処分するなら一緒にいたフロレンティーナ・クルツ伯爵令嬢とアリッサ・クライン子爵令嬢にも同じだけの罰を与えないといけないのだけれど」
上げられた名前に慌てて反論しようとした。
「彼女たちは…!」
言い訳をしようとしたシャルロッテの言葉をばっさり切ってマリナ様が続ける。
「関係ないとは言えないわ。
どう言い繕おうとも彼女たちが私に対して悪意を向けていたことは事実。
そしてあなたが私に対して暴力を振るおうとしたことも事実よ。
彼女たちにも私を害する意志があったと言えるわ」
マリナ様の言葉を否定できない。
多かれ少なかれあの時私たちはマリナ様に悪意を抱いていた。
「双翼直々に罰せられた令嬢は周りからどう扱われるかしらね?
ご家族やお友達は変わらず接してくれるかしら」
笑みを含んだ声でマリナ様がシャルロッテを追い詰める。
友人にも同じ重みで罪を背負わせる気なのか、と。
「……」
「どうかしら?」
それでも罰されたいの?とマリナ様が問う。
シャルロッテの答えは決まっていた。
「マリナ様、失礼を承知で言いますが、そのような脅しで私が言葉を収めるとお思いなのですか?
そう考えていらっしゃるのなら答えは否と言っておきますわ!」
意表を突かれたというようにマリナ様が目を瞬く。
感情の揺らぎがそれだけなのに感嘆と悔しさを同時に感じる。
無表情を保ったままシャルロッテの言葉の意味を見透かすように瞳をじっと見つめている。
「マリナ様は私に対して言いましたわ、感情的になってしまっただけだと。
私物を壊されてつい手を出してしまったのは私だけですわ。 彼女たちは何もしていません」
あの場で起こったことは扇を壊されて感情的になったシャルロッテがマリナ様に手を上げようとした、それだけ。
そうだとマリナ様が言ったのです。
挑むようにマリナ様を見つめる。
強気に吐いた言葉とは裏腹に心臓が緊張に痛む。
「それで済むと思っているの?」
マリナ様の冷眼はそれだけで呼吸が止まりそうな迫力を持っている。
言葉が止まらないように手を握りしめて意思を強く持つ。
引く気は、ない。
「ええ。 狼藉を働いた私を止めなかったのも全く予想できない行動だったからですわ!
それこそが彼女たちが私と結託していなかった証明です!!」
言い切ったシャルロッテを無感情な目で見つめるマリナ様。
一拍――。二拍―――。
長く感じられた時間は唐突に終わる
シャルロッテを見ていたマリナ様がふっと目元を和らげた。
「シャルロッテ様は変な方ですね」
心外だと言うのもおかしな気がした。確かに罰してほしいという望みはおかしいのでしょう。
「他のお二方も、罰しようと思ったら出来るのですよ?」
それはそうでしょう。シャルロッテの甘い考えなんてマリナ様がその気になればいとも簡単につぶされてしまうと思う。
「でも、そうはなさらないのでしょう?」
「ええ、意味のないことですから」
フローラたちを罰したところでマリナ様に得るものはない。
寧ろ他の貴族たちから批難の目を向けられるだけ。
シャルロッテだけなら直接危害を加えようとしたことから正当な処分と見られる。
おかしなことにほっとした。
「ではシャルロッテ様の望みどおりに罰を与えましょうか」
楽しそうにマリナ様が言う。
言葉を待っているとマリナ様が口元に弧を描いてシャルロッテを見た。
融通が利かないともいいますけれど、と言うマリナ様の声は静かで揶揄するような響きもない。
どうしてそんな穏やかに語りかけるのです。
「償ってもらうほどのことでもない、と言っても納得してくれないでしょうか」
困らせていることがわかっても自分が許せない。
マリナ様が深いため息を吐く。
呆れか怒りか、いずれによるものでもシャルロッテは受け止めなければいけない。
「シャルロッテ様、顔を上げてください」
静かな声にゆっくりと顔を上げる。
先程までの温かみのある表情を消し去りシャルロッテを見据えていた。
マリナ様が無表情で口を開く。
「本当にいいのかしら?」
がらりと口調を変えて問いかける。
意味がわからなくてマリナ様の顔を見返す。
理解できていないシャルロッテにもう一度同じ言葉を掛ける。
「あなたを処分するなら一緒にいたフロレンティーナ・クルツ伯爵令嬢とアリッサ・クライン子爵令嬢にも同じだけの罰を与えないといけないのだけれど」
上げられた名前に慌てて反論しようとした。
「彼女たちは…!」
言い訳をしようとしたシャルロッテの言葉をばっさり切ってマリナ様が続ける。
「関係ないとは言えないわ。
どう言い繕おうとも彼女たちが私に対して悪意を向けていたことは事実。
そしてあなたが私に対して暴力を振るおうとしたことも事実よ。
彼女たちにも私を害する意志があったと言えるわ」
マリナ様の言葉を否定できない。
多かれ少なかれあの時私たちはマリナ様に悪意を抱いていた。
「双翼直々に罰せられた令嬢は周りからどう扱われるかしらね?
ご家族やお友達は変わらず接してくれるかしら」
笑みを含んだ声でマリナ様がシャルロッテを追い詰める。
友人にも同じ重みで罪を背負わせる気なのか、と。
「……」
「どうかしら?」
それでも罰されたいの?とマリナ様が問う。
シャルロッテの答えは決まっていた。
「マリナ様、失礼を承知で言いますが、そのような脅しで私が言葉を収めるとお思いなのですか?
そう考えていらっしゃるのなら答えは否と言っておきますわ!」
意表を突かれたというようにマリナ様が目を瞬く。
感情の揺らぎがそれだけなのに感嘆と悔しさを同時に感じる。
無表情を保ったままシャルロッテの言葉の意味を見透かすように瞳をじっと見つめている。
「マリナ様は私に対して言いましたわ、感情的になってしまっただけだと。
私物を壊されてつい手を出してしまったのは私だけですわ。 彼女たちは何もしていません」
あの場で起こったことは扇を壊されて感情的になったシャルロッテがマリナ様に手を上げようとした、それだけ。
そうだとマリナ様が言ったのです。
挑むようにマリナ様を見つめる。
強気に吐いた言葉とは裏腹に心臓が緊張に痛む。
「それで済むと思っているの?」
マリナ様の冷眼はそれだけで呼吸が止まりそうな迫力を持っている。
言葉が止まらないように手を握りしめて意思を強く持つ。
引く気は、ない。
「ええ。 狼藉を働いた私を止めなかったのも全く予想できない行動だったからですわ!
それこそが彼女たちが私と結託していなかった証明です!!」
言い切ったシャルロッテを無感情な目で見つめるマリナ様。
一拍――。二拍―――。
長く感じられた時間は唐突に終わる
シャルロッテを見ていたマリナ様がふっと目元を和らげた。
「シャルロッテ様は変な方ですね」
心外だと言うのもおかしな気がした。確かに罰してほしいという望みはおかしいのでしょう。
「他のお二方も、罰しようと思ったら出来るのですよ?」
それはそうでしょう。シャルロッテの甘い考えなんてマリナ様がその気になればいとも簡単につぶされてしまうと思う。
「でも、そうはなさらないのでしょう?」
「ええ、意味のないことですから」
フローラたちを罰したところでマリナ様に得るものはない。
寧ろ他の貴族たちから批難の目を向けられるだけ。
シャルロッテだけなら直接危害を加えようとしたことから正当な処分と見られる。
おかしなことにほっとした。
「ではシャルロッテ様の望みどおりに罰を与えましょうか」
楽しそうにマリナ様が言う。
言葉を待っているとマリナ様が口元に弧を描いてシャルロッテを見た。
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