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セレスタ 帰還編
甘い時間の作り方 初級編 4
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執務室の扉を叩く音でそれぞれが手を止める。
「そろそろ休憩にしようか」
主の声に従ってマリナは書類を片付けヴォルフは扉を開けてお茶の支度をしに来た女官を中に入れる。
最近はこうして休憩を定期的に挟み三人で話をするようにしていた。
六年も一緒にいて意思の疎通が出来ていなかった反省を踏まえて全員で決めたのだ。
「では、お茶を入れますね」
女官が準備した茶器を開けてお茶を入れる。
三人のお茶会でお茶を入れるのはマリナの役目だった。
そういえば、と王子が立ち上がる。
「この前もらった菓子があるから取ってこよう」
自ら隣室へお茶菓子を取りに行く。命じられればマリナもヴォルフも動くのに。
気安い態度は信頼の証なのかもしれない。
「ヴォルフ、そこの本どけてくれる?」
資料として置いてある判例集を指す。執務机に本を移してヴォルフはソファに座り込んだ。
「目が疲れた」
眉間を揉みながらヴォルフが言う。今までしなかったことをしているから疲れるのは当たり前かもしれないけど。
「黙って立ってる方が疲れない?」
前みたいに王子が執務をしている間ずっと直立不動で警戒している方が疲れると思う。
警備に立っている近衛の人とかはすごい。マリナには出来ない。
「立ってるほうが楽だ。 それにやたらと小さくて癖のある字だったから疲れただけだ」
ヴォルフは本当に辛そうだ。この後も書類仕事は続くのに。
茶器を置いてソファの後ろに回る。
「少しだけ休めるといいよ」
上を向かせて目を塞ぐ。
何にも見ないでリラックスすれば多少は楽になると思う。
ソファの背に肘を乗せて両手でヴォルフの目を覆い隠してみた。
手に帯びた魔力でヴォルフを癒す。
「冷たいな」
ひんやりとした手の感触にヴォルフが息を吐く。
目を覆うマリナの手にヴォルフが手を重ねられる。
「ヴォルフの手は熱いくらいね」
運動した後でもないのに熱を持った手。そういえば犬になっていたときも体温が高かった。
「ありがとう、もう大丈夫だ」
ヴォルフの声に従って手を下ろそうとする。
「マリナ」
離れようとした手を掴まれてヴォルフの目を見返す。
引き寄せた手にヴォルフが口を寄せる、瞬きも出来ないでいると手首に口づけを落とされた。
「…っ!」
落とされた感触にびくりと身体が震える。
そして……。
《……》
「…今のはヴォルフが悪いと思う」
いきなりの接触に驚いたマリナの前にはまたしても黒犬がいる。
手を取られるまでは平気だったのだからマリナのせいではないと思いたい。
手を振ってヴォルフを元の姿に戻す。
「……」
無表情に怒っているヴォルフを困った顔で見上げる。
そうして見つめ合っていると隣の部屋から王子が戻ってきた。
「お待たせ、これが最近のおすすめだ…」
マリナとヴォルフの間にある空気に気が付いた王子が、何かあったのかと不安気な目を向ける。
「何かはありましたけれど王子が心配するようなことはありませんよ」
マリナの返事を聞いてヴォルフの方を伺う。
「ええ、王子が心配するようなことは、何も」
ヴォルフとマリナ二人に否定されて王子は諦めたように肩を落とす。
「二人がそう言うなら深くは聞かないが…、何かあったらすぐに言うように」
「はい」
頭を下げた時に床に指輪が落ちているのが目に入る。
ヴォルフが身に着けていた指輪が絨毯の上に落ちていた。
変化させてしまった時に落ちたんだろう。
指輪を王子に見えないようにヴォルフに返す。
落ちたことに気が付いていなかったようでわずかに目を見開いてヴォルフは指輪を嵌め直した。
「そろそろ休憩にしようか」
主の声に従ってマリナは書類を片付けヴォルフは扉を開けてお茶の支度をしに来た女官を中に入れる。
最近はこうして休憩を定期的に挟み三人で話をするようにしていた。
六年も一緒にいて意思の疎通が出来ていなかった反省を踏まえて全員で決めたのだ。
「では、お茶を入れますね」
女官が準備した茶器を開けてお茶を入れる。
三人のお茶会でお茶を入れるのはマリナの役目だった。
そういえば、と王子が立ち上がる。
「この前もらった菓子があるから取ってこよう」
自ら隣室へお茶菓子を取りに行く。命じられればマリナもヴォルフも動くのに。
気安い態度は信頼の証なのかもしれない。
「ヴォルフ、そこの本どけてくれる?」
資料として置いてある判例集を指す。執務机に本を移してヴォルフはソファに座り込んだ。
「目が疲れた」
眉間を揉みながらヴォルフが言う。今までしなかったことをしているから疲れるのは当たり前かもしれないけど。
「黙って立ってる方が疲れない?」
前みたいに王子が執務をしている間ずっと直立不動で警戒している方が疲れると思う。
警備に立っている近衛の人とかはすごい。マリナには出来ない。
「立ってるほうが楽だ。 それにやたらと小さくて癖のある字だったから疲れただけだ」
ヴォルフは本当に辛そうだ。この後も書類仕事は続くのに。
茶器を置いてソファの後ろに回る。
「少しだけ休めるといいよ」
上を向かせて目を塞ぐ。
何にも見ないでリラックスすれば多少は楽になると思う。
ソファの背に肘を乗せて両手でヴォルフの目を覆い隠してみた。
手に帯びた魔力でヴォルフを癒す。
「冷たいな」
ひんやりとした手の感触にヴォルフが息を吐く。
目を覆うマリナの手にヴォルフが手を重ねられる。
「ヴォルフの手は熱いくらいね」
運動した後でもないのに熱を持った手。そういえば犬になっていたときも体温が高かった。
「ありがとう、もう大丈夫だ」
ヴォルフの声に従って手を下ろそうとする。
「マリナ」
離れようとした手を掴まれてヴォルフの目を見返す。
引き寄せた手にヴォルフが口を寄せる、瞬きも出来ないでいると手首に口づけを落とされた。
「…っ!」
落とされた感触にびくりと身体が震える。
そして……。
《……》
「…今のはヴォルフが悪いと思う」
いきなりの接触に驚いたマリナの前にはまたしても黒犬がいる。
手を取られるまでは平気だったのだからマリナのせいではないと思いたい。
手を振ってヴォルフを元の姿に戻す。
「……」
無表情に怒っているヴォルフを困った顔で見上げる。
そうして見つめ合っていると隣の部屋から王子が戻ってきた。
「お待たせ、これが最近のおすすめだ…」
マリナとヴォルフの間にある空気に気が付いた王子が、何かあったのかと不安気な目を向ける。
「何かはありましたけれど王子が心配するようなことはありませんよ」
マリナの返事を聞いてヴォルフの方を伺う。
「ええ、王子が心配するようなことは、何も」
ヴォルフとマリナ二人に否定されて王子は諦めたように肩を落とす。
「二人がそう言うなら深くは聞かないが…、何かあったらすぐに言うように」
「はい」
頭を下げた時に床に指輪が落ちているのが目に入る。
ヴォルフが身に着けていた指輪が絨毯の上に落ちていた。
変化させてしまった時に落ちたんだろう。
指輪を王子に見えないようにヴォルフに返す。
落ちたことに気が付いていなかったようでわずかに目を見開いてヴォルフは指輪を嵌め直した。
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